「若い人はどう考えているのか教えて欲しい」といわれ、「もう若くないよ」と言いつつ話をしたら、結構うけたので概略をここに転載してきます。
ある国で新幹線を走らせることになりました。
今あるレールの上では新幹線を走らせることはできないので、新幹線のレールを敷くことにしました。その際、折角なので今走っている電車も走れる規格にしました。しばらくして新幹線のレールはすっかり整備できたのですが、今ある電車を廃棄するのも勿体ないし、そもそも新幹線の車両を作る会社が存在しなかったので、そのまま電車を走らせることにしました。その結果、新幹線のレールの上には電車しか走っていないという状況がうまれました。
あるとき、ベンチャー企業の若者が、新幹線の車両を作ることに成功しました。早速新幹線のレールの上にその車両を走らせました。当然、新幹線の方が速いです。のんびり走っている電車を追い越して、あっという間に電車の乗客の視界から消えていってしまいました。「お先に失礼」という言葉を残して。
怒ったのは電車の乗客たちです。
「ここのレールは確かに新幹線も走ることができる。しかし、この国では電車で走るのが習慣だ。新幹線を走らせるなんてけしからん。おまけに『お先に失礼』とはなんだ。本当に失礼だ。品がない」
お客さんだけではありません。その国の政財界の人々も色々と意見を言いました。
「この国の習慣を無視している」
「スピードが出れば何でも良いというものではない」
「スピード規制の法律が必要だ」
しかし、ベンチャー企業は全く耳を貸しません。「こっちの新幹線は速くて安いですよ。こちらをご利用ください」と宣伝を続けています。
やがて、電車会社は新幹線が走れないようにわざとのろい電車を大量に走らせたり、レールの上に石を置いたりして嫌がらせを始めました。
最初は新幹線に怒っていた乗客たちも何か違うような気がしてきましたが、両者の喧嘩は長引きそうです。怒りの声をあげるのも面倒なので、電車を使うのはやめにしてバスを使うようになりました。
なぜ新幹線のレールなんか敷いたんでしょうね?こんなことなら「我が道を行く」で、電車のままでも良かったのに。