2017年05月15日

日本へ・・・

会社の確定申告をするために、日本へ。今回はダラス経由、日本航空で成田へ。




ところで、機内で懐かしい映画をやっていたのだけれど、




これはどうみても「レイダース 失われたアーク」ではない。実際に見てみたけれど、やっぱり「最後の聖戦」だった。  

Posted by buu2 at 20:30Comments(0)TrackBack(0)社長

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2016年02月19日

歌志内市で職員向け講演

30年以上お世話になっているので、ちょっと喋ってきた。

一応、ちゃんとした講演なので、公用車でお出迎え(笑)。快適、快適。




講演の前に歌志内の炭鉱の歴史などについて教えてもらった。なかなか面白い。僕が生まれる前に、この街の最盛期があったらしい。







90分ぐらい喋ったけれど、市長が挨拶だけで退席しちゃったのが印象的(笑)。

講演で使ったパワポはこちら↓

歌志内市講演資料(PDF)  
Posted by buu2 at 21:30Comments(0)TrackBack(0)社長

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2015年12月10日

仕事を優先する人のキャリアパス

僕はこれまでずっと、「仕事が入ったので」という理由で約束を破るやつを信用しないことにしている。

こういうタイプの人間は結構見かけるのだが、僕ぐらいの年齢になると、そういう人間の最後も見えてくる。

仕事人間は、最初のうちは会社にとって便利な人間なので、順風満帆に出世することが多い。その人生に躓きが生じるのは、大抵管理職になったあとくらいからだ。まず、かわいがっていた部下にそっぽを向かれてしまう。後輩が、さらに後輩に向かって

「あの人のペースに巻き込まれないように注意したほうが良いよ」

などとアドバイスしたりする。実際、僕はそういう現場を数回見たことがある。

その次に生じるのが、上司からの信頼を失うことだ。「あいつはリーダーシップに欠ける」という評判が社内で行き交ってしまう。部下にヒアリングされ、「業務量を管理できない人間」の烙印を押されてしまう。こうなると、出世の道は険しくなるばかりである。ところが、当人はその原因に気が付かないので、さらにプライベートを削って仕事に没頭し、逆に評判は下がってしまう。

行き着く先は、3通りである。ひとつ目は、そういう仕事人間ばかりでコロニーを形成し、その価値観を共有しながら引き続き仕事を続ける。運良く同じような人間が部下として配属されれば、当分はそのままでいられる。成果がないわけではないから、会社から放逐される心配だけはない。僕が心配になるのは、彼らが過労死しないかとか、あるいは円満に定年まで働いたとして、何が残るのか、そのあと、どういう老後を過ごすのかだったりするのだが、大きなお世話なので、黙ってみていることにしている。次が、社内で孤立してしまい、精神的に不安定になったり、体調を崩したりするケースだ。こういう人はまだ一人しか知らないので、レアケースなのかも知れない。そして最後が、会社をやめて独立するケースである。これなら誰にも迷惑をかけないし、収入もそこそこ見込むことができる。家族の納得さえ得られるなら、引き続き仕事最優先で行けば良い。多分、彼らはそういう人生でも幸福なんだと思う。

不思議なのは、若いうちに仕事優先の人間になってしまうと、その癖はほぼ一生抜けないということだ。僕が知っている唯一のケースは、上でも触れたけれど、うつ病になって半分リタイア状態というもので、あとはほぼ全員、引き続き仕事に熱中している。ちなみに、偉くなった奴はひとりもいない。やはり、偉くなるのはちゃんと約束を守るやつだ。当たり前だけど。  
Posted by buu2 at 15:22Comments(0)TrackBack(0)社長

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2015年08月14日

ブラよろスタンプフルカラー

弊社で制作し、申請していたブラよろスタンプがようやく審査を通過し、販売となりました。

ブラよろスタンプフルカラー
https://store.line.me/stickershop/product/1059451/ja

アプリによる自動彩色ではなく、全て手作業で色を着けていますので、品質だけは自信があります。ぜひご利用下さい。  
Posted by buu2 at 09:12Comments(0)TrackBack(0)社長

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2015年04月01日

自己紹介(随時更新)

元木 一朗 (もとき いちろう、1966年12月8日 - )は、コンサルタント、作家、テレビキャスター、ブロガー、ラーメン評論家、とんかつ評論家、写真家、元大学講師、株式会社ライブログの代表取締役CEO。

来歴
1966年12月8日に横浜で生まれる。
1985年東京工業大学理学部入学
1987年に希望留年して新設された理学部生命理学科に一期生として所属
1990年卒業
1992年東京工業大学総合理工学研究科生命化学専攻修了
1992年 株式会社三菱総合研究所入社
1998年 三菱総研より理化学研究所出向
2001年 三菱総研退職
2001年 経済産業省製造産業局生物化学産業課課長補佐
2003年 経産省退職
2003年 株式会社アドバンジェン代表取締役社長
2004年 アドバンジェン退職
2004年 株式会社HVC戦略研究所研究員
2004年 先端健康バイオ産業創出技術調査 ワーキング委員会委員
2005年 株式会社WEBOSS取締役
2005年 首都圏バイオ・ゲノムベンチャーネットワーク サブ・クラスター・マネージャー就任
2005年 首都圏バイオ・ゲノムベンチャーネットワーク コーディネータ評価委員就任
2005年 ITベンチャー「株式会社ライブログ」を創業
2006年 吉備国際大学非常勤講師
2007年 株式会社かなぐる取締役に就任
2007年 株式会社バイオクオリの取締役に就任
2012年 日の出テレビ「総統閣下はお怒りです」キャスター
2016年 米国ワシントンDCに移住

人物
仕事について
三菱総合研究所では本来の専門であるバイオの仕事ができず、当時の副社長に直談判し、理化学研究所に出向。和田昭允のもと、ゲノム科学総合研究センターの設立に携わる。理化学研究所ではマウスcDNAの財産権についてNIHと交渉する窓口となった。
北の丸科学技術館「フォレスト」の遺伝子コーナーをプロデュースした。その際、デザインを担当したのが画家の山口晃で、現在も山口晃による作品が展示されている。
理化学研究所では広報を担当することもあり、その時に執筆したバイオ関連情報をもとに「親と子のゲノム教室」を出版した。
理化学研究所出向期間終了時に経済産業省へ転職した。
経済産業省では製造産業局生物化学産業課において事業化支援担当課長補佐として勤務した。本人は「文部科学省のバイオ行政を熟知している人間として、スパイのように経済産業省に入った」「一部の理研研究者からは口もきいてもらえなくなった」と話している。
経済産業省退職後、育毛剤を開発する産総研ベンチャー「株式会社アドバンジェン」の二代目社長に就任した。
株式会社アドバンジェン退職後、無職となり、ブログを書き始める。このときの経験をもとにブログの発展性に注目した著書「ブログ・ビジネス」を執筆。ブログのビジネス利用をサポートするITベンチャー株式会社ライブログを創立。

スキーについて
大学時代体育会スキー部に所属。インカレに4回出場した。大学院時代に出場した北海道学生オープンのスーパー大回転で左膝前十字靭帯を断裂。以後一年ほど松葉杖で生活した。
1990年頃、スキー1級に合格。
現在もアルペンレースを続けており、神奈川県、横浜市の大会などで上位に入賞することもある。
株式会社ライブログのスキーチームは神奈川県連公認「赤い彗星」だったが、震災以後活動を停止している。
かもい岳レーシングの斉藤博氏、グルノーブル五輪代表の丸山寿一氏をはじめとして、スキー界には幅広い人脈を有する。
主な成績は東日本国公立大学スキー大会回転6位 (1990) 、北海道学生オープン回転優勝(1990) 、シンクタンクリーグスキー大会大回転優勝(1996)、神奈川県クラブ対抗スキー大会回転12位 (2000)、全日本B級神奈川県マスターズ選手権大会2位(2003)、全日本B級東京都マスターズスラローム大会2位(2004)、神奈川県東日本キャタピラー三菱CUPスラローム5位(2005)、2006野辺山マスターズ大回転第1戦優勝、2006野辺山マスターズ大回転第2戦2位、第5回東日本キャタピラー三菱大会スラローム6位(2006)等。

ラーメン評論について
三菱総合研究所在籍時の1995年ごろからラーメン評論家としての活動を開始。当時のペンネームは「魔人ブウ*」。大崎裕史、北島秀一らに呼びかけてラーメン四天王を結成。TOKYO1週間、ぴあなどでラーメン評論を展開した。しかし、TOKYO1週間紙面上での記名記事を講談社に勝手に改変されたことで講談社と衝突。連載から外れることになり、ラーメン四天王は事実上解散した。以後、ラーメンについてはブログで評論活動を継続しており、テレビ、雑誌などのメディアにはほとんど登場していない。大崎裕史とは麻雀友達だったが、ラーメンの食べ過ぎが健康に及ぼす影響について衝突し、現在はほとんど連絡を取っていない。石神秀幸とは現在も交友があるが、その他のラーメンオタクとはほとんどコンタクトを取っていない。

食虫植物について
過去には自宅に温室を設置して多種のウツボカズラを飼育するほどの食虫植物マニアだった。強風の日に温室が倒壊し、ほぼ全滅したのを機に、コレクターを引退。今は15種類程度のウツボカズラ、モウセンゴケを飼育するにとどまっている。

グルメ評論について
ラーメンにとどまらず、外食グルメ全般について評論を展開。食べログでは常に上位にランクされる有名レビュアーだったが、著作権に関して食べログ運営とトラブルとなり、強制退会となった。その後は自分のブログにレビューを掲載している。
とんかつ評論家としては恐らく日本人第一号。

将棋について
将棋アマチュア3段。
株式会社ライブログは将棋の大会に協賛したことがある。
女流棋士の分裂騒動の際、日本女子プロ将棋協会(LPSA)のサポートを行ったが、LPSA側の窓口となった北尾まどかがLPSAを離れると同時にLPSAとは疎遠になった。

医学部受験について
1998年に医学部再受験。センター試験で821/900を取ったものの、千葉大前期、医科歯科大後期に失敗。後者は小論文と面接のみの試験だったため、講演でこの話題に触れるときは「なぜ落ちたのかはさっぱりわからない」と話している。なお、このセンター試験受験の際、試験監督員を担当していたのが中学・高校の同窓生だった山内啓太郎だった。

映画について
映画好きで知られ、Yahoo!ムービーなどを利用して映画評論も実施していた。しかし、複数のレビューを管理者から無断で削除されたため、Yahoo!ムービーでの情報発信を停止。現在はぴあ映画生活と自身のブログにレビューを掲載している。年間50〜80本ぐらいを映画館で鑑賞している。

ピンズコレクションについて
ピンズコレクターとして有名。日本インターネットピンクラブ会長。しかし、2002年ワールドカップの際に詐欺にあい、それ以後の活動をほぼ停止している。

陶芸について
和傘目的で金沢を訪問して九谷焼に触れ、以後陶磁器コレクターに。どういう焼き物に価値があるのかわからないという理由で、自身も陶芸を開始。若手の酒器や皿などを中心にコレクションしている。

米国在住について
碌でもない経済政策しか提案できず、いつまで経っても縁故資本主義の呪縛から逃れられない日本社会に見切りをつけて、米国へ移住。それでもビザの都合や、会社の手続きなどで年に4回ほど日本にやってくる。

好きな人
中島みゆき氏
後藤田正晴氏(故人)

嫌いな人
江原啓之氏
尾木直樹氏
長谷川豊氏
はあちゅう氏
杉田水脈氏

その他
左利き
中日ドラゴンズの熱狂的なファン
理想のモビルスーツはキュベレイ
ワイン検定シルバークラス第一回検定試験合格
和傘コレクターで、常時日傘か雨傘を持ち歩いている
ギリシャリクガメを飼育

著書
親と子のゲノム教室 (2003年、ラトルズ)
親と子のゲノム教室韓国語版(2004年) 
ブログ・ビジネス(2005年、ラトルズ)
Twitter後のネット社会(2011年、アゴラ出版)
遺伝子組み換え食品との付き合いかた(2011年、オーム社)
総統閣下はお怒りです(2011年、ブックマン社)
ラーメン屋絨毯爆撃(池袋編、山手線各駅停車編、杉並区編等、ライブログ社)
映画ヒッチハイク・ガイド2011年公開映画編(2013年、ライブログ社)
コラーゲン食って肌がぷりぷりになるわけねーだろ(2012年、ライブログ社)
やってみてわかった!これが一番簡単!Kindle出版(2013年、ライブログ社)
とんかつ屋名店絨毯爆撃(2014年、ライブログ社)

共著
ネットオークション徹底攻略ガイド(2000年、ソーテック社)

外部リンク
株式会社ライブログ公式サイト
http://www.liblog.co.jp/
公式ブログ
http://buu.blog.jp/
ツイッター
Ichiro MOTOKI (Amidalachan) - Twitter
http://twitter.com/#!/amidalachan
魔人ブウ*のラーメンデータベース
http://www.netlaputa.ne.jp/~buu/  
Posted by buu2 at 11:26Comments(0)社長

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2014年12月18日

リバネスの糾弾は丸幸弘社長と吉田丈治取締役が引責辞任するか、倒産するまでやめません

丸幸弘がまた適当なことを言っているようなので、馬鹿を晒す意味で。

リバネス・丸代表が明かす 遺伝子検査を使った恋愛の未来
http://aufl.kddi.com/magazines/detail/343

例えば自分の遺伝子型を、みんながそれぞれ知っていたら、合コンという確率の低い出会いの場はなくなるかもしれない


やれやれ。

遺伝子と恋愛ということをこれからもっともっと発展させていこうと考えるならば、意外と日本という土地は向いているかもしれません


血液型占いと遺伝子型を並列に論ずるというナンセンスっぷり。

恋愛の場合難しいのは、遺伝要因は半分くらいしかないという事実です


半分もあるのか!!そりゃすげぇ。ところで、そんな論文、あるの???

食料が不足している社会の男性は太めの女性を好む傾向にあるといわれています


出典はこれあたりだろうけれど、

The symptoms of resource scarcity: judgments of food and finances influence preferences for potential partners.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=15686584

The impact of psychological stress on men's judgements of female body size.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=22905153

たった60〜80人に対する調査で、しかも「社会」じゃなくて「空腹時」でしょう?あるいは他の論文があるのだろうか?調べるのは面倒なので、誰か教えて。

遺伝子の情報だけで100%恋愛ができるということはありません、絶対に。でも0%でもない。


根拠不明。単なる心理主義で、科学者とは思えない。

正しく使えるように、みんなが遺伝子をいうものを正しく理解することが必要なんです


お前が言うな、という話。

ということで、相変わらず馬鹿丸出しですが、丸幸弘の悪行に関する詳細は追記でどうぞ。

maru
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Posted by buu2 at 08:00Comments(44)社長

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2014年10月17日

ベンチャー育成、起業家育成に関しての現時点での見解

はじめに
経済産業省時代、私はベンチャー育成担当の課長補佐をやっていた。当時「ベンチャー」という言葉が役所には存在しておらず、その定義から始めた。2000〜2002年頃の話である。実際に日本中を周り、70以上のベンチャー経営者とディスカッションを行った。最終的には新規予算として5億円の予算を獲得し、それをばらまいたのだが、結果として何も生み出せなかった。つまりは無駄遣いに終わったのである。今できることは、なぜ失敗したのか、無駄遣いに終わったのかを考え、同じ過ちを犯さないように働きかけることだと思っている。

この半年ぐらい、アベノミクスの三本目の矢との兼ね合いからか、役所、政治家、大学関係者の周辺から「ベンチャー支援」とか、「起業家支援」という言葉が出てくる。そのたびに「またか」と感じる。

当事者たちは本気でベンチャーや起業家の支援ができるつもりなのかも知れないのだが、かなりの確度でそれは無理だ。私は5億円をばらまき、その効果が出る前に役人を辞めてしまったが、税金の投入を主導した人間として、その後の経緯をチェックしている。そして、私なりの結論に至った。その結論に対して日々自信を深めることはあっても、見直そうと思ったことは一度もない。その「結論」について書いておきたい。

起業支援のあるべき姿
起業家マインド、アントレプレナーシップというものは、教えられて身につくものではない。長い間生きてきて、その中で徐々に育まれてくるものだ。ただ、このマインドは、特定の人間の中に生まれるものでもないと思う。むしろ、多くの人の心の中に芽生える可能性があるものだと思う。では、なぜそれが育たないのか。育てる方法が悪いのではない。出てきた芽を潰す社会環境が悪いのである。本気で、日本が起業家に活躍してもらいたいと思うのなら、やるべきことは、育成や教育に力を入れるのではなく、潰そうとする社会を変えていくことだ。

たとえば、私が経産省を辞めてベンチャーの社長になったとき、周囲の親戚たちは、気が狂ったのではないか、馬鹿じゃないか、なんで安定した役所に勤務し続けないんだ、と考えていたようだ。実際には、私の経産省でのポストは5年間の期限付きだったので、いつかは辞めなくてはならないものだったのだが、それにしてもベンチャーはないだろう、それなら古巣の三菱総研に戻れば良いのに、と思っていたようである。この感覚は、私の親戚に限ったことではなく、ほとんどの日本人に共通した考え方だと思う。大企業の社員や公務員になって、終身雇用で守られて、レールの上にのり、家庭を持ち、幸せに暮らす。これこそが、一般的な日本人が理想とする生き方なのである。

そして、こういう生き方に背を向け、好きなように生きよう、起業して、新しい産業の創出を目指そうとすると、色々なところから圧力がかかり、その芽を潰そうとする。「親が反対する」「生活が安定しない」「失敗したら取り返しがつかない」と、圧力は色々だ。そして、その圧力は、能力が高い人間ほど、強くなってくる。「折角東大に入ったんだから、大企業か公務員になりなさい」というのがごく普通の考え方である。そもそも、「起業家」に対するリスペクトが、日本社会には全く存在しない。ベンチャー社長の典型的イメージは、「胡散臭い」なのだ。これでは、起業家は育たない。

日本社会のスタンダード
これまでの日本はそれでも良かったのだ。大企業と、その下請け会社が船団を形成し、落ちこぼれそうな船団があれば、それを役所が助ける。この護送船団方式こそが、日本社会だったのである。そして、その価値観は、今も大多数の日本人に支持されている。

日本社会の価値観の代表は、年功序列、終身雇用、護送船団という、社会主義的なものだ。そして、この考え方は、「起業」とは全く相容れない。

起業を取り巻く役人、政治家、大企業
それにも関わらず、役人や政治家は「起業支援」などということを考え、旗を振ろうとする。かくいう私も、それができると考えた人間の一人である。官僚としてそれに挑戦し、失敗した。日本社会の価値観が起業と相容れず、その社会の特性を色濃く反映しているのが役所であり、政治家であるからだ。また、それらに群がる銀行や大企業も、起業の足を引っ張る存在である。

銀行は、お金を借りに行っても、肝心の「企画」などは見ない。彼らが見るのは、社長の個人資産である。

自治体は、ベンチャー支援などと言いながら、赤字の会社からも均等割を徴収する。そうかと思えば、地域振興の名のもとに、いい加減なベンチャーにまで金をばらまき、ベンチャーマインドを腐敗させる。

そんなことをやっている裏で、形ばかりの「支援」を謳うのである。しかも、自分たちは安全なところに身をおいたままだ。大企業の社員や、公務員、大学教員が、起業家の育成や支援をどうやってやると言うのだ。かつて、私は東京中小企業投資育成などから2億円ほど投資を受けている会社の社長をやっていたことがあるのだが、彼らが派遣してくる人材が取締役をやっていても、役に立った記憶がない。

日本人は「育成」が苦手
銀行や役人に限らず、日本人は小さいもの、新しいものを育てていくということが決定的に苦手だ。

たとえば、芸術家。若手の芸術家は巷に山ほどいる。ところが、多くの日本人は、印象派やフェルメール、国宝展などには大行列するくせに、若手作家の作品には見向きもしない。もちろん良いものを見て審美眼を養うことは大事だが、そこで終了して、新しいものを探さない。偉い人が「これは素晴らしい」と褒めたものを見て、そういうものなのだなぁ、と同意して満足する。「どこかに、新しい才能は埋もれていないか」とか、「育てれば凄い作品を創るかもしれない」とかは考えることがない。権威主義で、すでに価値があるものに注目して、終了である。

こうしたことは、芸術家に限らない。文筆家だって、音楽家だって、役者だって、何とかして食っていこうとしている才能はあちこちにある。でも、そこに目を向けて、支援して、育てていこうという意識が、社会から感じ取ることができない。日本社会の「慣れ合い体質」は、もうそこにある既得権者同士や、寄らば大樹よろしく、今の権力者に向かうものばかりである。

社会がこうである以上、それを変えていくことこそが、政治家や行政の役割のはずなのだが、一般人の代表である政治家は、望ましい社会に向けた活動をするのではなく、次の選挙で当選するための活動に終始する。一般人のゴキゲンをうかがうばかりなので、時代の先端を行こうとする少数派には配慮できない。高齢化社会における年功序列社会の代表である行政組織は、いかにして手柄をあげるかではなく、いかにして失敗せずに定年までを過ごすかに注力するので、リスクのある冒険を避ける。結果として、社会はいつまで経っても変わらない。

三年前、村上春樹がエルサレム賞を受賞したときに「Always on the side of the egg」というスピーチを行った。

参考:誰が壁で、誰が卵で、そして自分は
http://buu.blog.jp/archives/51251987.html

このスピーチは日本人の間でもかなり話題になった。そして、多くの人が村上春樹に賛意を表明した記憶がある。彼の意図は、「自分たちの独自性を信じ、お互いを尊重しあおう」ということである。日本人のどれだけが、それを実践しているのか。もしもそれが大多数なら、ベンチャー支援などという言葉は、どこからも出てこないはずなのだ。

起業支援でやれること、やってはいけないこと
ベンチャー支援、起業家支援として、やれることは限られている。それは、

1.行政
ベンチャーの発展を阻害する規制をなくすこと
起業が不利益になる社会慣習をなくすこと

2.投資家
ベンチャー企業の事業計画を評価し、投資すること
投資したら、成功に近づくように支援すること

3.社会
ベンチャー企業のサービスや商品を優先的に購入すること

である。逆に、絶対にやってはいけないことは、

1.公的なお金を投入すること

2.能力のない人間を起業に引きこむこと

である。公的なお金は、ベンチャーにとって麻薬であり、会社を堕落させる。ベンチャーにとって民間の投資を受けるということは、最もハイリスク、かつハイコストな資金調達手段である。わけのわからない奴が株主になり、経営に口出しされるのは、迷惑以外の何ものでもない。それでもなお、必要な資金を調達するためには、相応の覚悟が必要になる。逆に言えば、その覚悟が、ベンチャーの経営には必要なのである。税金を使った補助金や委託金は、そうした覚悟をマヒさせる。また、能力のない人間をベンチャーに引きこむと、全ての関係者を不幸にする。僕はこれまで、そういう場面を何度も見てきている。

大学の役割
役人、政治家、大企業の、どれもがトンチンカンな起業支援を試みているが、大学も同じである。起業の何たるかを全く理解していない研究者や文科省の天下りがいくら頭を捻っても、まともな方針は出てこない。地方の駅弁大学ほど、こういう出来もしないことに予算をつけてアピールしたがるのかも知れないが、何も教育できるはずがないので、騙される学生が気の毒である。能力のない人間がお題目だけのカリキュラムとシラバスを作り、無責任に授業を行う。判断能力のない学生が、「彼らについていけば何とかなる」と勘違いして、数年後に路頭に迷うのである。大学も、起業家育成などには手を出すべきではない。


結論
役所、政治家、大企業、大学が先頭に立って起業支援をやっても無駄である。彼らがやれることは後方支援的なものだけである。後方支援の中でも、さらに限定的で、やれることは限られている。むしろ、「ベンチャー支援」と限定的なことをやるのではなく、「雇用の流動化」とか、「同一労働同一賃金」とか、「男女平等」とか、「新卒一括採用の見直し」とか、社会として抱えている問題を解決することこそが、起業の支援につながるのである。ただ、こうした改革が、本当に日本人の過半数の支持を得られるのかはわからない。

一方で、社会は、主体的に起業を支援することができる。上にも書いたように、ベンチャーの商品やサービスを購入すれば良い。こちらの方がずっと簡単で、効果も見込めるのである。中には創薬ベンチャーのように、私たちが支援しようにもどうにもならない会社もあるのだが、できることからやっていくしかない。  
Posted by buu2 at 11:17Comments(0)社長

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2014年03月08日

多分絶対失敗しない起業、7つのコツ

経済産業省時代、事業化支援担当課長補佐として山ほどベンチャーの社長と話をしてきた結果、わかった7つのコツについて。

1.継続できる体制を築く
2.文書で残す
3.組織・体制を明確化する
4.公平性を確保する
5.論理的に意思決定する
6.やり取りをオープンにする
7.失敗事例に学ぶ

文字で読んでも伝わらないので、ちゃんと動画を見ましょう(笑)。

  
Posted by buu2 at 10:08Comments(0)TrackBack(0)社長

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2013年12月01日

くまモンの名刺2

新しいくまモンの名刺が完成した。




参考エントリー
くまモン名刺
くまモンの名刺  
Posted by buu2 at 23:13Comments(2)TrackBack(0)社長

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2013年11月05日

会社の名刺制作にあたってのTIPS

名刺を配る側ではなく、名刺を受け取る側から見たTIPS。

サイズを変えるのは駄目
よみがな(ローマ字を含む)は表面に
名前、住所、連絡先、社名など必要事項は全て表面に記述
裏面を記載するなら、表面を読めない人向け(英語とか)
上下左右の余白は3ミリ程度を確保
必要のないイラストは不要
QRコードは不要
フォントは一般的なものを使う
小さすぎる文字は使わない
特に郵便番号は大きく、はっきりと表示


ウェブ運営にあたっては、「自分が発信したい情報ではなく、閲覧者が読みたい情報を発信すべし」とコンサルしているのですが、名刺も同じですね。自分が受け取って欲しい情報を記載するのではなく、受け取った人が必要としている情報を記載する。しかも、片面に全部。政治家とかだと表に名前と役職だけ、裏に住所や電話番号みたいに分けて書く人がいるけれど、これ、駄目。さらに最悪なのが信条とか、これまでのキャリアなどを書いたりすることで、こんな奴には絶対投票しない、とこっそり決心する。

名前、所属、住所、連絡先がきちんと片面にまとまっていることが必要条件である。  
Posted by buu2 at 11:35Comments(0)TrackBack(0)社長

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2013年10月02日

ようやく弊社の主張がGoogleさんに支持された

サーチエンジンは閲覧者に対して最適化されるべき、と言い続けてきたんだけれど、

参考1
ブログでバイオ 第68回「ドーピングに反対」
http://buu.blog.jp/archives/50951106.html

参考2
WEB 2.0(っていうんですか?)へのステップ
http://buu.blog.jp/archives/50686926.html

ようやく、Googleさんが本格的な対応を施したようで。

グーグル、創立15周年--新検索アルゴリズム「Hummingbird」を導入
http://japan.cnet.com/news/service/35037714/

Googleさんもようやくドーピング禁止に乗り出してくれたようです。今までコツコツとコンサルティングしてきた甲斐もあろうというもの。正直者が馬鹿を見続けてはダメですよね。いや、一番真っ青なのは、これまでブラックなSEO業者に散々貢いできた方々なんでしょうが・・・。  
Posted by buu2 at 16:06Comments(0)TrackBack(0)社長

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2012年11月16日

くまモンの名刺

やっと完成した!限定200枚、早い者勝ち!!

12_11_16_1878
  
Posted by buu2 at 23:09Comments(0)TrackBack(0)社長

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2012年10月12日

くまモン名刺

弊社は熊本には縁もゆかりもないのですが、これは欲しい(笑)

kumamon3

あなたの くまモン名刺 を作りましょう

「はじめまして」
「はじめまして」
「お生まれが熊本ですか?」
「いえ、違います」
「本社が熊本ですか?」
「いえ、違います」
「大学が熊本でしたっけ?」
「いえ、違います」
「????」
「単に可愛いからです」
「なるほど!!」

以後、話が弾みそうです。うーーーん、作っちゃおうかな???  
Posted by buu2 at 12:07Comments(0)社長

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2012年06月25日

飲食のウェブサイト構築で注意すべき5つのポイント

飲食関係のウェブサイトを見ていると、もったいないなぁと思うことが多々あるわけです。例えばこのサイト。

アメブロのケース:俺のラーメン あっぱれ屋ブログ
ore


単にアメブロで作ったサイトを公式サイトとしているわけですが、肝心のお店の住所情報がエントリー内部に埋もれてしまっていて、閲覧者は「どこかなぁー」と探さなくてはなりません。ブログを利用して公式サイトにするのは非常に良いアイデアですが、基本的な情報はサイドバーに掲載されているべきです。営業情報はきちんと一番上にありますが、デザインが煩雑で見にくいため、「あれれ?」と思ってしまいます。

デザインと言えば、このサイトはアメブロの「ゆうぐれ」というデザインを使っているのですが、ラーメン屋さんとしてこのデザインを選択する理由がさっぱりわかりません。結局のところ、「何かやっておけば良いだろう」というノリなんだと思うのですが、このサイトだと、正直逆効果な感じで、少なくとも僕がこの店に行ってみたくなることはありません。また、他から情報をもらって、「一度行ってみよう」と考えてこのサイトに行き着いたとしても、「目的の情報へのアクセシビリティが確保されていなくて、うーーん」と思ってしまいます。

ぐるなびのサービスを使っているケースもときどき見かけるのですが、デザインの自由度が低いのか、「行ってみたい」と思わされるサイトにはならないことが多いようです。例えば下記のお店はぐるなびと独自サイトと、2つのサイトを併用しているのですが、こうしたサイトを見ると、「折角労力をかけているのにもったいない」と感じます。

リストランテアルベラータ
ぐるなび版
allbe


公式版
allbe2


前者は閲覧者に不必要な広告が埋め込まれていますし、デザイン上も独自色が皆無で、非常に味気ないものになっています。後者はぐるなびのサイトがある状況にあってどういった意図・背景でわざわざ構築したのか不明なサイトなのですが、FirefoxでもIEでもChromeでも表崩れを起こしていて、これだけでも安っぽいイメージを与えてしまいます。神楽坂といえば都内でも指折りの一等地で、そんな立派な立地のイタリアンなのにこれでは残念の一言です。

ちょっとだけ事例を紹介してみましたが、意外ときちんとしていないケースが多いのが飲食店のウェブサイトです。ほんのちょっとした配慮だけですぐに改善できるのに、です。

飲食のサイトを作る場合、ポイントはたったの5つしかありません。

1.独自ドメインで、独自の運用を行う
2.わかりやすい場所に住所、電話番号、営業日などの情報を掲載する
3.デザインをきちんとする
4.フラッシュムービーを使わない
5.きちんと更新する

非常に簡単ですね。でも、この5つすらできていないケースがほとんどです。

1〜3をきちんとやると、今度は4に該当してしまうことが多いのです。なぜなら、1〜3をお薦めするようなウェブ会社は、どうしても儲けやすい4をあわせて推薦するのです。かつてはこれでも良かったのですが、残念ながらフラッシュはiPhoneやiPadで閲覧することができません。これは近年、非常に大きな問題になりつつあります。

そして、あまりにも立派なサイトにしてしまうと、今度は5が疎かになります。毎月の休業情報などはきちんと更新しておく必要があって、理想的には季節の料理情報などもあると良いです。こうした運用のためには、パソコンが苦手でも運用していけるような、サイト運用の簡便さが必要になります。

ライブログではこうしたサイト構築と運用サポートを続けてきていますので、「ちょっと考えなおそうかな」と思った方はmotoki@liblog.co.jpまでご連絡ください。

最近構築した事例:
Trattoria La Mamma
mamma
  
Posted by buu2 at 15:30Comments(0)TrackBack(0)社長

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2012年02月11日

3月から放送開始?

この間、日の出TVにゲスト出演したわけですが、3月から毎週一回、自分で1時間の番組を持つことになるかも知れません。現在、調整中。

まー、それほどたくさんの視聴者がいるとも思えず、のんびりダラダラ、言いたい放題の1時間にしたいのですが、どうなることやら。今のところ、

1.変なニュースへのコメント
例:トマト食って痩せるわけねぇだろ、運動しろ、運動

2.ちょっと見かけたインチキ数字
例:このグラフ、おかしいだろ

3.今週のラーメン

4.今週の映画

5.今週のマリノス

6.今週のドラゴンズ

7.今週の誤植

みたいなラインナップで考えていますが(^^;、果たしてどうなることやら。  
Posted by buu2 at 15:40Comments(2)TrackBack(0)社長

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2012年02月08日

どうぶつしょうぎアプリのきせかえに「かぞくしょうぎ」が登場!

実はそれほど最近の話でもなくて恐縮なんですが、弊社が販売しておりますiPhone、iPad用のゲームアプリ「どうぶつしょうぎ」に新しく「かぞくしょうぎ」のスキンが搭載されました。

ゲーム開始画面の「きせかえ」で選択することによって、このスキンでのゲームが楽しめます(今回は効果音はありません)。

IMG_0030


対戦はパパ対ママとなっています。左右に控えるのはお兄ちゃんとお姉ちゃん。

IMG_0031


そして、赤ちゃんが相手の陣地まで行くと、ライオンの着ぐるみを着て、最強のメンバーとなります。

IMG_0032


今回のデザインは、ワイワイネット様からご提供いただきました。

なお、どうぶつしょうぎアプリはこれまでに55,872本がダウンロードされております。今後も、新しいスキンをご提供いただける企業、個人などを募集していきたいと考えております。引き続き「どうぶつしょうぎ」アプリをよろしくお願いいたします。

どうぶつしょうぎDX

どうぶつしょうぎLITE
  
Posted by buu2 at 00:22Comments(0)TrackBack(0)社長

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2012年02月01日

本日22時から、「政治の時間」

以下、福田峰之さんのメルマガから抜粋します。

■日の出テレビ【政治の時間】のお知らせ
「日の出テレビ」は、ネットテレビ同好会(代表 福田峰之)が運営するインターネットテレビ局です。
第6回マニフェスト大賞最優秀賞受賞。毎週水曜日22時は、キャスター福田峰之の「政治の時間」。
http://www.hinode.tv

本日は、ゲストに株式会社ライブログ代表取締役元木一朗さんをお迎えして「ベンチャー企業の行方」について対談します。
シンクタンク研究員、経済産業省課長補佐からITベンチャー社長という経歴を持つ元木さんにベンチャー企業のあれこれを深堀します。


何を話せるかわかりませんが、お時間ありましたら、ぜひ御覧ください。  
Posted by buu2 at 16:31Comments(0)TrackBack(0)社長

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2012年01月31日

告知:明日の日の出TV「政治の時間」に生出演します

2月1日22時からの「政治の時間」に出演します。

日の出TV「政治の時間」水曜日キャスター:福田峰之

ベンチャー支援などについて話すはずですが、どうなるのか、正直良くわかりません。例によって滑舌悪いと思いますが、たまにしか映像メディアには登場しないので、「元木と合コンってちょっと興味あるけれど、危ないやつかも知れず、ちょっと不安だよねー」という方はぜひご覧になって下さい。なお、黙っていると怒っているように見えると良く言われますが、別に怒ってませんので安心して下さい。怒ると手が震えます(笑)。  
Posted by buu2 at 13:42Comments(2)TrackBack(0)テレビ番組

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2011年09月06日

どうぶつしょうぎアプリを自分のデザインで!

色々と調整していたんですが、ようやくリリースが出せました。どうぶつしょうぎアプリには「きせかえどうぶつしょうぎ」という機能があって、好きな盤、駒で遊ぶことができます。このきせかえの「洋服」を募集しちゃいます、という話です。

正式なところはこちらをどうぞ

きせかえどうぶつしょうぎ 盤駒デザイン募集

アップル社が承認してくれれば、企業名やウェブサイトのURL等も書き込めると思います。

もし気になりましたら、お気軽にご連絡ください。  
Posted by buu2 at 22:50Comments(0)TrackBack(0)社長

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2011年08月15日

松田一敬さん(北海道ベンチャーキャピタル前社長)に絶縁された件

松田さんとは僕が経産省にいた頃からの仲で、経産省を辞めてからもいくつかのビジネスを一緒にやってきた。中には「WEBOSS」という会社の取締役のように、就任してすぐに経営陣との調整がつかなくなって退任したケースもあったけれど、これなどは松田さんと何か対立があったわけではなく、新行内さんという別の人との問題だった。

以後、HVC戦略研究所の研究員をやったり(僕が辞めたという話は聞かないので、まだ籍があるのかも知れず、そのあたりは良くわからないのだけれど)して、ゆるゆると関係が続いていた。

その関係にちょっとすきま風が吹いたのは、去年の年末だったか、今年の頭だったか、SMIPSという、隅藏康一さんという御用(?)学者が運営しているメーリングリストでのこと。SMIPSにはリバネスの関係者が多数関わっていること、隅藏さんとリバネスの丸社長とが親密な関係にあることなどから、僕はわざとSMIPSのML上でリバネスのネガティブキャンペーンを張った。その際に、松田さんはML上で

リバネスになにか問題があったらしいことがわかれば十分で、それ以上はこの場で書くには興味のない読者にとってはあまり気持ちいいものではありません。誹謗中傷のようにも見えます(本当は違うのでしょうが)
結果としてsmpisの価値を下げてしまうと思います。
あとは直接、興味のある方同士が連絡をとってもらえばいいと思います。松田も別途リバネスについて情報が必要な場合は直接元木さんに連絡します。


と書いてきた。別に松田さんが出てくるような場面でもなく、どうして突然出てきたんだろう、と不思議に思った。隅藏さんから松田さんに相談があったのかも知れない。このあたりの真相はわからないけれど、松田さんに僕が反論したところ、隅藏さんが突然管理人モードを発動させ、御用学者らしい仕切りをやったので、僕はそのMLをさっさと辞めてしまった。

その後、フェイスブック上で松田さんを見つけたので、特に他意もなくフレンド登録をしておいた。この時点では、先のML上での松田さんの行動を不思議には思っていたものの、隅藏さんに対して持つようなアイロニックな批判視点は持っていなかった。

そして、つい最近、松田さんは北海道ベンチャーキャピタルの社長を辞めた。表面上は引責辞任みたいな話だったけれど、普通に考えてクビだろう。何が起きたんだろうなぁ、とは思ったけれど、僕たちのいるベンチャー業界では別に珍しいことでもない。僕もアドバンジェンを辞めたのは実質的にはクビだった。再起のチャンスはあるんだし、10年ぐらい社長をやってきて、そろそろ潮時でもあったのかも知れない。これまた僕は、「まぁ、良くあること」とスルーしていた。

松田さんは普通にフェイスブックを利用していたので、僕のニュースフィードにも彼の投稿が掲載される。それをつらつらと眺めていると、放射能関連でときどきおかしなことを書いてくるようになった。その内容はどうも首尾一貫しておらず、ときどき感覚的(つまり、非科学的)なものになることがあった。なので、僕はそれをコメントで指摘した。松田さんは元々山一證券にいた人なので、根っこの部分では科学者ではない。それは仕方のないことだし、どうしようもないことでもある。科学的なベースがないからと言って全否定されるべきでもなく、僕としては「せっかく身の回りに科学的な人がいるんだから、そういう人たちの意見をきちんと聞いたら良いんじゃないですか?」ぐらいの気持ちだった。

さて、一昨日だったか、松田さんが北海道電力について、「北海道電力は発電送電の分離によって風力や太陽光などの再生可能エネルギー産業の拡充を図るべき」という意見を書いていたので、僕は北海道における風力発電の現状、本気で発電しようと思う場合に必要な風車の数(定格出力3、設備利用率、実効出力などから、直径100メートルの風車で1000kWの発電が可能、ぐらいの想定)、および現在何も問題を起こしていない北海道電力という株式会社について、株主でもない立場からその経営方針について言及することの意義について質問した。と、同時に、松田さんの主張が「自分のグループには専門家がいる」などと、自己の責任ではなく、かつ実体の見えない存在によって、その正当性を担保しようとする傾向にあることを指摘した。

すると、松田さんからは次のようなメッセージが届いた。

論点がずれていますよ。今回の議論は北海道電力等の独占により自然エネルギーのビジネスチャンスが失われていると言う議論です。ちなみに専門家がいる等の話をこの議論でしましたか?北海道の事情を紹介しただけです。科学者ぶって2次情報だけでいろんなところで発言しない方がいいですよ。ちなみに松田は風力やバイオマスは投資先の経営に関与していたのである程度の経験はありますよ。元木さんからいえばみんな素人なのでしょうが。


そして、その直後にブロックされたらしく、松田さんとは連絡がとれなくなった。これはいわば絶縁状だったわけだ。

別に論点はずれていないし、「北海道電力『等』」ではなかったと思うし(ブロックされてしまったので確認できない)、専門家がいる(=当事者がいる)という話はあったと思うし(これも確認不能)、科学者ぶってもいないし(そもそも、僕は科学者ではない)、「2次情報だけでいろんなところで発言しない方がいい」(=お前は少し黙っていろ)などはへそがお茶を沸かすような話だ。僕からみたらみんな素人なのではなく、松田さんが主張しているだけで、その背後にいる人達は全く見えないだけのことである。何か主張するのなら正面に出てきて自分の責任で発言すべきだし、その機会はいくらでもある。だけど、彼らはそれをやらない。松田さんが、「俺の仲間にはこれこれこういう奴がいるんだ」と言い続けているだけなのである。例えば僕なら、「経産省時代の同僚で、僕が知る限り最も切れるやつ」は「宮本岩男」だとすぐに断言できる。松田さんにはそれができない。

この絶縁状を見て、あぁ、松田さんはもう僕の知っている松田さんではなくなってしまったんだな、と思って、ちょっと残念な気持ちになった。ましてや、ブロックというのは「もうお前の意見に貸す耳など持ち合わせていない」という宣言でもある。そういえば、知り合いの経産省官僚に、菅直人首相がそういう感じの人間だとつい最近聞いた。耳障りな言葉は聞きたくないという、裸の王様タイプの人ということだろう。

こんな時に必ず思い出す言葉がある。

「少年はいつも動かない。世界ばかりが沈んでいくんだ」
(野田秀樹「ゼンダ城の虜」)

自分が浮いたり沈んだりしているのかも知れず、そのあたりは常に自分できちんとチェックしないと、と思っている。  
Posted by buu2 at 16:23Comments(4)日記

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2011年07月22日

放射能牛への対応でわかる良い会社とダメな会社

一番良い会社はもちろん最初から放射能ふりかけをかぶっていないものだけを取り扱うことだけど、売ってしまったものはある意味仕方がない。では、気づかずに放射能をばらまいたときにどうするか。

良い会社:
「申し訳ありませんでした。以後、このようなことがないように十分に配慮します」と表明する。

ダメな会社:
「売ってしまいましたが、基準値以下なので問題ありません」「基準値を超えていましたが、ただちに影響がでることはございません」と表明する。


伊勢丹さんはどうやら前者のようですね。さすがです。

牛肉の販売に関するお詫びとお知らせ  
Posted by buu2 at 23:17Comments(0)TrackBack(0)社長

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2011年07月10日

新しい事業を失敗しないために考えなくてはならないたくさんのことのうちの一つ

大きな組織、硬直した組織からスピンアウトするのは、ここ数年の日本でも良く見かける。こうした動きは、社会の活性化や新陳代謝には必ず必要で、護送船団、村社会の日本であっても、どうしたって起きてくるものだ。

そして、スピンアウトした人たちはみんな共通の壁にぶつかることになる。それは既得権者達の壁だったり、銀行の無理解だったり、いろいろだ。それらの多くは自分ではどうにもならないことだったりするのだが、中にはスピンアウトした人間でも自分でコントロールできるものがある。それは、「自分の目線を変える」ことである。ところが、これができない人たちが相当数いる。これができないことで、スピンアウトはただのアドベンチャーになってしまう。その行き先は火を見るより明らかだ。

僕がやりとりをしてきた中での典型事例を一つ紹介する。僕たちの会社は、大きな、ある旧態依然とした組織から飛び出した組織(以後、Aとする)と、ひとつの事業を開始することにした。開始にあたり、共同事業契約を締結し、その発展について相談を開始した。ところが、その事業を開始してすぐに、Aの中では内紛が発生した。その結果、Aでライブログとの交渉を担当していたB氏がその組織を出ていってしまったのだ。以後、ライブログとの交渉を担当したのはその組織の新しい交渉窓口のC氏、そして組織のトップのD氏となった。特にこのC氏の対応が非常に稚拙で、以後、プロジェクトは迷走を始めた。まず、最初にC氏が提案してきたのが契約書の内容の大幅な見直しである。契約書は、契約する前にきちんと内容をチェックするのが当たり前で、一度契約してしまえばあとはそれを粛々と実行していくのが当然である。これはビジネスの常識だ。ところが、C氏はビジネスの素人だった。

Aとの交渉でC氏やD氏の口から出てきたセリフは次のようなものだ。

「Bは少額でこのプロジェクトをライブログに売ってしまったのか!」(C氏)
「今の契約内容では事業の継続は難しい」(C氏)
「ライブログさんが私たちと共同でプロジェクトをやっていくのにふさわしいか、精査させていただきたい」(D氏)
「私が知らないうちに誰かが契約書に押印してしまった。私は何も知らない」(D氏)

確かに、Aがスピンアウトした母体は長い歴史を持つ組織である。しかし、A自体はライブログよりも新しい団体だ。それにも関わらず、C氏は自分たちが相変わらずAに所属しているような目線でライブログに相対した。これではお話にならない。スピンアウトした時点で、以前の看板は全てなくなっているのである。挙句、「共同で事業をやっていくのにふさわしいか精査させていただく」とは噴飯モノだ。そんなことは契約書を締結する前にやるべきことである。そして飛び出したのが「誰かが勝手に契約したので、私は知らない」という、Aの代表D氏の泣き言である。こんな組織がまともに機能するわけがない。内部分裂して出ていってしまったB氏にもある程度の上から目線感覚が存在したことは否定しないけれど、少なくともB氏には「一からやっていく」という感覚が存在したし、ライブログが共同で事業を進めていくのに大きな障害があったとは思えない。しかし、C氏には「ゼロからのスタート」という感覚が皆無だった。加えて、D氏には、組織のトップとして全体をまとめるだけのリーダーシップがなかった。

最終的に、Aはライブログを下請け的立場にしてプロジェクトを推進しようとして、交渉は決裂した。相乗効果を狙った事業展開はバラバラに崩壊し、ライブログはその事業において最低限の利益を出すにとどまった。ただ、ライブログサイドの事業が最低限の成果にしかならなかったのは、もちろんライブログに責任がある。ライブログは、Aの内部分裂も、B氏の離脱も、Aがビジネス感覚を持ち合わせていないことも、Aが契約を履行しないことも、全て想定して考えておかなくてはならないことだった。ライブログはこの経験をもとに、「目線を変えることのできない事業者との共同事業は避けなくてはならない」という知見を得たのである。

その後、Aに関して何か良い話を聞くことはない。

以上は「目線を変えることのできなかった人たち」に関する事例である。さて、また別の話を書いてみる。三菱総研は辞めていく人間が多い会社だけれど、辞めるかどうか悩んでいるときに先輩たちから聞くアドバイスは、「三菱という看板は決して小さくない。辞めたとき、その看板ナシでどこまでやっていけるのか、良く考えたほうが良い。多く見積もっても、仕事は20%ぐらいになると考えたほうが良い」というものだ。三菱総研では、30代前半で年収が1000万円を越える。一方で、仕事のノルマは5000万円以上。つまり、会社を辞めても20%の仕事が取れるなら、辞めた方が収入が増える勘定だ。三菱総研という会社はステップアップのための踏み台としては非常に理想的な会社だと思うのだが、ステップアップの際、もし独立するのであれば、単純にステップアップするのではなく、一度地面に降りる必要がある。この話は、他のどんな事業においても多分一緒である。

自分がいた場所がどんなに眺めが良くとも、それは当たり前ではない。その場所を離れてもそのままでいられることは少ない。というか、そんなことはほぼ間違いなくないのである。山の上から、別の山に移るには、一度平地まで戻らなくてはならない。これは非常に簡単な理屈なのだが、それがわからない人が山ほどいる。

そういえば先日も、「新しいコミュニティをFacebookに作った。半月で会員を1000人にしたいのが、どうしたら良いか」という相談を受けた。この相談者は元官僚である。彼はいろいろな部分で感覚をリセットしていると思うのだが、この話を持ちかけられたときは「まだまだ、抜けてないんだな」と感じた。

景気が悪い中、何かアイデアを事業化したいと考える人はたくさんいると思う。チャンスといえばチャンスなのだ。ただ、その際には必ず一度自分の感覚をリセットする必要がある。どうやったら成功するか、この問に対する正解は少ない。でも、どうやったら失敗するか、この問に対する回答は比較的簡単だし、正解は山ほどある。そのうちの一つが、「以前の看板がそのまま使えると誤解すること」である。新しい事業を開始するなら、誰もが「裸一貫」からのスタートである。  
Posted by buu2 at 16:46Comments(0)TrackBack(0)社長

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2011年06月03日

僕がバイオベンチャーの社長を辞めたわけ

はじめに
最初に書いておくけれど、社長を辞めたのはひとえに僕の能力不足。誰のせいでもないです。じゃぁ、なぜこれを書くかって、後進に対して「ベンチャーの社長とはこういうもの」というのを示すためです。安易に起業をして人生を棒に振らないでね、ということですね。ちょうどさっき、「こうやったら失敗した」というビジネス本がほとんどない、という主旨のつぶやきをツイッターで書いたので、参考までに自分で書いてみます。

社長就任の背景
僕は東工大で修士を取ってから、新卒で三菱総研に就職しました。僕がやりたかったのはバイオの専門家としてのコンサル業務でしたが、残念ながらバイオの仕事はありませんでした。副社長に直談判して理研に出向に出してもらい、約3年間理研のお手伝いをさせていただきましたが、その期間を終えてもバイオの仕事はありませんでした。

#これも、当時は三菱総研のせいだと思っていましたが、単に僕の能力不足です。

三菱総研にバイオの仕事がなかったので、僕は独自に転職活動を開始して、野村総研の内定をもらいました。ところが、ここで三菱→野村の転職を嫌ったのか、三菱総研から片道切符、最長5年間の期限付きの条件で、経済産業省への転職を勧められました。野村にしても長くいる会社ではないので、どちらがその後の展望が開けているか、が選択のポイントでした。それで、僕は経産省を選びました。
経産省が片道切符なのは最初から決まっていましたから、僕はその任期が終了に近づく頃に次の仕事を見つける必要がありました。そんなとき、バイオテックヘルスケアパートナーズ(現株式会社ビー・エイチ・ピー)の松本氏から声をかけられました。曰く、投資先の一つの創薬系バイオベンチャーの経営が思わしくなく、二代目の社長としてテコ入れをしてくれないか、とのことでした。

社長就任
会社は産総研ベンチャーで、所在地はつくばでした。自宅からは片道100キロほどで、自家用車なら通えない距離ではありませんでした。基盤テクノロジーをチェックしてみましたが、複数のパイプラインがあり、産総研の支援も受けられるとのことで、これならやってみても良いかな、ということで、経産省を退職して2ヶ月後に株式会社アドバンジェンの二代目の社長になりました。

会社の基盤技術
当時、アドバンジェンには2つの基盤技術がありました。一つはFGF5の機能に着目した育毛剤の開発、もう一つは別のタンパク質を利用した褥瘡治療薬の開発でした。特に期待が持てたのが育毛剤開発で、市場規模を考えると、順調に開発出来ればかなりの成長性が見込めました。FGF5はマウスにおいて毛の育成に関与しており、FGF5がないと毛が伸び続けることがわかっていました。したがって、このFGF5の活性を阻害するような低分子を発見してくれば、育毛剤として利用出来るというのが基本的なコンセプトでした。実際には、FGF5をマウスに大量に投与し、人工的な脱毛状態にし、その脱毛マウスに候補物質を投与する、という手法を利用しました。このスクリーニングのための実験系も完成しており、あとはFGF5の阻害効果が見込まれる物質を見つけてくるだけ、という状態でした。一方、褥瘡治療薬については市場規模が小さいこと、先行テクノロジーとの競争優位性があまりなかったことから、あくまでもバックアッププランと位置づけていました。

会社の体制
アドバンジェンには当初3人の研究者がいました。早稲田、筑波、東工大の博士で、基盤技術は早大博士のものでした。この他にテクニカルスタッフが2名、事務担当者が1名というラインナップでした。また、会社のファウンダーとして産総研の4人の研究者が運営に参加していました。

事業の進捗
会社の開発はとにかくスクリーニングを繰り返し、FGF5阻害活性のある物質を見つけてくることでした。候補物質が見つかった時点で創薬会社にそれを持ち込み、業務提携して商品化を進める、という方針で、3ヶ月ほど実験を繰り返しました。
ところが、なかなかキレの良いデータが出てきません。研究者に任せておくとチャンピオンデータを揃えてきてしまい、それでは論文にはなっても、商品にはできません。マネージメントを開始して一ヶ月ほどで、研究者に任せておくと、商業的な研究開発は難しいことがわかりました。最初は僕は実験には一切口を出さない方針でしたが、すぐに僕が全体計画をチェックするようになり、データの処理も面倒を見るようになりました。
やがて、スクリーニングに使っている実験系に大きな問題があることがわかってきました。処理された実験データをチェックしていたところ、活性がないはずのコントロール(水です)で活性が出てしまっているのです。「これはどうして?」ということになったのですが、「Aさんの調整したタンパク試薬を利用していると、ときどきこうなる」とのことでした。そのタンパク質はメーカーで精製、販売しているものがあったので、それを購入して利用することを指示したところ、「やってみたけれどうまくいかない」とのことでした。それは明らかにおかしいので、商品を購入して実験をやってみたところ、Aさんが調整した試料と同様の結果が出ました。研究者にそのあたりについて見解を聞いたところ、「その試薬の調整は非常に感覚的な部分があり、マニュアル通りにやるとうまくいかない。Bさんによる、職人的なテクニックが必要だ」とのことでした。以後、色々と実験してみてわかったことは、Bさんが手抜きをして調整した試料には細胞毒性の強い物質が濃縮されており、そのためにマウスの皮膚に悪影響がでて、毛が生えない、という状態ができているということでした。
育毛因子の阻害剤であるFGF5を人工的に増加させて、脱毛マウスを作っていたつもりだったのに、実際には毒物によって皮膚が炎症を起こし、それによって脱毛状態になっていたわけです。アドバンジェンの育毛剤開発のための基盤技術は、論文も、特許も、間違いだということがわかりました。

対応策
このことがわかった時点で、基本的に会社は崩壊しました。メインの研究者は辞表を提出して退職しました。ほどなく、ナンバー2も退職し、研究者ひとりと研究補助員、事務担当者ひとりと社長、という体制になりました。資本金もほぼ使いきっており、資金調達のために何か考える必要が生じました。ちょうどそのとき、尾身大臣の肝いりで沖縄が技術系ベンチャーの誘致に注力を始めていたため、総務省が主催する沖縄のベンチャー誘致ツアーなどに参加し、現地視察に行きました。沖縄であれば、事務所代も安く済みます。そこで、「会社を沖縄に移し、沖縄や台湾などにある生物資源を利用した育毛剤開発にシフトしよう」ということになりました。何か技術的な基盤があるわけでもないのですが、株主は会社を畳むことには否定的でしたので、「もうみんなで沖縄に移住して楽しくやろうぜ」と空元気を出していたのです。

解任
ところが、就任一年の株主総会の直前に、取締役会から社長辞任を勧められました。取締役会は、新しい社長のもと、引き続き産総研をベースにして育毛剤開発を進めるとのことでした。僕は効果がないとわかっている素材をベースにしての育毛剤の製品化など全くやる気がなかったので、実質的に解任される形で社長を辞任しました。当時の僕の日記はこんな感じです。

2004年06月23日
株主総会終了

2004年07月01日
失業

2004年07月09日
前の会社


製品回収
三代目の社長を迎えたアドバンジェンは、その後、製品化を進め、無事、念願の市場投入を果たしたようでした。そして、平成19年には製品回収するに至りました。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kaisyu/2007/kaisyuu2007-3-1394.html

回収理由は「商品パッケージにおいて、承認されていない効能効果の表示を行っていたため回収します。」というものです。効果がないのですから、当たり前ですが、なぜばれたのかは良くわかりません。このニュースを聞いて僕が思ったのは、「辞めて良かった」というものです。アドバンジェンサイドも僕のことが大嫌いなようで、どこを見ても僕が社長をやっていた形跡はありません。僕としても、こんな恥ずかしい事態になった会社に、僕の足跡が残っていないことはちょっとだけありがたかったりします。

その後
僕は、すっかりバイオがイヤになってしまいました。育毛剤も、健康食品も、効きもしないものが市場に溢れています。科学っぽいことを語りながら、実際には科学でも何でもなく、ただのインチキばかりです。「あぁ、15年間追い求めてきたバイオによる夢のような世界は、本当に夢だったんだな」と思いました。そして、技術者でも、研究者でもない僕には、これ以上、どうしようもないこともわかりました。僕は9ヶ月ほど無職で過ごした後、ITベンチャーを立ち上げました。そして今に至るわけです。

所感
最初にも書きましたが、紆余曲折は全部自分の能力不足です。論文を信用したこと、特許を信用したことから始まり、すべて自分の経験不足、能力不足でした。逆に言えば、バイオベンチャーの社長にはこうした能力が必要とされます。今の会社には、パイプラインがたくさんあるので、ヘアカットJPがこけてもどうぶつしょうぎがあるし、どうぶつしょうぎがこけてもスキー販売があるし、それがこけてもウェブサイト構築やマーケティングコンサルティングができます。それに比較して、バイオベンチャーはシングル、あるいは2、3のベーシックテクノロジーに依存する経営体制になります。それが折れてしまえば、即終了です。そうしたときに、抱えている社員や、投資している株主に対してどう責任を取るのか、このあたりが大きな問題になってきます。ITに比較したら、かなり難しい業界であることは間違いありません。

おわりに
そうは言っても、誰かバイオベンチャーをやりたいという人がいれば相談には乗ります。協力もできるかも知れません。ただ、僕は実験結果に嘘をつくのは嫌です。僕の根っこは研究者ですから、実験結果に対しては、常に謙虚でいたいと思っています。また、市場に対して嘘をつくのは嫌です。他人に嘘をつくのも嫌です。人を騙してお金を貰いたいとは思いません。効きもしない薬を売ったり、効果のない健康食品を販売するのはまっぴらごめんです。本当に効くものを、必要としている人に届けたいと思います。そのあたりをご理解いただける方で、僕がお役に立てるようなことがあれば、お声がけください。多少は「バイオベンチャーにおける失敗」の経験が役立つかも知れません。

関連エントリー:ちょっと見かけた博士

    
Posted by buu2 at 20:08Comments(0)TrackBack(0)バイオ

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2011年04月23日

うちの会社のリソースを使ってできそうなこと

協力者、アイデア、募集いたします。何かあれば、お気軽にアクセスをお願いいたします。

1.どうぶつしょうぎアプリ
概要:iPad、iPhone、iPod touchのアプリ。「きせかえどうぶつしょうぎ」の導入により、新しいデザインを設定できる。まだ事例はないものの、新デザインをアイテム課金して販売することも可能なはず。

その1 被災地応援スキンの製作と販売
被災地を応援するデザインのスキンを製作する。キャラクターはカキ、ホヤ、さんま、金華さば、わかめ、まがりねぎ、せりといった被災地の名産物。スキンはちょっと高めの有料販売として、売上金を寄付にまわす(Apple社の取り扱い手数料は3割)。あるいはiPadやiPod touchといったゲーム端末を購入し、被災した子供たちにプレゼントする。
問題点→誰がデザインする?プレゼントしても、被災地では使えないかも?リアル盤をプレゼントする?なるべく不便な、遊びのないところから?

その2 イベント開催
Apple Store仙台が再開した際、銀座で実施しているようなイベントを開催する。あるいは避難所で、子供たちとゲーム。
問題点→iPadやiPod touchの確保。リアル盤がないと、引き続き楽しむことができない?(でも、自作すれば、ね)

2.ヘアカットjp
概要:美容室向けのiPadを利用した簡易アルバムシステム。最大のウリはシャッターを押すだけで自動的にデータベースに写真が送信されるという点。SDカードや画像管理ソフトを介さないので、お手軽。しかも、ほぼリアルタイム。

その1 導入支援
被災地の美容室に導入費無料で導入する。まずは仙台など、復旧が進んできている地域から。
問題点→導入スタッフが確保できないので、二週間に一度など、ある程度案件をまとめてもらう必要がある。費用はお客様一回あたり100円の利用料のみ。

その2 避難所アルバムに転用
避難所バージョンを設定。避難所で写真を撮影すると、それが自動的にアルバムにアップロードされる(シャッターを押すだけであとは全部自動でアップロードされる)。被災者の親戚や家族などが閲覧できる。
問題点→プライバシーは?公開範囲は要検討。PCも最低1台は必要(iTunesがないとiPadが利用できない)。  
Posted by buu2 at 20:18Comments(2)TrackBack(0)社長

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2011年03月08日

拝啓 ITメディア様

この度は、拙著「Twitter後のネット社会〜コミュニケーション中毒患者の処方箋〜」を取り上げていただきまして大変ありがとうございます。貴重なスペースを割いていただき、恐悦至極に存じます。

コミュニケーション欠乏症の現代人へ――アゴラオリジナル書籍が配信開始

さて、著者という立場からこんなことを申し上げるのは大変僭越ではございますが、ひとつだけ、お願いがございます。

折角ご紹介いただきました記事なのですが、拙著のご紹介文におきまして

「コミュニケーション欠乏症」に陥ってしまった現代人にひとつの処方せんを提示しようとしている。


という記述があるかと存じます。著者の私といたしましては、拙著で述べたかったところは全く逆でありまして、過剰すぎるコミュニケーションの中で忘れているものがないか、という問題提起を行ったつもりでおりました。このような誤解を生んでしまったのはひとえに私の筆力不足、能力不足ゆえであると海より深く反省している次第ではありますが、もし可能であれば、ご紹介いただいた文章の内容につきまして今一度ご確認いただきまして、拙著との整合性がとれているかどうかについてご検討いただければ幸甚でございます。

敬具



17:09追記
署名記事ということもあり、また元原稿の西尾泰三氏をツイッター上でフォローしていることもあったので、直接

ありがとうございます!削除されてしまったので先ほど再アップしておきました!ところで、別途こちらもアップしておりますので、是非ご一読いただければ幸いです(著者より)。→ http://ow.ly/49Seu  RT @makeplex: 悪ノリ感もあるけど、総統やりますね。


とRTさせていただいたところ(ちなみに西尾泰三氏のつぶやきは僕の著書に対してではなく、僕が作った総統閣下MADに対してのもの)、次のように返信をいただきました。

makeplex 5:03pm via TweetDeck
@Amidalachan 過剰すぎるコミュニケーションが現代人のコミュニケーション欠乏症候群から生じたものと考えれば、「忘れているもの」というのがそうした方のコミュニケーションに処方せんになり得るという認識ですが、いかが… (cont) http://deck.ly/~fxRex


なるほど、コミュニケーションは十分なはずなのにそれで満足できず、さらなるコミュニケーションを求めるような層を「コミュニケーション欠乏症」と称したのか。それはそれでありうる表現ですね。

「欠乏症」は、依存症の人間に対しての供給が不足して起きる場合(=禁断症状)と、健常の人間に対しての供給が不足して起きる場合があるので、「これは違う」とは断言できないのか。じゃぁ、僕が勝手に加筆しておきます。

過剰なコミュニケーションの中でコミュニケーション依存症となり、新たなコミュニケーションを模索している、いわば「コミュニケーション欠乏症」に陥ってしまった現代人にひとつの処方せんを提示しようとしている。


こんな感じで。要は、「欠乏症」という単語から受けるイメージが共有できなかったってことですね。僕がこの単語から受けるものは、健全な状態に対して不足する、というものだったので。

ツイッターって、便利だよね(笑)。そして、「ほら、ツイッターは便利だろう?」と思った方は、是非「Twitter後のネット社会」をお手元にどうぞ。よろしくお願いいたします。

ご購入はこちらです。
「買い方がわからない」という方は、こちらをご参照ください。  
Posted by buu2 at 14:26Comments(0)TrackBack(0)日記

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2011年02月14日

どうぶつしょうぎ こどもたいかい

昨日、Apple Store GINZAにおきまして、「第一回どうぶつしょうぎ こどもたいかい」が開催されました。

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参加資格は、小学校3年生までの子供を含む家族でした。インターネットによる応募で、下は1歳から、上は小学校3年生まで、幅広い子供たちが集まってくれました。

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大会は、前半に「らいおん・はんと」による得点競争、後半に「どうぶつしょうぎ」による家族対抗戦を実施しました。対局場はこんな雰囲気です。

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大会の前半で実施された「らいおん・はんと大会」は、アプリを使った大会ならではの展開となり、予想以上に盛り上がりました。短時間でどんどん進めることができるというのが最大のポイントです。参加していただいたのは会場からの飛び入りの村田さんを含め、総勢5名。全員が2度ずつ挑戦し、スコアは次のようになりました。

たかばたけしんや君 173434点 219090点
あべともや君 136794点 182724点
むらた君 140604点 157316点
ふじたゆうき君 268393点 293039点
ふじたともき君 281055点 271096点

大会規定では、最高得点を記録した方がベストハンター賞となっており、初代ベストハンター賞に輝いたのはふじたゆうき君となりました。

初代ベストハンター賞:ふじたゆうき君
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ふじたゆうき君が得点した293039点はとても素晴らしい成績で、問題を作った僕もびっくりしました。

続いて実施された家族大会では、事前に登録された4家族によるリーグ戦が実施されました。結果は次のようになりました。

藤田組:3勝
Snoopy:2勝1敗
チームアベ:1勝2敗
makihibiki:3敗

この結果、優勝のらいおん賞は藤田組のお二人となりました。

初代らいおん賞:藤田組
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初代らいおん賞に輝いた藤田組は、ふじたゆうき君、ふじたともき君の双子の兄弟チームでした。上野で実施されたどうぶつしょうぎの大会でも優勝したとのこと。今後の活躍が期待されます。

また、初戦ではお姉さん(4歳)が大泣きをしてしまい、お父さんを困らせていたmakihibiki組は、奨励賞としてAppleのギフトカードが贈られました。これから毎日どうぶつしょうぎを練習してください。

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参加していただいた皆さんには、参加賞としてApple StoreからTシャツがプレゼントされました。

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Apple Storeに買い物に来ていた方々も見に来ていただき、対戦も盛り上がったため、当初の予定を15分ほどオーバーしてしまいましたが、皆さんのご協力のおかげで無事「第一回 どうぶつしょうぎ こどもたいかい」を終了できました。ご参加いただいた皆さん、会場で出場者に声援を送っていただいた皆さん、そして、貴重なイベントスペースをお貸しいただいたApple Store GINZAの皆さん、どうもありがとうございました。

「第二回 どうぶつしょうぎ こどもたいかい」でまたお会いできればと思います。  
Posted by buu2 at 15:38Comments(0)TrackBack(0)将棋

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2011年02月12日

Android版どうぶつしょうぎ、本日リリース

大変お待たせしておりましたAndroid版どうぶつしょうぎアプリが本日リリースされました。

Android版どうぶつしょうぎアプリ、本日リリース

いくつかのハード的制約があり、やむを得ず、当初搭載可能と思われていた機能がいくつか未搭載の状態での投入となっております。Apple版どうぶつしょうぎDXとの差異は次のようになります。

○どうぶつしょうぎDX、Android版どうぶつしょうぎ共通の機能
同一端末を利用した対戦機能
CPU対戦(よわい、ふつう)

○どうぶつしょうぎDXのみの機能
CPU対戦(つよい)
らいおん・はんと
すれちがいたいせん

今後の開発予定につきましては順次、公式ブログ等でお知らせしていく予定になっております。

Android版どうぶつしょうぎも、Apple版とあわせてよろしくお願いいたします。

Androidマーケット「どうぶつしょうぎ」

なお、明日は13時より、Apple Store銀座におきまして「どうぶつしょうぎ こどもたいかい」を実施いたします。すでに家族対戦の出場者応募は締めきっておりますが、「らいおん・はんと」部門については当日参加が可能となっておりますので、お近くにいらっしゃる際は是非お立ち寄りください。

#らいおん・はんとに参加される場合、なるべく「どうぶつしょうぎDX」がダウンロードされている端末(iPhone、iPad、iPod touch)をご持参ください。  
Posted by buu2 at 23:01Comments(0)TrackBack(0)将棋

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2011年01月26日

理研が(今さら)SNSを作ったらしい

理研が関係者向けにSNSを作ったらしく、10年ほど前に3年弱在籍したことがある僕にも招待状が届いた。

この、5年ぐらいの周回遅れっぷりが素晴らしい。SNSはもうとっくの昔に成熟してしまい、「こんなの、ミクシィの中に理研関係者コミュニティを作れば良かったんじゃないの?あるいは、うちの会社でも和光市、朝霞市、新座市、志木市を対象とした地域SNSを持っているのだから、それを使ってもらっても良かったよね、ただし、3年前に」とか思ってしまう。

技術的には別にそんなに難しい話でもなく、またアイデア的にも特段なにかあるわけでもなく、そもそもずっと前から存在していて、「よし、OBにも開放しよう」っていうことなのかも知れないけれど(これを読んでいる理研関係者さん、そこそこいますよね(笑)どうなんですか?)、それにしても、ようやくこういったシステムを導入できることになったというのは、日本の行政システムのダメさ加減を端的に表しているとも言える。

そういえば、METIのブログとかツイッターもいつの間にか死んじゃったよね。

税金で運用されている組織というのは基本的にオープンであるべきで、そこで働く人達は所属を明確にした上で、きちんと責任を持って、その手のシステムで情報発信すべきだと思うのだけれど、それをあまりせず(現場はやりたいと思っているのだろうけれど、組織がそれを支持しないんだろう)、逆に壁を作ってコソコソっとやりたがるところが何とも微笑ましいと思う限り。

ということで、今頃やってきた理研SNSではどんな情報が行き来しているのかちょっと楽しみなので、登録申請をしてみた。「よし、俺たちでベンチャー作っちゃおうぜ」とか、「こんな研究やりたいんだけど、誰か一緒にやらない?」とか、そういう話が掲載されていると良いですね。

「今度の理事の募集はここだけの話だけど出来レースですよ」とか、「この研究者の募集も実際にはもう決まってますよ」とか、「また文科省から役人が来るらしいよ」とか、「○○研究室はお取り潰しらしいよ」とか、そういう話も見つけたらブログで報告したいと思います(笑)。え?載ってるわけない?そりゃそうだ。本当なら、RIKENLeaksとか作っちゃうのが最先端なんだけどね。  
Posted by buu2 at 12:14Comments(4)TrackBack(0)社長

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2011年01月13日

三井住友銀行よりも三菱東京UFJ銀行の方が良い銀行かも??

三井住友銀行の無駄に厳しいセキュリティシステムのおかげで、弊社のネットバンキングシステムはかれこれ2ヶ月も停止したままである。もう、何度やりとりをしたかわからない。それでもようやく最終段階で、今は銀行からのセキュリティコードが郵送(←これが馬鹿)されてくるのを待っているところである。すぐ届くのかと思ったら、「一週間程度時間が必要です」って、お前ら、どこの国から送ってくる気だよ、と思う。じゃぁ、丸の内支店に直接出向けばすぐに完了するのかといえばそんなこともないようで、そうやってストップしている間にも毎月システム利用料と称して2100円をふんだくるのである。それで、ちょっとお金が必要な開発案件があって、「200万円ぐらい借りられる?」って聞くと、「1000万とか、1億とかなら!」って、アホか。要らないよ、そんなにたくさん。ちなみにこの銀行は米国Appleからの送金の受付対応もできず、仕方なしに三菱東京UFJ銀行で受け取っているありさま。

Appleからの国際送金が受け取れない件

ネットバンキングが止まっていると何が困るって、この状態では、お客様からの振り込みがあったかどうかを毎朝近くのATMまででかけて確認しなくちゃならないわけです。朝と夕方にATMに行って通帳記帳するのがこの2ヶ月ぐらいの日課(笑)。「振り込み確認次第商品を発送します」としているショップをいくつか保有しているから、この作業だけは欠かせないわけで、今日も寒い中、ATMまでおでかけ。もう、なんというか、三井住友銀行は死ね、って感じ。

中小企業にはそんなガチガチなセキュリティは不要だし、1億なんて要らないから数百万円融資して欲しいし、海外からの送金ぐらいちゃんと受けてくれ、と思うのだけれど、これって、三菱東京UFJ銀行なら話は違いますかね?星野君とか、高橋君とか、あぁ、今だと児玉くんとかも三菱ですか?どうなんですかね???  
Posted by buu2 at 11:05Comments(2)TrackBack(0)社長

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2011年01月04日

公務員の採用試験をもっと遅くしたらいかがでしょうか?

昨日「公務員試験を受ければ良いじゃん」って書いたけれど、いつが試験なんだろうなー、と思って調べてみたら、試験って5月の連休なんだね。I種は第1次試験が5月2日。なぜかII種は一ヶ月後の6月20日。これ、早くない?なんか、「就職活動の開始が早すぎ」とかいう意見があって、「確かにそうだよな」と思わないでもないんだけれど、その一方で「でも、民間企業にあーだこーだ言うのはなかなか難しいでしょ」とも思うわけで、国民が唯一正々堂々と口を出せるのはここだよね。なんで一次試験をセンター試験の頃にできないんだろうね?2ヶ月もあれば選抜なんてできるでしょ。え?通常国会が始まっちゃう?でも、一次試験なんてどうせマークシートでしょ?え?良い人材が青田買いされちゃう?大丈夫だよ、本当に高い志を持った人間なら内定切りしたって国に来るから。大体、「うちを蹴って国に行くなんてけしからん」ってそっぽを向くことができる会社なんて、そうざらにないから。どちらかと言えば、「いやぁ、これも何かの縁ですから、引き続きよろしくお願いしますね」ぐらいが関の山でしょ。

そういえば、僕は三菱総研在職時に転職活動をして、野村総研の内定を蹴って経産省に行ったけれど、野村総研は僕が内定切りについての謝罪の連絡を入れても全く返事がなくて、経産省在職中も一切コンタクトを取ってこなかった。これは素晴らしい。逆に三菱総研なんか、主任研究員のなんちゃらさんが僕のところに来て、「元三菱総研なんだから情報提供を」とか便宜を図らせようとして、「ふざけんな」って言ったら、今度は人事部から「それはおかしい」って連絡が来たくらい(笑)。確かに僕は任期付きの官民交流法で経産省に入省したけれど、当時から片道切符ということだったし(要は、三菱総研と野村総研のあいだでの人間の取り合いが紳士協定で禁止されていて、その協定破りの最初のひとりに僕がなりそうになってしまったので、それをご破算にしたいっていうのが三菱総研側にあったとの噂。三菱総研としちゃぁ、とにかく僕が野村に行かなければ良かったわけで、その目的はきちんと果たした)、それ以前に「官民交流法で入省しているから」っていう理由で前職の企業に便宜を図ることを迫るっていうのは、これは違法行為じゃないの?人事部には「これは物凄く問題だと思うのですが、○○さんの意見は会社としての意見ですか?」って聞いたら黙っちゃった(笑)。僕はこういう人間だから平気で「そんなこと言って大丈夫?」って問いただしちゃうけど、普通の人間なら人事部から文句が来たらおとなしく従っちゃうよね。って話がそれましたけど、野村総研さんは素晴らしい。けど、そんな会社はマイノリティでしょ。ってことで、大手を振って内定切りすればよろしい。なんで国家公務員試験をもっと遅くにやれっていうことにならないんだろう。

不思議だなー、と思って、「公務員試験 実施時期 問題」でぐぐってみたら、こんなニュースが。

大阪府、人材確保へ民間型試験 11年度から

二ヶ月も前倒しかよ!逆じゃんか(笑)。あ、でも良いニュースも。

府職員希望者の減少を憂慮しており、幅広い人材を確保するのが狙いだ。


だってよ!公務員希望者、減少してんじゃん。チャンスじゃん。仕事がないって困っているなら、みんな公務員になりなよ。

あ、大分古い資料だけど、平成14年8月2日に行政改革推進本部決定なんていうのが出ている。ぐーぐるさんは素晴らしいね。

採用試験の抜本改革の在り方

また、試験日程については、受験者の立場に十分配慮して、合格発表の後に各府省の総合的な人物評価が行われるよう早期化・短縮化の方向で見直す。


おいおい、短縮化はもちろん歓迎だけれど、早期化かよ。これじゃぁ、国をあげて就職活動を前倒しさせているんじゃん。この方針はまだ続いているのかね?えっと、こういう話はみんなの党とかに言えば良いのかな?  
Posted by buu2 at 16:25Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年12月15日

オフィスに新しいプリンターがやってきた

プリンターの調子が著しく悪くて、ブラザーに電話したら、引き取り修理で・・・て話はこの間書いたとおり。ちょっと考えて、新品を買いました。MFC-J850DN。

DSCN2816


それで、昨日の夜に届いていたんだけど、僕は忘年会で出ちゃっていたので、佐川はお持ち帰りになった。今日の午前中に配送を頼んでおいたら、今度は佐川さんがなんかミスってしまったらしく、届いたのは今日の夜になってから。それで、設置して、設定して、動くようになったんだけど、何だコリャー。すげぇ早い!早い!早い!早い!何もかもが早い。まず、設定。ちょっと前にワイヤレスLANルーターを新調したんだけど、そいつにAOSSってのがついていたおかげで、接続はワンタッチ。ドライバーのインストールにはPCの再起動があって「むむむ」ってちょっと思ったけれど、あとはもうほとんど何もなし。いつからこんなに便利になったんだ。それで、試しにプリントしてみたら、これがまたすこぶる早い。ってか、今までのプリンターなんだったの???

思うんだけど、プリンターってものすごい消耗品じゃない?たった5、6年でものすごい技術革新っていうか、進歩があって、もう、なんかこの間まで使っていた奴は江戸時代のものですか?って感じだよ。

それで、その超絶品プリンター(っていうか、電話もできて、スキャナーもついてて、コピーもできるしファックスもできる)が、たったの26000円って、ありえなくないですか?これなら、2年に一度くらいは買い換えたほうが良いかも???

うーーーーん、ここ一年ぐらいで色々なものが壊れて、PCも、ルーターも、プリンターも、全部新しくなったわけですが、異常なまでに快適ですよ。

古い方のプリンター、いらねー。誰か欲しい人がいたらあげます。子機付きで。プリンターとしても、修理すれば使えます(笑)。って、誰もいらないよね、こんなの。あ、詰め替えインク(ただし、エレコムので、純正じゃないですけど)もたっぷりあります。3000円分くらい。全くお勧めしませんが、万一欲しい人がいたら連絡ください。着払いでお送りします(笑)。  
Posted by buu2 at 23:09Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年12月07日

求人

ちょこっと縁あって裏である人とやり取りしていて(いや、僕は別に全然オープンにして問題ないんだけれど、僕なんかと相談しているってバレて迷惑かけたら悪いから(笑))、「そういやぁ、この企画、随分前からペンディングにしちゃっていたなぁ」というのがあったのを思い出したので、求人してみます(笑)。本当は内緒にしてやるようなことだけど、すげぇ儲かりそうってことでもないので、オープンにしちゃいます。


1.求める人:社長
できれば専業で出来る方。会社はあります。多少のお金もあります。ただし、給料を出せるほどではありません。すぐにお金を稼げるか、あるいは少なくとも数カ月は食べていけるだけの貯金のある方、もしくはベンチャーキャピタルから自分の給料分ぐらい資金調達できる方。

2.会社でやること:メインの事業案は下記参照(一部機密情報のため伏字)
行列ができる理科学研究所(仮称)
(I)概要
研究者による、一般生活者のための、サイエンス・ポータルの運用
サイト概要:想定される閲覧者は一般の生活者。生活者に向けて、最新のサイエンスを解説したり、あるいは生活者では判断がつかないような身の回りのサイエンスについて科学者の視点で有効性をチェックし、情報発信する。また、企業向けレポートの受託などを行う。

(II)内容
その1 サイエンス・チェック
(1)評価者
 評価者は博士号取得者(無条件)、博士号取得者から一定数の推薦を受けた者。評価投票は義務ではなく自由意志。

(2)評価対象
 基本的に何でも可。技術の信ぴょう性の他に、論文の価値、技術の実現予想(実現時期なども含む)なども評価対象。当面は評価委員会で選択
具体例:
コラーゲンを食べると肌はプリプリになるのか
血液型占いはあてになるのか
白金ナノコロイドは体に良いのか
ウコンを飲むと肝機能が向上するのか
核融合はいつごろ実用化するのか

(3)評価形式
 (ア)評価対象は生活者から提案
 (イ)各テーマについて、賛成、反対に関する客観的レポートを募集
 (ウ)同時に、それらについてのわかりやすい一般向けレポートを募集
 (エ) 機密
 (オ) 機密
 (カ) 機密
 (キ)定期的に、研究者・生活者別に無記名アンケートを実施、公表
アンケートは、間違い0、ほぼ間違い1、どちらとも言えない2、ほぼ正しい3、間違いなく正しい4、みたいに得点をつける。その上で、わかりやすいコントロール投票を別途実施する。素人でもわかりそうな「ネス湖にネッシーはいるか」とか。その上で、投票から平均点数を算出。

ネス湖にネッシーはいるか 0.6
遺伝子組み換え食品は体に悪い 0.9
コラーゲンは有効か 1.2
歯磨き粉は有効か 1.8
ウコンは有効か 1.9
納豆は体に良い 2.1
カルシウム拮抗薬と利尿剤を組み合わせると血圧が下がる 3.1

など。

 (ク)アンケート回答結果は随時変更可能

(4)アウトプット
 (ア)投票結果によって対象技術をランク付け
  (3以上:信用できる、2~3:ほぼ信用できる、1~2:ほぼ信用できない、1以下:信用できない、など)
 (イ)生活者向けレポートは優秀なものについて(電子)書籍化を検討

その2 サイエンス・コメント
(1)解説者
 解説者は博士号取得者(無条件)、博士号取得者から一定数の推薦を受けた者。評価投票は義務ではなく自由意志。

(2)解説対象
 基本的に何でも可。最新ペーパーなども解説対象。
具体例:
DNAの骨格がリンではなくヒ素になることの意味
はやぶさの成果

(3)解説方法
 (ア)解説者による投稿
 (イ)解説者のブログからのトラックバック
 (ウ)参考資料へのリンク

(4)アウトプット
 (ア)ウェブサイトで公開
 (イ)優秀なものについて(電子)書籍化を検討

その3 サイエンス・レポート
(1)解説者
 実際に当該テーマを研究している現場の研究者であることが前提。

(2)解説対象
 研究者が提案したもの。当面は評価委員会で妥当性を協議(あくまでも、法的整合性などに限定)。購入希望企業からの提案も受け付け。

(3)内容
 企業向け最新技術レポート。サマリーのみをサイト上で公開。全文については有料配布。価格は5~30万円程度を想定。著作者に対しては一定割合を還元。

(III)収益(案)
(1)アフィリエイト等、広告収入(ただし、会社の中立性は確保)
(2)理化学機器の広告収入
(3)電子書籍化した場合に一定額をシステム利用料として徴収
(4)判定結果の利用料(マスコミ等で利用する場合は有料とする)


3.応募条件・応募先
僕のところまでメールしてください。ツイッターでも可。「このブログやってます」とか、「このツイッターやってます」とか、何か判断基準になるものがあれば提示してください。履歴書不要。学歴も提示不要。年齢不問。性別不問。看板はいりません。ただ、社長なので、現行法の取締役欠格事由に該当する方は応募できません。

メアド:motoki@liblog.co.jp
Twitter:@Amidalachan

4.期限
適格者が見つかった時点で終了

5.備考
「社長は無理だけど、面白そうだから就職したい(兼務、アルバイト可)」という方も連絡をいただければ、バックでリストを作っておいて、動き出した時点で連絡させていただきます。


以上、ふるってご応募ください。あ、会社の所在地は四ッ谷になります。  
Posted by buu2 at 16:13Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年11月01日

今年もやるぞ! 「第2回 どうぶつしょうぎ三昧と豪華蕎麦打ち in 鹿島槍」のお知らせ

来る11月13日、14日に、「どうぶつしょうぎ三昧と蕎麦打ち in 鹿島槍」を実施します。皆様のご参加をお待ちしております。

概要:
まだ雪が降っていないはずの鹿島槍スキー場でどうぶつしょうぎをやって蕎麦打ちを体験しよう!

その1 どうぶつしょうぎやり放題
リアル版でもiPhoneアプリ版でも良いんですが、好きなだけどうぶつしょうぎができます。少なくともアプリホルダーが3人以上参加しますので、すれちがいたいせんもできます。もちろん初心者でもオッケー。

その2 蕎麦打ち
今年取れたばかりの蕎麦粉を使ってのそばうち体験です。滅多にできません。簡易版の蕎麦打ちセットではなく、白馬のお店で実際に使っているような本格的な道具を使い、取れたばかりの新蕎麦粉を用いての超本格的蕎麦打ちです。「ちゃんとできるのかなぁ?」という方も安心。なぜなら、去年の第一回で、僕が実際に携帯電話を片手に、蕎麦打ちに関するサイトをネットサーフしながら「ほーー、なるほど」と試し打ちしてみたのですが、ちゃんと美味しくできました(ただし、十割蕎麦は失敗。あれは素人には無理です。が、「そうか、十割蕎麦とはこんなに難しいのか!」と肌で知ることもできます。以後、蕎麦を見る目が変わること間違いなし!)。

去年の様子はこちら

その3 粉もの満喫
今年は油と粉の専門家が参加してくれます。そばだけではなく、うどんも作れます。天ぷらもつくれると思うので、山菜やら、きのこやらで天ぷらそばも作れそうな気がします(確証はありません)。餃子の皮も作れそうなので、餃子も焼けるかも。って、そんだけ食ったらお腹一杯で死んじゃいそうですが。

費用:
鹿島槍のゲストハウス宿泊で、一泊二食(蕎麦は別)つき、蕎麦打ち体験も含めて驚きの6000円(一人)!ただし、キャンセル料はいつでも100%。だって、全然利益を取ってないんだもの。みんなの好意が集まってのこのお値段。だから、絶対にキャンセルしないで!キャンセルするなら、代打を出して!それが無理ならお金だけ払って(笑)、ということで、よろしくお願いいたします。小学生未満の未就学児童、および小学生については安くしてあげたいのですが、子供ばかり集まってしまったらごめんなさい。頑張って人を集めて、少しでも安くできるように頑張ります。

交通:
現地集合、現地解散が基本ですが、「それじゃー、行きたくても行けないよ!!」という方の為に、頑張って配車します。調整がつかなかったら、バスを借りることも考えます。でも、高速道路代が安いし、できればバスを借りずになんとかしたいです。長野まで新幹線で来てもらえれば、長野、鹿島槍間をピストン輸送することも考えます(片道多分1時間ぐらい)。

オプション:
現地でバーベキューやりたい!とか、オフロードサイクリングやりたい!とか、キノコ狩りやりたい!とか、あれば、格安実費で対応します。鹿島槍スキー場の会長さんは僕のスキー部の知り合いだから、きっと頑張って対応してくれます。

近郊でのあそび:
土曜日の昼間は栂池とか、ちょっと足を延ばすなら、上高地とかに行ってみるのも楽しそう。善光寺に行っても良いし、温泉ツアーもあり。夜は白馬の美味しいお店に繰り出すも良し、大町の全然知られていないお店を紹介してもらえるかも?子供がたくさんいたら花火大会でも良いし、温泉巡りもできるはず。天候や気温次第ですが、お楽しみは色々。

そばアレルギー:
「家族に蕎麦アレルギーがいるのよ!」という人がいたら、蕎麦打ち隊は放っておいてバーベキューやろう!ということで、もしアレルギーの人がいても大丈夫!でも、誰もいなかったら企画しません。だから、蕎麦アレルギーの人は早めにご連絡ください。

集合:
13日土曜日、夜ご飯まで(18時くらい?)に鹿島槍スキー場のセンターハウスまで来てください!お酒持参歓迎。ただし、日曜日は運転する人は絶対飲んじゃダメです。

解散:
14日日曜日、蕎麦でお腹が一杯になったら?大体10時ぐらいから準備を始めて、1サイクルが1時間程度だと思います。八割蕎麦をまず試して、余力があったらもう一回。ここまでで結構お腹一杯だと思うけれど、「よーし、やっちゃうぞ」という場合は十割蕎麦にチャレンジ(あまりお勧めしませんが(笑))。打って、茹でて、食べて、14時にはお腹一杯死にそうだー、と言いながら後片付け、という展開と思われます。

連絡先:
motoki@liblog.co.jp
090-3439-6900
担当:僕(元木)

締め切り:
準備の都合があるので、11月7日までにお願いします。

---------------------------------------------------------
申し込みフォーム(適当に整形してください)

1.参加 (します しません)
2.参加人数(大人   人、小学生未満   人)
3.交通手段(自分でなんとかします 誰かなんとかしてください 誰かもなんとかします(  人)
長野まで行くから、そこからなんとかしてください)
4.そばアレルギー(あり なし)
---------------------------------------------------------

#今のところ、大人14名、子供2名確定です。  
Posted by buu2 at 20:35Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年10月25日

開発にあたっての個人的備忘録

開発のポイント

その1
エンドユーザーの提示する解決策、提案よりも、エンドユーザーがどういう操作を行っているか、どこで問題が生じているかを把握することが大事。

「○○をやって欲しいのですが」と言われたら、「なるほど、それはなぜですか?」と聞いてみる。改善策ではなく、抱えている問題を聞く。

「風邪をひいたので、風邪薬をください」といわれたときに、「まず、どんな症状なのかをお聞かせください」と質問するということ。

時にはエンドユーザーの提案が正鵠を射ている場合もあるが、そのケースは少ない。それができるから、開発者はお金を取れる。


その2
何か新しいことにチャレンジするときは、新しいこと以外の部分は極力標準にあわせる。標準でないことをやるというのはただでさえリスクを抱えている。それが新しい標準を提案する野心的なものであれば別だが、何が狙いで、何が狙いではないのか、その整理をきちんとする。狙いではない部分でリスクを冒してはならない。

開発にあたって何か問題が生じた場合は、極力既存の代替手段を使うのが基本方針。


その3
開発は仮説を立て、検証し、改善していくのが基本。このシステムを崩すと開発が属人的になる。属人的な開発は継続的な成功を保証しないし、開発組織の劣化を招く。

検証が難しい開発には手を出さないほうが良い。

特に、新規の開発はポイントが他者との差別化等にあるので、本質ではない部分には注力すべきでない。


その4
判断に迷ったときに立ち返るべき基本方針があるなら、それに従う。逆に言えば、この基本方針は開発初期に明確にしておくべきである。基本方針が開発に対して大きな悪影響を及ぼすときのみ、この基本方針を変更することを考える。

自社開発では、悩むのは時間の無駄。どんどん決定していくことが大切。  
Posted by buu2 at 13:07Comments(2)TrackBack(0)社長

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2010年10月23日

不景気も、悪いことばかりではないのかも?

何度か似たようなことを書いているとは思うけれど。

僕は三菱総研にいたとき、そこそこまじめに組合活動をやった人間である。そのあと経営の側になって、あのときの活動ってちょっと違っていたんじゃないかなぁ、と思う次第。会社の経営というものについて、きちんと見ることができていなかったと思う。

会社でも、店でも、経営者と労働者の関係は、「経営者は労働者が働く場所を作る。労働者は、経営者が作った場で働いて賃金を得る」というものだ。先日、新宿の会員制のクラブのママと話をしながらつらつら考えを整理してみたのだけれど、ママは身銭を切ってその店を切り盛りしている。そこでは複数の女の子達が働いているわけだけれど、僕がその中の誰かを気に入ったとして、「じゃぁ、次からはこの店じゃなくて、別のところでデートしよう」と誘い、相手の女の子が「わかった!」と了解してしまうと、ママにはお金が全く入らない状態になってしまう。これでは、リスクを背負って店を経営しているママは困ってしまう。ママが困って店を閉めてしまうと、そこで働いていた女の子の仕事がなくなる。その場所が働きやすい場所であればあるほど、お店の女の子はそういう店外活動を控える必要が出てくる。ただ単に客という視点から見ると「どうせお金を払うなら、お店でお金を使うよりも美味しいものでも食べようよ」ということになるし、それが理由で僕は自腹でキャバクラに行ったことは一度もないのだけれど、話が経営の視点、労働の場所の確保という視点になれば、「お金はお店で使って」ということになる。本来、労働者も「労働の場所を確保する」という意味で、経営のことをきちんと考える必要があるわけだ。それを無視して労働者の権利だけを強硬に主張すれば、会社の経営は傾くことになる。そして、会社の経営が傾いたとき、日本のように労働市場が硬直している国では、一番困るのは労働者自身でもある。株主、経営者、労働者を一行で書けばこんな感じだ。

株主:リスクマネーを払っている、会社の持ち主
経営者:株主から任されて会社を運営している人たち
労働者:会社で働いて賃金をもらっている人たち(=会社がなくなったら困る人たち)

時々「会社は社員のもの」とか言っている馬鹿を見かけるけれど、とんでもない。会社は株主のものだし、経営をコントロールするのも株主だ。そして、会社の方針がイヤなら、労働者は他所に行けば良いだけのことである。そういう流動的な労働市場が形成されていないのがそもそもの間違いだけれど、例えば僕の場合は三菱総研→理研→経産省→株式会社アドバンジェン→株式会社ライブログと、会社を転々としているわけで、やってやれないことはない。今の日本は残念ながら誰でも能力さえあれば好き勝手に転職できるような環境ではなさそうだけれど、それにしても「会社は社員のもの」というのはかっとびすぎ(森永卓郎氏なら平気で言いそうだけれど)。社員は必要要素だけれど、それと所有者は全く別の概念だ。例えば読売ジャイアンツの坂本が「ジャイアンツは俺のものだ」とか、サッカー日本代表の長友が「日本代表は俺のものだ」とか言ったら「はぁ?」って感じなのと一緒である(もちろん彼らがそんなことを言ったわけじゃないですよ。分かりやすいように誰でも知っていそうな事例を出しただけ)。必要要素のひとつであることと、「誰のものか」という議論は全く次元が違う話である。

さて、つい先日、ソフトバンクの孫さんが

会社で買った武器(ここではiPhone、iPad)を個人使用するな、というケチな会社があります。僕に言わせればとんでもない。


と語ったらしい。

会社購入のiPadを個人利用するな、なんてとんでもない---ソフトバンク孫社長

ここで書かれていることには僕はほぼ全面的に賛成である。でも、

移動時や在宅時にも利用できるため、時間も有効に使えるようになった。


などという部分を見ると、「労働の場所を確保する」という視点が欠落している人間はすぐに「労働強化だ」とか、「時間外労働の隠蔽だ」などと言うに違いない。実際、労働の強化だし、時間外労働の隠蔽でもあるのだから、当たり前と言えば当たり前なのだけれど、そういう制度にならざるを得ない賃金制度こそが問題でもある。例えばコンビニやファストフードの店員は、店にいるときだけ働けば良い。厳密には接客について色々考えたりもするだろうが、基本的には店にいるときだけ労働力を提供すれば良い。だから、時間当たりいくら、という「時給」の考え方が成立する。しかし、多くの仕事では、これは成立しない。何時間働いたか、ではなく、どの程度稼いだか、である。その点、給料とは税金の考え方に近くてしかるべきで、「あなたは私の作った労働の場所で1000万円の利益を生み出しました。だから、私はあなたに500万円の給料をお支払いします。残りの500万円で、私は引き続きあなたが働きやすい場所を提供します」というのが経営者の考えである。例えば三菱総研の場合、1998年当時で僕のノルマは5000万円、僕の給料は年俸で1000万円程度だったけれど、会社の維持費(看板代も含む)としての差額4000万円というのが正当かどうか、というのが、本来経営者と労働者が調整すべきものだったはずだ。でも、今から振り返ってみると、少なくとも僕にはそういう考え方はなかった。僕の場合は「もっと働きやすい環境を作れ」というもので、もっと具体的に言えば「バイオ関連の仕事がとってこられるような環境を整備しろ」というものだったのだけれど、それが三菱総研で実現できないと経営、および人事から提示されたので、僕は理研への出向を経て経産省に転職した。それが間違いだったとはこれっぽっちも思っていないし、そうやって転職するのに大きな困難が生じない、踏み台として利用したときに大きな効果を発揮する会社だったのだから、三菱総研というのは良い会社だったとも思う。それでちょっと話がずれたけれど、要は、三菱総研は「あなたの稼ぎから4000万円いただいても、あなたが働きやすい職場は作れません」と言ってきただけのことで、僕は僕で、「今の環境では5000万円稼ぐのは無理なので、転職します」と答えただけのことである。他の分野では可能でも、バイオでは無理だった、と、それだけのことだ。では、仮にそれが可能だった場合、どうなるのか。大事なのは、5000万円稼いで、4000万円を会社に納めて、残りの1000万円を自分のものとする、ということで、労働時間が何時間だとか、残業がどうとか、そんなことは一切関係ないはずである。これは三菱総研という勤労の場がそういう性質だったことによるのだけれど、でも、一方で多くの勤労の場でも大なり小なり、似たような状況にあるとも思う。

孫さんが言及したソフトバンク各社も同じだろう。三菱総研のように小さな個人事業主の集合体という場ではないと思うけれど、それでもファストフードの店員のように、店にいる間だけ言われたことをやっていれば良い、という部分は少なそうだ。だから、賃金と言うのは、その働いている状況にあわせて、能力主義・成果主義にするか、労働時間に合わせるかを考える必要がある。ところが、日本では能力主義・成果主義が嫌われる傾向にある。それは、成果主義導入のきっかけがバブルがはじけたことで、経営コストを低減するために、経営者の視点中心で導入が図られてきたからである。しかし、上にも書いてきたように、能力主義・成果主義は、労働者の視点からも歓迎されるべきだし、それによってくだらない「残業」などという概念も不要になる(ケースもある)。

経営者と労働者は一方的な関係ではない。労働者がいるおかげで経営者は会社を維持できるし、経営者が場を提供しているから労働者は日々を暮らしていくためのお金を得ることができる。15年ほど前までは大企業を中心として「会社は未来永劫存続して当たり前」だったわけだけれど、山一證券の廃業あたりから少し風向きが変わってきた。でも、山一證券のときはまだ、「あの会社は儲けすぎていたから」みたいな雰囲気があって、まだ多くの会社員が「やばい」と感じるまではいかなかったんだと思う。でも、日本航空の話などもあって、そろそろみんな「やっぱり、やばいのかも?」と感じるようになってきたようだ。おかげで公務員になりたい、などと考える大学生が増えてきているようだけれど、そんな学生ばかりだとすれば、日本の経済の回復はもうありえず、ただただ衰弱していくだけだろう。

必要なのは、リスクを背負いつつ、経営者と労働者が相互に理解しあい、会社を成長させていくことで、そのためには「iPadぐらい買ってあげますよ。家に持ち帰っても構いません。家ではゲームとか、好きに使って良いですよ」ぐらいは当たり前の話だし、一方で、「成果をあげるためには会社だけじゃなく、家からもネットに接続できて、お客様にメール連絡できるほうがありがたい」と考えるのも当たり前の話。こんなの、宣言するような話でもないのだけれど、それをソフトバンクみたいな会社の社長がわざわざ確認しなくちゃならないところに日本のお先真っ暗感が見て取れる。

こういう話を読んですぐに「労働強化じゃん」とか考える人はきっと社民党支持者とかなんだろうな、などと思うし、そういう人がいても構わないけれど、少なくともうちの会社では絶対にやっていけないだろうな、と思う。また、そういう人は公務員とか、年功序列・終身雇用の衰退大企業が向いているし、そういう組織では「家で遊ぶかも知れないからiPadを全員に支給するなんてとんでもない」と考えるだろう。どちらを選ぶかは本人次第なので、大事なのはそういう情報、会社がどういうスタンスなのかをきちんと発信することなんだと思う。孫さんのソフトバンクは、こうだ、と。

ライブログは完全に成果主義です。もうちょっと稼げたら社員全員にiPadも支給したいですが、まだそこまでは稼げていません。社長も自腹で買ってます。「ヘアカット.jp」で頑張りたいものです。

冒頭で事例をあげたクラブ、少し前に行ったとき、「今日は入店希望者のテストなの」っていう女性がいた。次に行ってみたらいないので、どうしたのかな、と思ったら、落としたと。ママ曰く、「シングルマザーで仕事がなくて困っていたみたいだけれど、うちでは無理だと思ったから」とのこと。大学生の就職難という話ももう何年も続いている。働く場所があるということは凄くありがたいことだってことをそろそろ労働者は理解すべきだ。誰でも仕事がある時代じゃぁなくなったということ。「そんなことなら労働者でいるのはイヤだ」ってことなら、経営者になって、自分で労働する場所を作ればいいだけの話。会社法の改正で一円会社が可能になったのは非常に良いことだ。誰でも労働する場所を自分の思い通りに設計して、作ることができる。

会社って誰のものなの?なんていう幼稚な議論が成立してしまう日本だけれど、今の不景気を機に、みんながきちんと「会社とは何か」を考えるのであれば、不景気も悪いことばかりではないのかも知れない。

#全然話は違うけれど、現状のシンクタンクって、協同組合(中間法人)がフィットすると思う。シンクタンクのOBを集めて共同組合を作ってみようかな・・・・・。でも、そういうのがないってことは無理なのかなぁ。少なくとも関連システム会社を上場廃止にして子会社化、そこに三菱総研の看板をつけて再上場、なんていうのよりはずっと良いと思うのだけれど。  

2010年10月13日

ヘアカットJPがエフヨコに登場!

ヘアカットJPが、FM横浜で紹介されます。エフヨコを聴取可能な方は、14日の12:25頃から、THE BREEZEの街角レポートにご注目ください!

仕事の方も、お昼休みかも?

  
Posted by buu2 at 22:25Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年09月25日

朝になって真面目に考える「日本でベンチャーが育たない理由」

昨日の朝生で出てきた意見をベースにちょっと考えてみる。

サービスが儲けに直結しない(勝間)というのは、ある意味でその通りだと思う。ライブログの商品で言えば、「どうぶつしょうぎアプリ」にしても、「ヘアカットJP」にしても、黒字に乗せるまでにはかなりのパワーが必要だ。ただ、それぞれに「なぜ儲からないの?」ということに対して明確な理由もある。まずどうぶつしょうぎアプリ。このコンテンツの魅力については疑うところがない。文句なしに面白い。ただ、残念なのは、弱いCPUと対戦機能がないことである。この二つが搭載されたら、きちんと採算に乗ると確信している。その二つがまだ搭載されないことにはいくつかの理由があるのだが、大人の事情をここで書いても仕方がない。そして、今となってはもうその大人の事情は関係なくなりつつある。つまり言い訳はできない状態でもある。スピードアップしたければ借金するなり、資金調達するなりしてスピードアップすれば良い、という状態になった。ノロノロしているのは僕の責任でもあるので、頑張ってスピードアップさせていきたいと思っている。どうぶつしょうぎアプリについて言えば、正直、最初はデザインもイケテなかったし、機能的には今でもまだ今一歩だと自覚している。ただ、AppleのAppStoreの良いところは、そんなレベルの商品であっても、完成度が今ひとつでも、それをマーケットに出せてしまうことである。考えて、良いものにして、それから売るのではなく、考えながら、良いものにしながら売っていくことが可能だ。こういうスキームはベンチャー企業にとって非常にありがたい。このプラットフォームも外国産だけれど、ボーダーレスの環境下で日本でもAppStoreを使うことができることはとても助かるし、ベンチャーを取り巻く状況は変わりつつあるんだとも思う。また、社会の受け止め方も随分と変わってきたんだと思う。以前なら「こんな酷い製品を出しやがって」で終了だった。今は、「もっと強いCPUにして欲しい」「デザインが悪すぎる」「効果音がないと寂しい」と指摘していただいた上で、そうした対応が実現することを待っていてくれる多くのお客様達がいる。これは会社として本当にありがたいことである。そのおかげで、どうぶつしょうぎアプリは少しずつではあるけれど、確実に良いものになってきている。お客様に育てていただいているのがどうぶつしょうぎアプリだ。一方、ヘアカットJPはどうぶつしょうぎアプリよりもずっとあとに開発を始めたけれど、市場に投入した時期はそれほど変わらない。こちらも製品のクオリティ的にはもう一歩のところがあるけれど、今後は主力商品のひとつに成長させていきたいと思っている。この製品の最大の問題点は営業力である。これは非常にはっきりしている。今はその営業力を補うべく、色々な人と会って、どんな協業体制が構築できるのかを相談している。営業担当になってもらえそうな人、会社にお願いしていることは、ヘアカットJPのお客様達(美容室、サロン)の意見をきちんと吸い上げていただきたいということだ。売ったらそれでおしまい、ではない。そのアフターフォローを通じて、ヘアカットJPをより魅力的なものに成長させていきたいと思っている。このマインドはどうぶつしょうぎアプリと全く同じだ。まとめると、二つのサービスは、資金力と営業力という、それぞれ違った要因で「なかなか儲けに直結しない」という状態になっている。ただ、逆風ばかりでもない。だから、「これが原因でベンチャーが育たない」というのは、当たってはいるものの、それは主たる要因ではないというのが僕の考えだ。

意思決定者がリスクを取らない(石黒)というのは、主としてB to Bの場面で、大企業側のスタンスを指摘したものだ。例えば昨日、某百貨店の上層部の人たちと飲み会をやった。彼らにもライブログの商品をいくつか紹介したけれど、「じゃぁ、それをうちで売りましょう」ということにはなかなかならない。これがすなわち、「意思決定者がリスクを取らない」という場面である。僕たちは日本でのビジネスがそれなりに長いので、こういうことにはすっかり慣れてしまった。10の新サービスのうち、あたりは2しかない、という状況で、日本の大企業が考えることは「じゃぁ、全部いらない」ということである。だから、「意思決定者がリスクを取らない」という指摘は概ね正しいと思う。しかし、この状況をベンチャーの側から修正するのは非常に難しい。また、保守的な大企業がそのスタンスを変えるのもなかなか難しい。指摘は正しいが、それを改善するのは、日本の労働市場を流動化させるのと同じくらい難しい話だと思う。

役所がベンチャーの製品を買わない(松田)というのも、上に挙げた事例と一緒だ。役人の人事評価の基本は減点法なので、貢献することよりも非難されないことを重視する。これでは、新しいものを試すなんていうことにはならない。ただ、役所の姿勢は政治主導で変えていくことができるので、企業の風土を変えるよりはずっと簡単だろう。しかし、民主党には無理だ。これをやるためにはみんなの党あたりがもうちょっと力をつけてくれないとダメだと思う。

「村上ファンドとホリエモンが潰されて、ベンチャーを育てていこうという雰囲気が失われた」(田原)という意見も概ね正しいと思う。しかし、彼らが潰されて雰囲気が悪くなったというよりは、もともとの日本の「出る杭は打たれる」という風土が彼らをターゲットとしつつ、「ベンチャーが育たない」土壌を維持したという方がより正確だと思う。公務員も、大企業の社員も、ベンチャーが育つことを心の底から期待してなどいないのである。そして、その他の日本人にとっては、ベンチャーの育成などは、公務員や大企業社員にとってのそれよりも、もっとどうでも良いことなんだと思う。ベンチャーを育成することの大切さを、ほとんどの日本人が理解していない、ということだ。

日本の社会がゼロリスク社会だから、ベンチャーのようなリスクをとる企業形態が難しい(飯田)という意見も概ね正しいとは思うが、これはあまりにも抽象的であり、言及するに値しない意見だと思うので、ここではスルー。

ベンチャーにお金を貸してくれない(辻本)というのも正しい。ライブログもいつもお金には困っている会社だが、信用金庫などはなかなか融資してくれない。僕個人にはお金を貸してくれるのに、会社には貸してくれない。「これでは投資なのか融資なのかわかりませんからねぇ」とは融資担当者のつぶやきだけれど、お金を貸す側がこういう姿勢では確かにベンチャーは育たない。これに関連して「日本は融資が中心だから」(石黒)という意見があったけれど、これには僕は同意しない。もちろん、バイオのように直接金融が重要なベンチャーも存在するのだが、ITなどは直接金融よりも間接金融(融資)の方がずっと助かる。なぜなら、直接金融というのは会社にとってもっともハイコストな資金調達方法だからである。借金で済むなら借金の方がずっとありがたい。それは、そのお金を調達するコストを考えれば明白だ。今は金利が非常に低いから、お金を借りても利子は大したことがない。年利10%としても、1000万借りても1100万円返せば良いだけである。ところが、直接金融ではそうはいかない。1000万円借りて1億円の利益が出たときに、何千万もの利益を持って行かれてしまう可能性がある。くわえて、株を持たれてしまったら、それは基本的にずっと相手のものだ。一方で、直接金融のメリットは「失敗したら返さなくても良い」ということである。ITの会社の場合、普通にやっていれば「物凄い大金をリスクマネーとして投入して倒産」というケースはあまりない。比較的マーケットに近いところでやっているので、大儲けにはならなくても、そこそこに売り上げが立つからだ。ただ、バイオなどは話が別で、こちらはハイリスクの世界。投入したお金は帰ってこない可能性が高い。だから、直接金融の方が助かる。時々、「バイオはハイリスクだから投資の対象にしにくい」と言うベンチャーキャピタリストがいるのだが、これは話があべこべである。ハイリスクだからこそ、キャピタリストには能力が要求され、そして成功したときのリターンが大きいのである。まとめると、ベンチャーとしてはもうちょっとお金が借りやすくなると良い、ということだ。ただ、石原さんの銀行みたいな例もあって、色々難しいんだとは思う。世の中、ちゃんとした会社ばかりではないから。

ひとつの失敗に懲りてもうやろうとしない(松田)という意見は全くそのとおり。失敗してなんぼのものだし、その失敗こそが財産なのに、日本はもうチャレンジしようとしない。ただ、これも、正しい指摘をしても何も変わらない。小さな成功をどんどん積み重ねていくしかない。「なんで日本のベンチャーはだめなんだ」というそもそもの問題提起には、「本当に、全部ダメなの?」という疑問もある。社会のそこここに、小さな成功が蓄積されているんじゃないかと思う。そして、その数が増えていけば、日本の雰囲気も変わるはずだ。だから、僕たちは諦めちゃいけないんだと思う。外部から退場を宣告されるまで、しがみついてでもやっていかなくちゃいけないんだと思う。

ちなみに「起業するなら全部自分で稼いで、家を担保に入れて資金調達しろ」(森永)という意見「だけ」は部分的に正しい。上でも述べたように、ベンチャーにとっては間接金融の方がコストが格段に低い。成功する自信があればあるほど、直接金融に頼るべきではない。ただ、モリタク氏の論調はこういった論理的思考の帰結とは思えないところが残念なところだ。経路がぜんぜん違うのになぜかゴールは一緒だった、ということは良くある話である。

さて、まとめ。僕の「日本でベンチャーが育たない理由は?」という問いかけに対する答えは、「日本人のほとんどが、日本の社会におけるベンチャー企業の必要性を認識していないから」である。

以前、池田信夫さんがブログで「ここまで来ても官民ともに危機感がなく、格差是正とか「強い社会保障」とか内向きの話ばかりしている国にいるメリットは、企業にも個人にもない。バカ高い法人税を放置すると、もうかる企業からどんどん出て行くだろう。」(出典「Exit or Voice」)と書いていたけれど、僕はもうちょっとこの国で頑張ってみるつもりだ。できれば、どうぶつしょうぎアプリも、ヘアカットJPも、日本から海外へ拡大していきたい。

#ヘアカットJPで提携できる方、いつでも募集しております。  
Posted by buu2 at 12:38Comments(4)TrackBack(0)社長

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2010年09月21日

どうぶつしょうぎアプリの開発方針

先日このブログで紹介したとおり、どうぶつしょうぎアプリは現在DXバージョンのレビュー(Apple社による審査。これに合格すると販売が可能になります)待ちの状態です。レビュー期間は通常一週間ほどで、おそらくは今週末までに「どうぶつしょうぎDX」がAppleのAppStoreに並ぶと思われます。当初は現行の「どうぶつしょうぎ」に有料でアドオンする形で効果音と強いCPUを販売する予定だったのですが、この方式ではAppleの承認が降りず、やむを得ずデラックスバージョンの販売に踏み切ることにしました。

DXバージョンの開発という方針変更にともない、どうぶつしょうぎアプリの開発構想も大きく変更せざるを得なくなりました。その概容を説明すると、現在のところ、Apple端末向けのどうぶつしょうぎアプリファミリーは3種類を予定しています。

ひとつは現行の「どうぶつしょうぎアプリ」です。デラックスバージョンの投入が決まり、このバージョンの位置づけは「どうぶつしょうぎ盤」という色彩が濃くなります。iPadを利用した場合にはかなり立派などうぶつしょうぎ盤として利用できますし、iPhoneを使って合コンで遊ぶ、なども可能です。本当はこの延長線上にデラックスバージョンがあって、差額を支払うといつでもアップグレードできるというのが理想だったのですが、それが難しくなってしまい、非常に残念に思っています。現行のどうぶつしょうぎアプリについては、DXバージョンの投入を機に、開発のメインストリームから外れることになります。今後もどうぶつしょうぎアプリを楽しんでいただくためには、どうぶつしょうぎDXへの買い替えをおすすめします。「でも、それじゃぁ115円で買った現行バージョンが無駄になってしまうじゃないか」という意見もごもっともですので、DXバージョンを投入した直後に「乗り換えサービス期間」を設定し、120円割引で販売する予定です。期間は2週間程度になる予定ですので、乗り換えを希望する方はぜひこの期間中に乗り換えをお願いいたします。なお、現行バージョンについては、現行バージョンからDXバージョンへの乗り換え率やDXバージョン投入後の販売状況を見て、無料化させていただく可能性もあります。ただ、これまでに4500人の方々が115円で購入していただいている現実もあり、そうしたお客様たちとの間に不公平感が生じないよう、慎重に対応していきたいと考えています。したがいまして、無料化につきましては、現段階では「そういう可能性もある」程度にお考えいただければ幸いです。

ふたつめは、今度登場する(予定の)「どうぶつしょうぎDX」です。少し前に実際の対局場面を動画で紹介しましたが、DXバージョンに搭載されるCPUはかなり強化されています。「ふつう」バージョンで僕がざっと対局してみたところ、僕の勝率は8割程度でした。「そんなに勝ててしまうのか!」と思うかも知れませんが、かなり考える場面がありますし、十分に楽しむことができるレベルだとは思います。本気でじっくり考えれば勝率はもっとあがると思うのですが、個人的には適度な強さだと思っています。将棋で初段くらいの方であればかなり楽しめると思います。「よわい」バージョンでは僕の勝率はほぼ10割だったので、性能的には格段の差があります。また、「つよい」バージョンは開発段階でひとつ大きな問題を抱えていました。それは、長すぎる考慮時間です。これは基本的にはデバイスの処理能力によるのですが、「ふつう」に比較すると相当長い時間(難しい局面では20秒程度)考えてしまいます。実際にやってみるとこれはかなりのストレスで、何とかならないものかと色々と考えてみました(というか、今も考えています)。考慮時間を短くするためのアルゴリズムを考えれば良いだけのことなのですが、それをするには少々時間が足りず、仕方なしにある別の考え方を導入してみました(内容については今のところ秘密です)。これはかなり実験的な要素が強く、開発バージョンをモニターテストしてみても、「どちらが強いのか良くわからない」というインプレッションがいくつか寄せられました。ただ、思考方法は「ふつう」と「つよい」では明らかに違うもので、そして考慮時間は以前の「つよい」に比較して格段に短くなっています。まだまだ改良の余地が大きい「つよい」バージョンですが、今後、さらなる改良を進め、ストレスなく強いCPUと対戦できるようにしていきたいと思っています。少なくとも、「ふつう」「つよい」の2バージョンは現行バージョンのCPU(DXでは「よわい」に相当)からは格段に進歩していますので、その違いは実感していただけるはずです。そして、DXバージョンのもうひとつの目玉はもちろん「効果音」です。これは、「音が何もしないのは寂しい」という意見がTwitterで散見されたことから開発したものです。普通に「パチっ」という駒をうつ音、あるいはリアルなどうぶつしょうぎと同様に「コトっ」という音でも良かったのですが、「せっかくだから、どうぶつしょうぎっぽくしよう」ということになり、動物の鳴き声と足音で効果音を構成してみました。DXバージョンでは「こまおと」「あしおと」「なきごえ」の3種類を楽しむことができます。この中で特に楽しいのはやはり「なきごえ」です。らいおん、ぞう、ひよこなどの鳴き声が楽しいのはもちろんですが、「きりんって、こういう風になくのか!」ということを、このゲームをやったほとんどの人が感じるに違いありません。なぜなら、ほとんどの人がキリンの鳴き声を知らないからです。「あしおと」については実際に設定してみると、音が低く、ちょっと聞き取りにくい部分があります。こちらについては再調整の余地があると考えていますが、DXバージョンの投入を急ぐ都合上、やや未成熟のままに見切り発車してしまったところがあります。当面は「なきごえ」で楽しんでいただければ幸いです。なお、「なきごえ」「あしおと」の両バージョンとも、滅多に聞くことができないにわとりの効果音を引き出すのもひとつの楽しみになると思います。正直にいえば、「強いCPU」も、「効果音」も、現段階ですでに改善の余地があることがわかっているのですが、それに目をつぶってでも楽しんでいただける要素が多く含まれていると考えています。大変恐縮ではありますが、当面は「ふつう」「なきごえ」モードでお楽しみいただきつつ、「つよい」と「あしおと」が改善されるのをお待ちいただければと考えています。

みっつめは現在開発を開始したところの「ねっとでたいせん どうぶつしょうぎ」です。これは今のところApple Game Centerをプラットフォームとした対戦アプリになる予定です。現在はまだApple Game Centerの仕様を調査している段階で、どういった形で投入するのかは白紙の状態です。

ライブログのどうぶつしょうぎアプリ開発チームは、現在DXバージョンのレビュー待ちという状態ですが、のんびり連休を楽しんでいるわけではありません。チームは現在ローカルでの対戦機能「すれちがいたいせん どうぶつしょうぎ」を開発中です。これはネット対戦とはまた別で、Wi-FiやBluetoothを使った、近距離でのPeer to Peer対戦になります。当面想定しているのは、ある程度の人数が同じ場所に集まったときに、場所を移動することなく対戦を楽しむことができる、というものです。具体的に想定しているのは、名人戦や竜王戦などの将棋棋戦の解説会です。これらの解説会はもちろん解説者達が楽しい話を聞かせてくれますし(実際、話が上手な棋士が多い)、次の一手などのお楽しみイベントなどもあるのですが、対局者が長考中に「やることがないなー」などということも発生します。また、お父さんに連れてこられた子どもたちが手持ち無沙汰で退屈している、といった景色も散見されたりします。そんな場所にiPhoneやiPod touchがあって、知らないどこかの人とどうぶつしょうぎで軽く対戦できたら面白いかな?と思ったわけです。他にも、どうぶつしょうぎアプリによるイベントなども検討中です。iPhoneユーザーに集まってもらって、ローカルで対戦していただき、一斉に対局してもらう、などというイベントも可能になると思っています。この試行は早ければ10月中旬までに一度実施してみる予定です。このすれちがいたいせん機能はDXバージョンに搭載される予定です。

なお、これらのApple端末向けアプリ開発とは別に、Android対応のアプリ開発も進めています。引き続き、どうぶつしょうぎアプリ開発プロジェクトをよろしくお願いいたします。  
Posted by buu2 at 13:17Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年09月20日

毎日徹夜続きのどうぶつしょうぎアプリ開発

この時間になると目がしょぼしょぼ。

どうぶつしょうぎアプリ、皆さんから「音がないと寂しい」とか、「CPUが弱すぎる」とか言われ続けていたので、なんとかしようと思っていたわけです。それで、ようやく「よし、これで良いんじゃないの?」というものができたので、バージョンアップの申し込みをしたのが1週間以上前。Appleのレビュー(審査)は申し込みから大体一週間後ぐらいに開始になって、その後10時間ぐらいでダウンロード可能になるのだけれど、今回はレビュー状態になってから3日以上時間が経過した挙句、リジェクトされてしまった。

原因はいくつか考えられるのだけれど、ひとつのソフトの中で機能を制限して販売するのは基本的にまずいらしい。なので、多くのアプリでライトバージョンとフルバージョンみたいな感じで複数のアプリ化を図っている。

僕としてはみんなに「どうぶつしょうぎ盤」みたいな感じで、とりあえず対戦ができて、ひとりでも遊べるバージョンがあって(今販売している「どうぶつしょうぎ」アプリのことです)、その上で音がなったり、強いCPUと対戦できたりする機能をアドオンできるのが理想だったのだけれど、それをひとつのアプリ上でやるのはAppleのポリシー上、難しいみたいだ。

#正確にはリジェクトの理由は現在のところ不明。「どうして?」と問い合わせてはいるのだけれど、自動返信で「問い合わせを受け付けました」とメールが届いて以来、一日以上音沙汰が無い。ただ、返事が来るのを指をくわえて待っているわけにもいかない。

ということで、リジェクトを食らってから丸二日で「どうぶつしょうぎDX」をつくりあげ、さっきレビューに出したところ。

僕のiPad上にはすでにデラックスな感じのアイコンが存在する。

DSCN1482


今度は無事レビューが通ると良いんだけれど。  
Posted by buu2 at 03:30Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年09月19日

東工大の院卒が大体駄目人材という話

今日、ちょっとある会社の人事関係者と話していて出てきたのが、「ネットとかで見かける東工大の院卒っていう人材は大抵使いものにならない」という話。彼は僕が東工大の院卒だということはもちろん知っている。「へぇ、そうですかね?でも、僕の同級生とか、結構使える奴が多いと思うけど」って返事をしたら、「あぁ、ごめんなさい。言葉が足りませんでした。学歴に東工大院卒って書いている人間はほとんどがロンダー(学歴ロンダリングしている人)なんですよ。それで、そういう人たちのうち、大学の学部をきちんと明記している人はちゃんとしているんです。ロンダーが全部駄目ってことじゃない。駄目なのは、学部をきちんと書かない人たちです。この人たちは、自分が卒業した大学を表に出したくないんです。だから、大学を書かない。そして、こういう人たちはほぼ100%が駄目人材なんです。だから、時々見かける経歴とかで大学院だけ書いてあって、学部が書いてないと、あぁ、こいつは駄目だな、って判断しますね」とのこと。なるほど。それは一理ある。「でもさ、それは東工大に限らなくないですか?」と聞くと、「いや、東大はロンダーでもそれなりに使える人間がいたりします。東工大は学部に比較して大学院が凄く入りやすいんですよ。だから、そういう学歴ロンダリングをしたい人が集まるんです。そして、その目印は出身大学を書かず、大学院だけ書く。わかりやすいですよ」だって。

なるほどね。そう言われてみれば、そんな気もする。うちの研究室の出身者はどうなのかなー、じゃぁ、学部が違う大学で、東工大の院を出ていて、学歴とかが書いてありそうな人で、反例になりそうな人(つまり、優秀な人)だと、林さんかなー、とか思って林さんを調べてみた。

林宣弘

あれ?いつのまにか東工大に戻っているぞ(笑)。岡崎にいたと思ったのに。で、学歴、学歴・・・と。あ、こっちにあった。

林宣弘

あ、ちゃんと書いてある。あ、でも、林さんは大学が東大(ただし理学部物理学科)で修士から東工大っていう変り種だから、関係ないか(笑)。

ということで、東工大院卒で卒業学部が不明な人はほぼ100%使えない人間だということが結論のようです。いや、僕が言ってるんじゃないですよ。伝聞ですが、でも僕もなんとなくそんな気がする。要は、ロンダリングじゃないならちゃんと学部も書けよ、理科大だろうが上智だろうが隠すなよ、という話ですね。

#そういえば、研究室のひとつ上の人の結婚式で、彼の紹介を聞いたときに「今の紹介、酷いですよね。○○さんは理科大卒なのに、あんな学歴インチキじゃないですか!」って立腹していた△△君も今や東大の教授だなぁ(笑)。△△君は正真正銘東工大卒だったからね。

##余談だけれど、話には続きがあって、「そして、そういう人間はやたらと不倫するんですよ」とのこと(笑)。へぇ。ちょっと、身の回りで事例調査してみるかな?

追記:関連エントリー「ブログでバイオ番外編 答え一発、ひと目でわかる、ネットでのロンダーの見分け方」  
Posted by buu2 at 20:06Comments(42)TrackBack(0)社長

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2010年09月12日

ヘアカットjpのパンフレットができた

どんどん配ります。

DSCN1336


DSCN1334
  
Posted by buu2 at 01:05Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年09月06日

ヘアカット.jp全国ツアー

cut01将来はID登録するだけで誰でも使えるようになる予定なんですが、まだそのレベルまでは到達していないヘアカット.jp。今、一番の問題点はワイヤレスLAN周りの設定なんです。これさえクリア出来てしまえばあとはそれほど大きな問題は発生しません。

特に、「すでにiPadを導入している」というサロンだと話が早いです。

ただ、やっぱり「もうiPadを導入しています!」というサロンはまだまだ少数。これまでの事例だと、ワイヤレスLANルーターを設定して、パソコンを設定して、パソコンにiTunesをインストールして・・・・といった具合に各種設定をやる必要が出てきてしまいます。首都圏なら僕や営業のスタッフが直接行けば済むのですが、これが大阪だとか、名古屋だとかになると大変。特に一店舗だけのために出張となると、僕たちのような小さな会社だと一大事です。そこで、色々な地方の日を設定して、その地域ごとに集中的にヘアカット.jpの導入サポートをやってしまおうかと考えています。

とりあえず、札幌、仙台、新潟、長野、名古屋、大阪、神戸、広島、福岡、徳島といったところで集中サポートを考えております。「うちでも導入したい!」という方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。なお、ここに列挙した都市以外の方でも興味がある方がいらっしゃいましたら、遠慮無くお問い合わせください。

ヘアカット.jpについてはこちらをどうぞ。

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Posted by buu2 at 19:16Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年09月02日

どうぶつしょうぎに関する不思議な話

僕は別に日本女子プロ将棋協会の足を引っ張りたいというわけでもないし、彼女たちの独立の経緯を比較的そばからみていたので、これまでずーーーーーっと、一年以上黙ってきていたけれど、その大本営の日本女子プロ将棋協会(以下、LPSA)からこんなお知らせが出たので、ひとつの区切りと思ってちょっとコメントしておく。

LPSAでの「どうぶつしょうぎ」販売中止のお知らせ

このお知らせは、LPSAのどうぶつしょうぎ事業からの撤退表明に他ならない。ところがこのお知らせに関する相談その他は、ライブログに対しては一切の連絡がなかった。この点について、僕は非常に大きな疑問を持つ。なぜか。ライブログとLPSAは、どうぶつしょうぎ事業に関して次のような契約を結んでいるのである。

#以下、契約書全文。契約書の内容の開示に関する特別な条項はないので、公開するのに不都合はない点、弁護士には確認済み。

契約書

株式会社ライブログ(以下、「甲」とする)と、一般社団法人 日本女子プロ将棋協会(以下「乙」とする)は、「どうぶつしょうぎ」関連のイベント事業(以下イベント事業とする)、およびインターネット・携帯アプリを利用した通信サービス事業(以下「通信サービス事業」とする)について、以下の通り契約を締結する。

[事業内容について]
第1条 甲と乙は「どうぶつしょうぎ」のイベント事業および通信サービス事業に関して、共同で企画開発に取り組む。

[イベント事業について]
第2条 甲は、平成20年4月19日に乙が主催する1dayトーナメント「どうぶつしょうぎカップ」に対して協賛金  万円を支払う。

第3条 乙は「どうぶつしょうぎ」関連のイベントを継続的に企画・開催し、広く普及活動を行う。

[通信サービス事業について]
第4条 甲が事業主体となり、開発に関する費用は全額甲の負担とする。

第5条 乙は甲の行う通信サービス事業にについて公式と認定し、ライセンスの使用を許可する。また甲の合意なく、他の第三者に対して同様の事業を新規に許可・委託するなど、本事業の妨げになることを行わない。

第6条 開発コストを上回る利益がでた場合は、甲に3分の1、乙に3分の1を配分する。残りの3分の1は甲社内で積み立て、次年度以降のイベント事業および通信サービス事業の資金とする。

[契約期間について]
第7条 本契約は2009年4月1日から2011年3月31日までとする。期限内に甲乙双方から何らかの申し出がないときは、1年毎に自動的に契約が更新されるものとする。

上記契約を証するため本書2通を作成し、甲乙署名捺印の上各1通保有するものとする。

平成21年4月14日


株式会社ライブログ


一般社団法人 日本女子プロ将棋協会


#第2条の金額に関してのみ、LPSAのその他の契約に関係する可能性があるので、ここでは数字を伏せておく。

まず最初の疑問は、この契約書の第5条において、「また甲の合意なく、他の第三者に対して同様の事業を新規に許可・委託するなど、本事業の妨げになることを行わない。」と明記されているにも関わらず、ライブログになんの相談もなく事業の権利を株式会社ねこまどに譲渡していると思われる点である。その結果、株式会社ねこまどは下記のサイトを立ち上げている。

どうぶつしょうぎ.ねっと

ライブログはLPSAと喧嘩をする気がないのと同様、北尾さん、藤田さんとも喧嘩をする気はないのだけれど、ライブログに何の相談もなくどうぶつしょうぎの事業権を株式会社ねこまどに譲渡し、ライブログに何の相談もなく「どうぶつしょうぎ.ねっと」というサイトが立ち上がった現状は異常であると感じる。僕たちは「ふざけんな、そんなサイトは絶対に許さない」などと言う気はもちろんないし、話し合いをしてきちんと役割分担をしたいと思っているけれど、それとは別に、これではライブログとLPSAとの契約は全く無視されていることになる。

また、契約書には次のような覚書が添付されている。

覚書

株式会社ライブログ(以下、「甲」とする)と、一般遮断法人 日本女子プロ将棋協会(以下「乙」とする)は、「どうぶつしょうぎ」を題材とし、携帯アプリ開発およびインターネット利用のサービス開発に関して以下の通り覚書を取り交わす。

第1条 「どうぶつしょうぎ」に関する携帯アプリ開発に関してはライブログが事業主体となり、開発に関する費用は全額ライブログの負担とする。LPSAはこのサービスを排他的に公式サービスと認定し、全面的に協力する。

第2条 他の第三者に対して携帯アプリやインターネット関連事業に関する事業を新規に許可・委託するなど、本事業の妨げになることを双方の合意なしに行わない。

第3条 開発コストの目安は200万とし、定期的に経理報告や進行報告を行う。アプリの配信は2009年8月開始を目指す。利益については契約書に沿って配分する。また、夏季休暇中に一般参加の大会の開催を予定し、その後も双方協力のもと継続的にイベントを開催する。

第4条 本事業においてはLPSAとライブログはお互いにビジネスパートナーとしての意識をもち、誠意をもって事業にあたる。事業が発展した場合には、事業協同組合あるいは株式会社を立ち上げることも視野にいれる。

2009年4月14日


株式会社ライブログ


一般社団法人 日本女子プロ将棋協会


少なくともLPSAは、来年の3月まで、ライブログの実施するどうぶつしょうぎ事業に関して「公式」と認定し、全面的に協力する義務があるのだ。ところが、事業に関する権利を全て株式会社ねこまどに譲渡してしまったら、そんなことはできなくなる。

今でも「どうぶつしょうぎ ONLINE」のサイトには「LPSA公認」という文字が明記されている。この文言は一体どうしたら良いのか。

ここに転載した契約書、覚書をLPSAと交わしてから2ヶ月もしないうちにこの交渉の窓口となった北尾さんがLPSAを退会することとなり、LPSAから「北尾さんサイドの人間」と目された(らしい)ライブログはLPSAとの関係が非常に難しいものとなった。

実際には、北尾さんとLPSAとの対立が明確化した直後に藤田さんから個人的に相談を受け、北尾さんの懐柔に動いたりもしたのだけれど、北尾さんの意思も固く、また、彼女の主張にも頷首する部分があり、個人の考えを尊重する僕としてはそれ以上動くことをしなかった。結果的に北尾さんのLPSA退会という一面的には不幸な結末となったけれど、LPSAが連盟から退会したのと同様、北尾さんに「理」があるならそれもまた良し、と思った。そして、ライブログの立ち位置は北尾さんがいた時も、そしていなくなっても、変わらずに「どうぶつしょうぎ事業の共同事業者」だったはずなのである。

しかし、北尾さんのLPSA退会によって、どうぶつしょうぎアプリの開発は混迷を深めることになった。アプリ自体はすぐに開発できたのに、それを公開し、商業ベースに乗せることができない。LPSAが全く交渉の場に乗って来なかったのである。北尾さんの退会以降、いくつかのやりとりの後に、「今後は弁護士を通してください」との連絡を受け、以後、完全に没交渉の状態となってしまったのだ。このままではにっちもさっちも行かない、契約の期間も限られているのだから、無理矢理にでも公開しなくては、ということでApple Storeで販売を開始したのが1年後の2010年5月のことである。

そして、販売開始から約3ヶ月。また、寝耳に水の話が飛び込んできたわけだ。

ライブログがどうぶつしょうぎに注目したとき、どうぶつしょうぎはまだ野のものとも山のものとも知れないゲームだった。でも、僕たちはそこにダイヤモンドの原石のような輝きを見出したのだ。そして、たった100万円しかない資本金の中からなけなしのお金を搾り出して、どうぶつしょうぎの事業化権を購入した。その後、ライブログがスポンサードしたどうぶつしょうぎカップの開催前後からどうぶつしょうぎの知名度はアップし、今に至るのである。

この契約書の内容をきちんと読んでもらえればわかると思うけれど、僕たちがLPSAに出したオファーは破格のものだと思う。普通なら、ライセンス料で5%とかの金額を支払っておしまい、ぐらいが相場である。それをわかった上で、ライブログはLPSAが今後成長していく上でどうぶつしょうぎの売り上げが少しでも組織の助けになるように、この契約書を交わした。本当に、LPSAがどうとか、連盟がどうとか、そういう情報を抜きにしてこの契約書と覚書をきちんと読んでみて欲しい。これを知らない人たちがあちこちでライブログの悪口を言うのを聞いて、ずっと黙って我慢してきたけれど、僕たちにはこれっぽっちの悪意も存在しない。

この契約を締結する前も、僕は個人としてLPSAをブログでも、また、行動でも支援してきたつもりだ。そして、今も別に彼女たちの足を引っ張る気もない。彼女たちの将棋連盟に対して提示した「ノー」の姿勢は決して間違っていないと思う。

だから、僕は怒っているのではない。ただ、寂しいだけである。契約書を読めばわかるけれど、ライブログはLPSAの下請け会社ではない。「どうぶつしょうぎ」というコンテンツを育成していく事業のパートナーなのだ。ところが、その立場は完全に無視されてしまった。LPSAは、もうどうぶつしょうぎに関する事業には全く興味を失ってしまったらしい。覚書には「どうぶつしょうぎの携帯アプリおよびネットサービス開発のコストは200万円程度」と想定されているけれど、8月末まででの実経費は150万円強。そして、ソフトの売り上げは4000本、ここから出る利益は約32万円である。その間、LPSAがこの事業に対して何らかの協力をしたかといえば、皆無である。例えばiPad用の画面は通常のどうぶつしょうぎの将棋盤よりも広い画面が必要になっているのだけれど、この拡張作業ですらライブログは内製しているのだ。

近代の社会と、過去の社会の最大の違いは何か、考えたことがあるだろうか。近代社会が過去のそれと最も違うことは、今の社会が「約束を守ること」を前提としているということである。約束をみんなが守るから、今の社会は成立しているし、加速度的な発展を遂げたのだ。そして、ビジネスの世界における約束を明文化したものが「契約書」である。契約を無視する社会に発展はない。

この調子でLPSAは本当に大丈夫なんだろうか。  
Posted by buu2 at 02:27Comments(26)TrackBack(0)将棋

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2010年09月01日

ヘアカット.jp

本日、ライブログから新しいサービスの提供が開始されました。

logonew

美容室でヘアスタイルの写真を撮ると、それがそのままiPadで閲覧できるというものです。これによって、過去の自分の仕上がりデータを一覧することができます。最大のポイントは、デジカメのシャッターを押すだけで、あとは何の操作もなしに写真がiPadで閲覧可能になるという点です。今までの電子カルテシステムでも画像を保存しておく機能はありましたが、デジカメで撮影し、それをパソコンにデータ移送し、場合によってはファイルサイズを変更し、それを専用ソフトにアップし、お客様がそのデータを見るためにはプリントアウトするか、パソコンのある場所まで歩いていく必要がありました。ヘアカット.jpはそれらの作業を全て不要にしました。シャッターを押せば、1分後(ネット環境等によります)には今の撮った写真をiPadで閲覧することができます。

実際の画面その1
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実際の画面その2
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「このときのヘアスタイルが友達に評判が良かったんです」「前回の結婚式のときはこんなヘアスタイル、帯でした」

などと写真を見ながらサロンの技術者の方と相談が可能になります。登録する写真は公開、非公開に設定可能で、非公開設定にしてあれば自分だけのヘアカタログを作ることができます。

パンフレット(A4二つ折り両面)は下記でPDFを公開しておりますので、美容室に行く際にプリントアウトして「こんなのがあります」と持って行っていただけるととても嬉しいです。

パンフレット表
パンフレット裏


会社サイトの告知はこちら。

株式会社ライブログ「ヘアカット.jp」  
Posted by buu2 at 17:25Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年08月29日

Appleからの国際送金が受け取れない件

非常に些細なことかも知れないけれど、「これだから日本の銀行は駄目なんじゃないの?」と思うことがあったのでメモしておく。

ライブログがApple社(米国)のAppStoreを通じて「どうぶつしょうぎアプリ」を販売しているのは既報の通り。発売開始以来地味に売れ続けていて、今のところ販売数は4000ダウンロード。金額にすれば30万円ちょっとで、これではまだまだ全然赤字だけれど、毎年確定申告で「均等割って結構デカイよね」などと話しながら頑張っているベンチャー企業にとっては決して馬鹿にできない数字でもある。

さて、そのどうぶつしょうぎアプリの売上が、そろそろAppleから振り込まれるタイミングになった。「いつ振り込まれるかなぁ」と楽しみにしていたら、Appleから「振り込もうとしたら、銀行にリジェクトされた。登録したデータを再確認してくれ」という主旨のメールが届いた。

おかしいな、と思ってデータをチェックしても特に不審なところもない。Appleに「別に普通だけれど」と聞いたら、「じゃぁ、銀行に問い合わせてみてくれ」とのこと。そういうわけで、弊社のメインバンクである三井住友銀行丸ノ内支店に電話した。

すると、電話に出たお姉さんは、「うーーーん、何が悪いのかわかりませんね。Appleに問い合わせてみてください」とか言ってる。「いえ、Appleに問い合わせたら、銀行に聞いてくれって返事が来たんですよ。じゃぁ、メールアドレスを教えてください。Appleから来たメールをそのまま転送しますから」と言うと、「いや、そのような目的のメールアドレスは持っておりませんので」とのこと。馬鹿か、こいつは、とちょっと思ったけれど、バイトなのかも知れないと考えなおして、電話で引き続き会話をした。僕が「いや、Appleが用意しているフォームに記入したんだけれど、駄目なんですよ」ということを言うと、「どういうデータでしょうか」というので、国と、銀行名と、ZENGINコード(Appleのサイトにはこう書いてある)と、口座番号、口座の種類、口座の名義と、円建てということを書いたというと、「ZENGINコードというのは中国のコードじゃないでしょうか」とか言っている。いや、それが中国のコードなのか、日本のコードなのかは僕は知らないけれど、結果としてそのZENGINコードは銀行名、支店名、支店の住所を入力すると自動的に「0009245」という数字に置き換わるんですよ。これはSWIFTコードとは違うかも知れないけれど、誰が見たって銀行名と支店名を特定しているんだから、これで十分じゃないの?と思うのだけれど、三井住友は「SWIFTコードじゃないからだと思う。Appleに聞いてみてくれ」の一点張り。結局こちらに届いたメールを受け取ることもせず、何度もたらい回しにされ、「どうにもなりません」とのことで電話を切った。

うーーーーむ(本当は「馬鹿か、こいつらは」と書きたいところ)。

Appleは世界中の企業にAppStoreという場を提供していて、そこを通じてチャンスを掴もうと努力している小さい会社がたくさんある。もちろん、日本の会社だってたくさんエントリーしている。その中には三井住友をメインバンクにしている会社だって一定の割合で存在するはずだ。そして、三井住友銀行はこうやって「振り込みがきちんとできない」という苦情が来るたびに、「Appleが悪いんです」と言い放って、放置しているのだろう。確かに悪いのはAppleなんだろう。だけれど、三井住友銀行がそうやってそっぽを向いているから、いつまで経っても状況が改善されないんじゃないの?それによって不利益を被っているのはApple社じゃなくて、三井住友銀行に口座を持っている会社なんだけれど。ちょっとえらい人間がAppleに対して、「君たちのサイトの銀行口座入力フォームは間違っているみたいだから、直してくれ。うちの顧客がみんな困っているから」って一本電話すれば良いだけなんじゃないの?

仕方がないので、Appleには「なんか、ZENGINコードっていうのは駄目らしいよ。SWIFTコードっていうのが必要らしいよ」とメールした。ついでに、「振込口座は三井住友をやめて三菱東京UFJにしたから、そっちを使って」と追記したことは言うまでもない。

さて、三菱東京UFJにはちゃんと振り込まれるだろうか?もし振り込まれるなら、三井住友が馬鹿ということになるのだが。

今回の件で、三井住友銀行という銀行は責任を回避することに汲々としている銀行だということがわかった。つまり、僕からメールを受け取ったりしたら、それで対応する責任が生じると思っているのだろう。だから、そもそもメールを受け取ることすらしない。日本の産業を創りだし、育てていこうなどという気概はこれっぽっちも持ちあわせていないのだろう。ライブログを創業したとき、僕の高校の同級生が三井住友銀行丸ノ内支店で中小企業の担当をしていた縁で、振込手数料が物凄く高くても(三菱東京UFJに振り込もうとすると735円とか。これって、交渉すれば安くなるっていう噂もあるけれど)、毎月のネットバンキング使用料が高くても(2100円を毎月貢いでいる)、セキュリティが厳しすぎて面倒くさくても、自分の口座に振り込むのに時間外だと振込手数料が発生しても(これもありえなくない?お金を引き出すならともかく、預けるのに何でお金がかかるんだよ)、今までメインバンクとして使ってきたのだけれど、彼ももう丸ノ内支店にはいないし、そろそろ他のところに移す時機かも知れない。  
Posted by buu2 at 23:45Comments(10)TrackBack(0)社長

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2010年07月01日

どうぶつしょうぎアプリ、販売開始から一ヶ月で2000ダウンロード達成

先程会社のウェブサイトに「どうぶつしょうぎアプリ、2000ダウンロード達成」というお知らせを掲載しました。

どうぶつしょうぎアプリはすでに一度バージョンアップを実施し、iPadでの快適な利用を実現していますが、6月24日に次のバージョンアップを申請中で、大きな問題がなければもうまもなくVer.1.2のダウンロードが可能になります。Ver.1.2では対人対戦モードで発生していた一部のバグを修正してあります。また、7月中旬を目処に、さらにデザイン、機能の改善に向けたバージョンアップを予定しています。

ベーシックなデザイン及び機能の熟成はVer.1.3で一区切りをつけ、以後は対戦機能、効果音、演出、操作性の向上、棋譜・対戦成績保存といった付加機能の充実に重点をシフトする予定です。

引き続き、どうぶつしょうぎアプリをよろしくお願い致します。

<iTunes AppStoreへはこちらからどうぞ↓>
どうぶつしょうぎアプリ  
Posted by buu2 at 12:36Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年06月07日

経済産業省の人材育成予算の展望と、そして、事業化支援のために役所は何をしたら良いのか

僕は、経済産業省が人材育成の予算を取り始めた時の担当者だった。

経済産業省で働く前、僕は三菱総研から理研に出向していて、その出向期間が終了する時に野村総研への転職が決まっていたのだけれど、最後の最後で縁あって、野村総研をお断りして官民交流法を使って経済産業省に転職した。この法律は前籍のある会社に戻るのが前提の法律だけれど、僕の場合は片道切符。僕自身も三菱総研には戻る気がなかったし、三菱総研も僕が戻ってくるとは思っていなかった。

そういう経緯で、片道切符の期間限定で経済産業省に行ったわけだけれど、僕がやったことは、最初の一年間は全国のバイオベンチャー行脚。そして、二年目で、その経験を元にして事業化支援の一方策として、バイオ人材の育成という予算を取ってきた。当初はバイオ課だけの予算申請だったのだけれど、厚労省の独断場だった人材育成部分に切り込むということで、いつの間にか省内の部署横断的な大掛かりな申請になり、首尾よく5億円程度の予算を確保した。役人という切り口からは、これが僕の最大の成果でもある。

しかし、この予算の内容は他省庁とのバッティングがありそうな部分だ。もともと「厚労省の領域に切り込む」という色彩が濃かったのだから、厚労省、あるいは文科省とバッティングしているのは明らかである。予算の効率化がうたわれている昨今、もう仕分けされちゃったかな、と思っていたのだけれど、どうやらまだ残っているようで、担当者もいるみたいだ。

Hope is on the Way:平成23年度予算要求

僕は役所でバイオ人材の育成に関する予算の立ち上げを担当し、その後バイオベンチャーの社長をやったり、自分でベンチャーを作ったりしてきたわけで、おそらく「経済産業省の人材育成」とか、「事業化支援」という部分では、僕は日本でも有数の有識者だと思う。そして、そうした知見の少なくない部分は税金から給料をいただいて働いていた数年間に勉強させてもらったことだ。だから、それらをベースに、今の担当者にアドバイスをしておきたいと思う。

#本来は個人宛でメールしておけば良い話だけれど、もしかしたら多少は参考になる人がいるかも知れないから、ブログの記事にしておく。

さて、まずは人材育成について。僕は今、国が予算化してバイオ人材を支援することにはやや否定的である。なぜなら、そのお金は無駄金になる可能性が高いからだ。これはあくまでも可能性の問題で、役に立つ可能性はゼロではないのだけれど、そこに投入する金額と、それから期待される成果、そして成功する可能性などを考慮すると、今の日本の財務状況において経済産業省がやる必要はないのではないかと思っている。

ただ、そうは言っても、担当者はもちろん、生物化学産業課(バイオ課)の課長(今は女性だったっけ?徳増さんまではフォローしていたのだけれど、現課長になってからは挨拶もしていない。元バイオ課長で現お茶大の堅尾さんと飲んだ時にちょっと話題になった気がする)も必要だと思っているのだろう。それを頭ごなしに「やめておいた方がいい」と言っても仕方がないし、仮に僕がそう言ったとしても、今年度の予算要求が取下げられる可能性はゼロだから(笑)、可能であれば何か生産的なアドバイスをしたいと思う。

では、なぜ僕が「あんまり必要ないかな」と思うか、ということなのだが、ひとことで言えば「トレーニングして育成できるものではない」からだ。

まず、トレーニングの対象は誰なのか、ということについて整理してみる。今は世の中、人材は買い手市場だが、採用はゼロではない。武田や資生堂に就職するような奴らはちゃんと存在するし、東大や東工大の一流研究室でバリバリやっていた優秀な博士が就職に困る、といった話も聞いたことがない。本当に優秀な人間の就職は当然のことながら全然減っていない。ニーズ自体はむしろ増えているくらいだ。ちょっと前にあるシンクタンクの研究員と博士人材の就職について話をしたけれど、彼の意見も、「今の博士は結構優秀だし、優秀な博士は就職に困ることもない。良く高学歴(僕は長学歴だと思うけれど)ワーキングプアなどという話があるけれど、そんなのは理論物理と生物の博士、それから旧帝大や一部の有力大学『以外』の博士に限られた問題である」というものだった。ということで、ここで考えなくてはならないのは、もともと優秀な人材についてではない。「凄く優秀というわけではない人材(主として大学院生)」をどうやってベンチャーで働くことができる人材に育成するのか、ということになる。

じゃぁ、ベンチャーで働く人材に何が求められるのか、ということなのだけれど、第一に必要なのは精神力である。いきなり会社がつぶれてしまっても不思議はないのだ。そういう状況に追い込まれてもなんとかやっていける、いざとなれば借金をしてでも生きていく、何が起きてもヘコタレない、そういう強靭な精神力が求められる。こうした精神力が、果たして国のお金を投入することによって醸成できるのか。多分無理だろう。となると、「もともと強靭な精神力を持っている人間」を見つけ出してくるしかない。まず、これが非常に難しい。

次に必要なもの。それは、仲間がいること。どんなに強靭な精神力の持ち主でも、心が折れそうになることは必ずある。会社が拠り所とする特許の基板となっているテクノロジーが実は間違いだった、なんていうことが起きたら、「これはもう駄目だ」と思うのが普通の人間である。そんなとき、それを支えてくれるのは志を同じくする仲間、友達である。そうした存在がいなければ、どんなに精神力に優れた人物であっても、どこかでヘコタレてしまうのではないかと思う。じゃぁ、仲間を国のお金で作ることができるだろうか。長期間にわたるビジネススクールみたいなものを設定するなら、その場を通じて、同窓生的なつながりを作ることができるかも知れない。だから、そういう人脈を目的としたアクティビティならありだと思う。僕もそんな場なら参加したいと思う。ただ、そこで作られるのは人脈だけだ。そこで作られた人脈はひとつの可能性ではあるが、それがあるからといって成功が約束されるわけではないし、アップする可能性もそれほど大きくはないと思う。

この流れでもうひとつ言及するなら、ベンチャー関連の人材には社交性が求められる。この部分もお金ではどうにもならない部分だ。こと理系の人間は理系同士で集まりがちである。理系の人材の話をしていると、良く「コミュニケーション能力の欠如」という話が出てくるが、実際には彼らの多くはコミュニケーション能力が欠けているのではない。なぜなら、同じ土壌、同じフィールドの仲間とならいくらでも会話ができるからだ。問題はこの裏にある。つまりは、同じ専門、同じ立場(理系大学院生、とか)の人間としかコミュニケーションが取れないのである。Twitterなどを見ていると、折角属性に関係のないメディアを使っているのに、ふと気が付くと理系の人間とか、博士とか、そういう人間ばかりが集まって話をしている。住んでいる場所に縛られていないだけで、見ている景色は研究室の内部と何らかわりがないのに、本人たちは見ている景色が変わったつもりになっている。こういう、どこまで行っても井戸の中にいて、井戸の中にいながらにしてネットで連絡を取り合っている、という状況が問題なのだ。ベンチャーでやっていこうと思うなら、たとえ研究職であったとしても、銀行員、弁護士、会計士、マスコミ、各種営業担当者、その他もろもろの人たちとコミュニケーションをとっていく必要が出てくる。では、そういったスキルを国のお金でなんとかできますか?ということになるのだが、これまた難しい。

現担当者は色々とヒアリングをしているようなのだけれど、おそらくはこうしたヒアリングを通じても、あまり有益な知見は得られないだろう。担当者が希望するなら僕も色々と経験を教えてあげるのはやぶさかではないけれど、それを以てしてもあまり役には立たないと思う。なぜなら、過去の経験は過去の経験でしかなく、そこから汎用的な事実を取り出すという作業は非常に難しいからだ。たとえばライブログという会社で役に立つ人材を育成しようと思ったら、その方法は僕に聞くしかない。それは、アンジェスで人材育成をしている人でも、味の素で人材育成をしている人でも、理研で人材育成をしている人でも、誰がやっても駄目なのである。だから、経済産業省が「ライブログで役に立つような人材育成のプログラムを作って実施しますから、ライブログで雇ってもらえませんか?」と言われてもお断りなのである。そんなお金があるなら、その人の一年分の給料を払ってくれるとか、その人の為の事務所スペースの費用を払ってくれるとか、そっちの方がずっとありがたいのだ。ベンチャーで求められるのは歯車ではない。この点が大企業や公務員と違うところである。そういう、歯車ではなく、自律的にものを考え、判断し、自己の責任で動ける人間というのは実は社会では最も優秀な部類の人間である。ところが、日本ではそういう人種がベンチャーに来ない。おかげで、その下のレベルの人間たちを使わざるを得ないわけだが、これらの人材をトレーニングで使えるようにするのは非常に難しい。

これまでの50年くらい、大企業や役所は、「人材をいかに歯車化するか」ということに注力し、それを高効率に実施してきた。そういう組織に所属している人、あるいは所属していた人がベンチャーの人材を考えてもほとんどが的外れになる。また、個を活かしつつ、活躍することを求めるベンチャー現場では、そこで活躍できる人間は育成できても、よそで活躍できる人間は育成できない(可能性という部分ではもちろんゼロではない)。ライブログで育成できるのは、ライブログで活躍できる人間でしかないのだ。

こう書くと誤解を生じそうなので、もうちょっと補足すると、例えばライブログにおいて経験を積んだ人間は、転職してもその能力を生かすことができる可能性は少なからずある。ただ、それはライブログが偉いのではなく、その人間の資質である。1つのことから10のことを知ることができるなら、ライブログでの経験を他の会社でも活用できるはずだ。そして、そういう人間は結構存在する。ただ、その資質を国のお金で育成するのは難しい。

以上をまとめると、

1.精神力が必要だが、それは国が支援してどうにかなるものではない
2.同一カテゴリー内の人脈形成については可能性あり
3.異業種交流部分については可能性が低い
4.個の資質を育成するには、大学院以上では手遅れ

という感じになる。これが、僕が「国が支援するのは非効率的でお勧めできない」と考える理由である。

さて、現担当者はコメント欄でいくつか僕に考えを書いてくれているので、そこにも言及しておく。

それを解消できる可能性を有するのがオープンボックス事業のようなITを活用した双方向のコミュニケーションなのですが・・・浸透出来るでしょうか。


『オープンボックス事業』という言葉を僕は知らないので、正確に文意を把握できていないのだけれど、ITを利用した双方向のコミュニケーションで何かができるか、という部分について僕は否定的なポジション。加えて、そこで有効な議論ができたとしても、上に書いたような理由で、有効な支援は困難だと思う。つまり、どんなに議論したところで、正解がないことにはかわりがない、ということだ。

事業は実施期間中より終了後の方が大切だと常々思います。


これは全くその通り。実は、僕が取ってきた予算について、僕が評価し、結果的にお金がまわったのはリバネス一社である。だから、当然のことながら僕はリバネスのその後をきちんとウォッチしている。僕は今でも、社長や取締役を筆頭にしてリバネスの人たちと付き合いがあるし、一緒に仕事もしているのだけれど、それを通じて感じるのは、彼らにとって必要だったのは人材育成というプロジェクトでも、役所のお金を使う経験でもなく、単に1000万円程度のお金と、役所のお金を取ったという事実だったのではないか、ということである。会社が資金を調達する方法は大きく分けて直接金融と間接金融だけれど、企業にとって好ましいのはもちろん間接金融。直接金融は企業にとって最もコスト高の資金調達方法なのだ。ところが、バイオベンチャーではその事情が異なる。直接金融の方が格段にありがたい。なぜなら、バイオベンチャーがやろうとしていることは多くの場合、ハイリスクで、リターンがほとんど期待できないからだ。リターンが期待できないなら、資金は借金より投資の方がありがたい。返さなくて良いのだから。ところが、リバネスはそういうハイリスクハイリターンのビジネスモデルではなかった。加えて、学生によるベンチャーということで、間接金融からの資金調達にも限界があった。そんな中で、補助金が取れたということは、金銭的な部分でも、また、信用の部分でも、大きな支援になったのだと思う。

僕は、役所がベンチャーを一所懸命目利きして、そこにお金を投入したいっていうのなら、どんどんやれば良いと思う。僕たちの会社でも、非常に可能性があって、でもいまいちお金がなくてスピードアップできないでいるプロジェクトが2つも3つもある(笑)。そういうところにお金をばらまくのは悪くないと思うのだけれど、折角そういうお金を用意しても、役所のお金をとるのに慣れている補助金イーターがお金を持っていっちゃうし、そもそもそういうのに応募しようと思ったら、会社の手の内をある程度さらさなくちゃならなくて、それはそれで難しい(リバネスの場合は、ビジネスモデルをさらしても、『そんなの、手間ばかりかかって美味しくないよ。やりたくないよね』と思っちゃうようなものだったから、手の内をさらしても特に問題がなかった)。「じゃぁさー、もう、目をつぶってお金だけ貸せば良いじゃん」ってことになるのだけれど、それをやると今度は日本振興銀行や新銀行東京みたいなことになっちゃう。

日本は社会全体にベンチャーを育成するという土壌がないので、どこかの組織が単独で支援しようと思っても凄く難しい。本来は、社会全体でトータルに支援すべきなのだが、日本はその状況からは程遠い。例えば同じ商品がベンチャーと大企業から発売されているなら、ベンチャーの商品を買うべきなのだけれど、日本人は大企業の看板を信用する。根本的なところで保守的なのである。最近僕が思うのは、経産省で楽天みたいなショッピングモールを作ってくれたらどうかな、ということなのだけれど、それはそれで民業圧迫になりそうだ。何をやろうとしても難しいわけで、「じゃぁ、もう面倒だから、何もやらなくて良いんじゃない?」という結論に行き着いてしまう。

と、そんなこんなを考えていくと、「バイオの人材育成って、国がやるようなことでもないし、やろうと思っても、何もできないんじゃないかなぁ」と思ってしまうのである。それでも何かあるのか・・・・・うーーーん、ゴメンナサイ。結局生産的なアイデアは出てこないのです。事業化支援策の一つとしての人材育成というのは、やはりちょっと間接的すぎるのだ。

こうやって書いてきて、「じゃぁ、事業化支援について国が関与するところは何もないの?」ということになるのだけれど、実はそんなことはない。上に書いてきたことの中に大きなヒントがある。そして、それこそが、経済産業省でバイオの事業化支援を担当し、その後、ベンチャーの社長をいくつかやってきた立場から言えることでもある。支援はやれば良い。ただ、それは人材育成ではない。あくまでも事業化支援として、である。やり方そのものは簡単。お得意のばらまきをやれば良い。

ポイントは、ばらまき先の選び方だ。

まず、支援先を選ぶとき、それは役人が自分たちの責任で実施するということ。外部の人間には一切頼っちゃ駄目。僕は役人を信用している。でも、役所に頼まれて目利きする人材を信用しない。その人材が適切な判断ができるとも思えないし、なにより、そこから情報が漏れることを心配するのが嫌だ。だから、役所は、役所の内部で目利き人材を確保し、そして、審査は内部で自己完結すべきなのだ。そして、その選考の内容については、後日きちんとオープンにすれば良い。ただし、1年や2年では駄目だ。最低でも5年後ぐらい。「5年後には全てオープンにします」ということなら、うちの会社でも応募したい案件はいくつもある。

それから、支援先はタックスイーターであっては駄目ということ。一部上場の会社や、その関連会社(社内ベンチャーを含む)はもちろん駄目。大学や公的研究機関のスピンアウトベンチャーも駄目。とにかく、税金を少しでも使っているところには支援すべきではない。

この二つさえ守れば、バイオに限らず有効なベンチャー支援ができるはずだ。ただ、中小企業庁の担当者にここまでの専門性を求めるのは酷だろう。だから、製造産業局の原課がやれば良い。バイオ課にベンチャー支援担当者が異動してきたら、最初の一年間はヒアリングをしまくって勉強する。その上で、次の一年間で、自分の責任において支援する会社を選ぶ。そう考えると、常に担当者は二人必要ということになるけれど、年間5億とかの無駄金をばらまき続けるくらいなら、人を一人増やすぐらいは何でもない話だと思うし、官僚の能力を考えれば決して無理な話でもないはずだ。応募書類、選考の基準、判断理由などは5年間保存した上で全てオープンにし、その上で公正に評価する。上手にばらまいていれば評価が上がるし、駄目だったら評価が下がる。もちろん不正などがなかったかのチェックも必要だろう。1年で勉強兼主担当の補佐、次の1年は主担当、5年後に評価。評価は第三者が実施、みたいな7、8年のパッケージで考えることになる。ちょっと考えるとものすごい大ごとだけれど、「予算取ってきました。シンクタンクさん事務局やってください、産総研とか大学の有識者さん、委員会の委員やってください、あ、選びましたね、じゃぁ、そこにばらまきましょう、一年後にシンクタンクさん、ちょっと成果についてレポートまとめてください、以上」みたいなやり方の方がおかしい。もっと、プロ意識を持ってやるべきはずの話なのだ。

本当なら、専門職として長期間担当する人間を確保するのが一番良い。こういう職には異動は相応しくない。でも、今の公務員制度の中でそういうことが難しいなら仕方がない。

「本当に必要な支援を、本当に必要なところに実施する」ということは、非常に難しいことである。でも、その方法はないわけではない。ただ、これまでやってきていないだけのことである。役所はすぐに専門家を委員として招聘し、委員会で話をまとめたがる。しかし、これでは駄目だ。役人自体が専門家になって、自分の責任でお金をばらまかなくてはならないということだ。そこまでの覚悟をもって実施するなら、間違いなく産業を作っていくことができると思っている。そういう覚悟を持った役人が霞が関に残っていて、そしてそれを支援してくれるような局長、課長レベルの人がいたら良いのだけれど。  
Posted by buu2 at 23:36Comments(4)TrackBack(0)バイオ

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2010年04月30日

変異型情報病時代におけるマーケティングの典型的成功例

今日、日本の株価は連休前の全面高だが、僕がメインで運用している銘柄はあんまり芳しくなくて世の中から取り残された感じ。そして、そういう「取り残され」を嫌うのが今の若者気質という分析が三浦さんの書いた「情報病」。

この本では残念ながらTwitterについて触れられていないのだけれど、情報病の若者たちとTwitterの相性が良いのは自明で、それがそろそろ顕在化しつつある。

Twitterの中には強烈なフラッグマンがたくさんいる。それは例えばTwitter自体や、それのメイン・プラットフォームであるiPhoneとか、その他色々なもので見受けられるけれど、ここでいうフラッグマンとは、それにぞっこんになって、自分が使うだけじゃなくて是非みんなに使って欲しくて、同じようにそれを愛してくれて、それが駄目って言われると自分の全価値観が否定されていると考える人達。「これがだめだよね」っていうと、「いやいや、それは」とメーカーの代わりになって打開策を考えてあげる。色々ダメ出しされて最終的に行き詰まると、「騙されたと思って使ってみて」と、感情論になったりする。こういう人たちが新しいかと言えばそんなことはなくて、普通に昔から存在していたし、それのおかげでソニーとか、アップルとかは存在している。ただ、その存在はそれほど表面化しなかった。

Twitterはこういうフラッグマンにフィットしているので、フラッグマン濃度が高いし、それに顕在化しやすい。そして、その背後には大量の情報病の若者たちが存在する。今、Twitterの中では着々と、フラッグマンと情報病患者の蜜月関係が形成されつつある。

Twitterのマーケティングの強みというのは、例えば豚組の事例で顕著である。このお店で食べた時の僕の評価については下記のリンクを参照して欲しい。

豚組

豚組しゃぶ庵

Twitter内でのマーケティングは、Twitterの中でファンを作ってしまうと、ネガティブ層を駆逐できるというのが最大の特色。一度フラッグマンを巻き込んでさえしまえば、あとはフラッグマンが勝手に頑張ってくれるし、雰囲気を作り上げていってくれる。そして、その雰囲気が、「空気を読むことが最大の重要事項」であるところの情報病患者に蔓延し、そしてネガティブ層を駆逐する。「みんなが美味しいって言っているから、自分はそうは思わないけれど、波風立てたくないから黙っておこう」ということになるわけだ。「どうやってフラッグマンを取り込むか」が最重要テーマになるし、極論すれば、これさえ出来てしまえばTwitterマーケティングは成功したも同然。だから、店側はフラッグマンをネットでもリアルでも丁重にもてなす。こういったことはラーメン評論家が顔出しし始めた頃にやられていたことだが(新しいメニューを投入するときにその試食会に招待するとか)、似たようなことを豚組も、Twitterを使って展開している。

僕がラーメン評論家として活動していた時はこうしたフラッグマンをどうやって見つけ出すのかが媒体(雑誌、テレビ)やお店の最大のテーマだったのだが、Twitterの場合はそれが「フォロワー数」という客観的な数字で数値化されているというのも大きい。つまり、店側は誰を利用すればいいのかがすぐにわかるのである。

follower

僕はとんかつ屋の評論もやっているから、ラーメン屋ほどではないものの、そこそこの数の店を食べてきている。豚組は美味しいけれど、じゃぁ他のとんかつ有名店と比較して格段に美味しいかと言われれば、全然そんなことないし、それに対して価格は1.5倍ぐらいだから、コストパフォーマンス的には全然得じゃない。ただ、大抵のとんかつ屋はデートに使えないけれど、豚組はデートに使える雰囲気がある。僕たちはそういう雰囲気にお金を払っていた時代を知っているので、あぁ、景気は悪くても、部分的にこういうのって再現されるんだなぁ、と思うし、それはそれで良いんじゃないかな、と思う。だから、ことさら「豚組ありがたがるなんておかしくね?」と主張する気はないのだけれど、本題は、そういうお店であるところの豚組のTwitter内での扱われ方である。話を元に戻そう。

Twitterの中での豚組の評価は物凄く高い。これは間違いなくTwitterを利用したマーケティングの成功例である。

上にも書いたように、豚組は上手にTwitter内部のフラッグマンを取り込んだ。そして、フラッグマンたちはそれに気がついているのか、いないのか、その役割を的確に果たしている。だから、Twitterの内部は豚組マンセーの情報一色である。こうなってしまうと、その背後にいる情報病患者達は抵抗不能だ。豚組のお店自体、非常に雰囲気の良い店だけれど、Twitterの内部にも豚組マンセーの雰囲気を醸成したわけで、これはこのお店のオーナーの才覚なんだと思う。

ラーメン界では、以前、ラーメンオタクに対して「お前らはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ」というセリフが強烈なパンチとして放たれたことがあるが、これはラーメンオタクだけじゃなくて、レビューサイトを参考にしている全ての人達に言える言葉だった。対象もラーメン、食べ物だけではなく、映画でも、本でも、レビュー全般に言えるところがあるのだけれど、要は、「情報を食っている」のがレビューサイトユーザーである。一方で、「雰囲気を食っている」のがTwitterユーザーだ。

Twitterとは、雰囲気、空気を作るシステムだ。つまりはもともと、情報病患者と蜜月な関係にあるべきシステムなのである。それがなぜ情報病患者の若者ではなく、そのちょっと上の、ロスジェネ世代から浸透していったのかは良くわからない。もしかしたら、情報病世代に対するロスジェネ世代のアプローチツールとして利用されてきたのかも知れない。その、空気を作るシステムは、空気を読みたがる情報病患者とセットになると、バブル発生器として機能を始める。つまりは、ものを必要以上に大きく見せちゃう。豚組という「雰囲気偏重で味はまぁ高級とんかつ店の中では普通レベル」の店が、実体以上に評価されてしまうわけだ。豚組は、それと気付かれないようにして、Twitterによって実力以上の姿を見せることに成功しているのである。

例えばコンピューターソフトだと、絶対的な評価ができてしまうところがある。「これって単にPDFを読めるだけじゃん」とか、「立体表示がちょっとおかしくない?」とか、「ソフトが大きすぎてPCに負担」とか、様々な、そして、そこそこに客観的な指摘ができたりしちゃう。だから、実像以上の虚像へと拡大するには限界があるのだが、こと、味という部分については絶対的な評価が難しい。こういう客観的な反論が難しい事象に対して、フラッグマンが作り上げる「雰囲気」というのは非常に強力である。だから、主観的な評価が中心になる業態のマーケティング手法としては、運用次第でかなり使えるのかな、というのが今のところの僕の判断である。そういえば、映画でも、評価サイトではけちょんけちょんにけなされている映画が、Twitterでは高評価だったりする。

「情報病」という名著で指摘されていた「空気を読む」という部分は、Twitterの中でももちろん蔓延している。つまり、Twitter自体がすでに情報病に感染しているわけだ。情報病の188ページに、今の若者を分析して「孤独になれないというか、コミュニケーションがうまかろうが下手であろうが、抜け出せない」とした記述がある。これは、そのままTwitterユーザーにもあてはまる。ただ、Twitterの内部で進行しつつある情報病は、若者の中に存在する情報病とは少しタイプが異なる。若者の情報病は、「知らないけれど、フォロワーがたくさんいて影響力が大きい人」の情報を重視するのではなく、身の回りにいる「知っている人」の情報を重視する。その点で、今、Twitterの中に広まりつつある情報病は、年寄りに感染する変異型情報病である。この変異型情報病はマスの雰囲気を重視する。フォロワーの多い人、コミュニケーションの多い人を高く評価する。評価される人の典型例が有名人になるわけだが、それがすなわちフラッグマンである。

ネット内での口コミベースの集合知は、今、評価が非常に下がりつつある。「みんなの意見は案外正しい」ということに対して疑問が提示されつつある。それは、この理論が疑問なのではない。その前提となっている「多様性」や「独立性」が、ネット内では十分に担保されていないことによる。サクラレビューも蔓延していて、情報自体の信憑性も落ちてきている。だから、食べログも、Yahoo!映画も、以前ほどのエネルギーを持ち合わせていない。そうした中、次の「案外正しい情報」は、フラッグマンによって作り上げられる「雰囲気」なのかも知れない。

ともあれ、変異型情報病時代のマーケティングの典型的成功例として、豚組のマーケティングは記憶されるべきだろう。

なお、豚組の場合、その成功は最初から仕組まれていたわけではないようだ。豚組がフラッグマンを積極的に取り込もうとしたのではなく、たまたまフラッグマンが顧客だった。そして、それに気がついたオーナーが上手にそれを利用した。ただ、「豚組以後」は違う。その成功例を参考にしたマーケティングが始まるのだろう。それはもちろん、「どうやってフラッグマンを見つけ出し、取り込み、ハンドリングするのか」である。

#一番上手なのは、フラッグマンを創りだすことから始めること。それをやったのがTwitter。

#三浦さんの「もっと孤独になりなさい、孤独になってもっと自分を掘り下げなさい」(237ページ)というのは名言であり、情報病患者にも、変異型情報病患者にも適切なアドバイスだと思う。  

2010年04月28日

iPadでもどうぶつしょうぎ

iPhone、touch用にどうぶつしょうぎアプリを開発中ですが、せっかくなのでiPadでも使えるように、ということでiPadでも動くようにしてみました。

が、iPhone用のアプリを単に2×表示にすると、デザインが大分イケてない。iPad用の画像を用意しなくちゃ駄目みたいですね。でも、友達とどうぶつしょうぎをやるにはこれは結構良い感じ。

DSCN6458


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Posted by buu2 at 14:56Comments(0)TrackBack(0)社長

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2010年04月27日

久しぶりにTwittterでつぶやいてみたけれど

今日は事業仕分けで理研が取り上げられていた。ということで、元職員として語るべきことがあるかも知れないと思い、活動を無期限休止しているAmidalachanのアカウントで何度かつぶやいてみた。

理研の仕分の内容については、「それを理研に言っても、ちょっと可哀想じゃないの?」という部分もあり、もうちょっと攻める側も守る側もやりようがあったと思うのだけれど、このあたりが限界かな、とも思う。本来なら、政治家の仕事はもっと上の方の、「科学技術予算は30%減額に決めました。それに合わせて役所で調整してください」みたいな部分のはずなんだけれど、何故か今の日本ではボトムの部分を役人以上に素人の政治家がやっているので、どうしてもトンチンカンになっちゃう。しかし、今までは何もやってなかったのだから、まずはどんどんやってみれば良い。多分、すぐにパンクする。「こんなこと、政治家がやっている場合じゃない」って気が付くはず。それも、そんなに遠くない将来に。だから、今は政治家の皆さんが死にそうになりながら勉強しているのをちょっと遠巻きに見ておこうと思っている。

しかし、ついでに関連のつぶやきを見ていて思ったのは、研究者は「自分たちが使っているお金が税金である」ということを基本的に理解していないし、理解しようともしていないってこと。これまでは文科省が自らの組織拡大の目的で財務省からお金を取ってきてくれていたわけで、研究者にとってはお金は天から降ってくるものだったのかも知れない。だから、それが税金だってことをわかってなかったんだろうね。そして、今もほとんどの研究者がわかっていない。だから、「この位は普通でしょ」みたいなことを平気でつぶやいている。

お金を貰う方は、そのお金の原資がどこにあるかっていうことについては一般的に鈍感。でも、お金を出す方はそんなことはない。苦労して作ったお金を引きはがされているんだから、当然1円たりとも無駄になんかして欲しくない。だから、無駄遣いをされているなら、それを許すことなんてできない。

基本的に、民間以外の研究者っていうのは何も生産をしていない。ただ消費しているだけ。税金をもらって、その税金を使っているだけの存在。だから、何かの拍子に「タックスイーター」という汚名を着せられても何の不思議もない。その地位の危うさをもうちょっと理解しないとね。そして、研究を続けるためには納税者の理解が必要だってことも理解しないと。今までは文科省の方だけを向いていれば良かったけれど、これからは違う。納税者の視線をきちんと意識する必要がある。

例えばさっきも東大の先生がこんなエントリーをアップしたけれど、結構的が外れてると思うんだよね。

がくの飛耳長目録「事業仕分け 科学・技術

理化学研究所の女性職員採用に関わるつっこみは最低であった。仕分け側の見識が大きく問われたものだ。


確かに一般企業ならそうかも知れない。でもね、理研はほとんど税金で運営されているんですよ。高い透明性が要求される。それが嫌なら、国からお金をもらうな、という話なんだよ。男女共同参画と矛盾があると書いているけれど、別に矛盾なんかない。そんなに有能なら、理研以外のところでも仕事はあるだろうし、理研の中だって、他の研究室でも良いでしょ、ってこと。こういう配慮は民間企業だってきちんとやっているし、そもそも、男女共同参画という話とはレイヤーが違う。それを故意に一緒にしているのか、気がつかないで一緒にしているのかはわからないけれど(多分、後者だとは思うけれど)、このあたりが研究者クオリティなんだよなぁ、と感じちゃう。

そもそも総合科学技術会議、文部科学省にそれが出来ないから、研究開発独立行政法人をある種のシンクタンクとして使っていたのだろう。


これもなんか変な理屈。理研はもともとシンクタンクの機能なんか果たしていない。シンクタンク機能は文科省。理研はその下働きをしていただけ。実際に理研でも経産省でも勤務経験があって、さらに三菱総研でシンクタンクの実務をやってきた人間が言っているんだから、そうはハズレていないはず。総合科学技術会議に任されたのは、省庁横断的なシンクタンク機能。これを文科省や経産省では実施できないから、総合科学技術会議という組織を作った。でも、結局そこで実務をやるのはそれぞれの省庁から派遣された課長補佐レベルの人間たち。いつまで経っても機能しないのは当たり前、みたいなのが今に至る話。ということで、総合科学技術会議と文科省ができないから独法を使ったというのは全くトンチンカンな話である。また、理研や産総研にはそういうシンクタンク機能は殆ど、ない。理研は今のところあくまでも文科省の予算消化機関であり、文科省の要請にしたがって予算要求資料を作る組織である。もしそうではないなら、経産省や農水省の大型予算を理研で取ってみろ、という話である。

今日の仕分で理研が言うべきだったのは、「うちは国家的な全体戦略を練る機関ではなく、それをやってきていないし、やっていくこともない。それをやるのは文科省であり、総合科学技術会議のはず」という内容だったはず。別に断言しても、全然問題ないはずだ。

戦略がないのは総合科学者会議有識者議員らのせいであるかのように言ったのには笑ってしまったよ。


なんでだろう?実際、戦略がないのは総合科学技術会議のせいでしょう?このあたりからちょっと論旨が不明確になっているんだよな、このエントリー。

だから、私は声高に、科学技術政策をきちんとリードできる理系専門行政官(事務官ではない)を大量に増やせと言っている。


これはどうなんだろうね。役に立たない人間がいくら送り込まれても、役所も困る。それに、送り込まれた人間自身も困る。僕は経産省時代にこうやって外部から送り込まれてきた人間が壊れるのを何人も見てきたし、また、今でも理研の内部の人間と話をしていると、文科省に行って壊れちゃった人の話を聞く。外部の人間が外から見て感じているほどには、役所の仕事は楽じゃないんだよ。そこまで言うなら「まずお前が現職退職してやってみろよ」という話であって(笑)。僕はこのブログの人がどのくらい偉くて、どのくらい能力がある人なのかは全然わからないけれど、ど田舎の非常勤講師に比べたらきっと凄く偉くて凄く能力があるんだと思う。だから、まずあなたもやってみたらどうかな、と思う。僕はもうやったからね。実情を知らずに文句を言っても仕方ない。

僕は、こういうことは誰でも知っているんだろうって思っていたけれど、以前、ナショプロの企画立案方法についてブログに書いたら多方面から反響があったことがあるので、意外とそうでもないらしい。それならちゃんと勉強したら良いのに、と思う。

2−3年でコロコロ変わる、一流に器用な文系転がし官僚では持たないのである。


これは一理あるけれど、上に出された対案は役に立たないだろうね。

以前、朝日新聞の私の視点に投書したけれど、僕は短期的な対症療法としては、キャリアパスの見直しで対応すべきだと思う。そして、長期的なプランとしては、課長以上になったら役人は一律非公務員にしてしまえ、株式会社日本官僚で良いじゃないか、と思う。責任を取る、クビにもなる、身分保障はない、天下りもない、というもの。それが嫌なら、出世しないで一生課長補佐をやっていれば良い。そういう制度を作った上で、あとは民間企業である株式会社日本官僚が、民間の理論で組織を運営していけば良い。そこの会社の人材が役に立たないなら、野村総研でも、三菱総研でも、東大でも、どこでも良いから役に立つ奴を連れてくれば良いわけで。で、その人選は政治家がやれば良い。

ちょっと言い過ぎたかな〜。


言い過ぎっていうか、「この人、わかってないな」という感じかなぁ。「研究室に閉じこもって、世の中をきちんと見ていないとこうなっちゃうのかな」というか、なんかトンチンカンっぷりがちょうど良い具合だったので取り上げてみました(^^ でも、何しろ情報を発信するのは良いことだよね。何を考えているのかさっぱりわからないよりはずっとマシ。批判されたり、馬鹿がバレたりするのを恐れずに実名で情報発信をするということは尊重されるべきだと思う。  
Posted by buu2 at 01:06Comments(2)TrackBack(0)社長

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