>ほぼ騙されてたでしょうね
などという言葉がでてくるのは、そういう現場にいる人間としては「ミスリードなんじゃないの?」と思わざるを得ません。
ちなみに個別具体的には指摘しませんが、このスレッドに書かれていることには首を傾げたくなるものが多いです。皆さん悪意があって書いているのではないことは十分承知ですが。
ということで、やや目に余る展開だったので専門家として一言だけ書きましたが、以後、引き続き黙っておくことにします。
あぁ、オールアバウトに「ビジネスブログ入門」というコラムを書いてあるので、一応ご参考まで。
という記事を書き込んだのだが(僕はミクシィを実名&個人プロフィール入りでやっているので、僕がウェブ制作会社の社長であることは調べようと思えばすぐに調べられます)、その記事を読んだ数人から、「首を傾げたくなる部分と言うのはどこなのか教えて欲しい」といったメッセージが寄せられた。最初の一通をもらったときは私信で返そうと思ったのだけれど、同じようなメッセージが複数来たので、仕方ないなぁ、と思いつつ、乗りかかった舟でもあるので、記事を書いてみた。
-------------以下、全文-------------
すいません、複数の方から「ちゃんと教えて欲しい」というメッセージをもらったので、個別対応しようと思っていましたがここに書きます。
#本当はこういうアドバイスは無料ですべきじゃないんだけど(笑)。
1.過大な期待をしていないか
そもそも論として、清掃代行業のウェブサイトが必要か、ということになります。特に問題なのは「集客のために」ウェブサイトを構築しようとしているという点です。ウェブサイトで集客するというのは、やるのは簡単でも実績を上げるのはとても難しいことです。すでにラジオなどで広告をバンバン行っている会社がたっぷりお金をかけてサイト運用をしている中で、新規参入業者が多少SEOなどをやってもたかが知れています。
ちなみに当社ではすでに「パワーヘルパー」(http://www.katazuke99.jp/)という清掃業者のウェブ構築の一部、およびウェブ運営コンサルを実施していますが、ウェブ単独でやっていっているわけではなく、色々なメディアとのミックスによって実績をあげています。
ウェブサイトとは、よっぽどお金をかけない限りはあくまでも営業活動のサポート的位置づけに過ぎず、そこからの集客に大きな期待を寄せるようなやり方ではすぐに行き詰ると思います。個人的な意見ですが。
2.SEO対策が意味があるのか
まず、SEO対策の意味がある業界は非常に限られているということを知っておく必要があります。一部の士業など、「どこに頼んでもクオリティに大きな差が生じるわけではない」(実際は大きな差があるのですが、差が生じるのは高度な知識が必要とされる案件のみで、そういう案件は決して多くない)というものがSEOの効果がある代表例で、逆に同業他社が少ないとか、狭い地域に密着しての業態などならSEO対策はあまり意味がなくなります。
また、SEOには大きく2種類のタイプがあり、即効性があるけれども長期にわたって継続的にお金を支払わなくてはならないものと、長期にわたって努力しなくてはならないけれども、一度評価が高くなればあとはお金を使わなくても済むものがあります。このあたりについては下記の記事などが参考になります。
http://www.sem-r.com/19/20060326000037.html
いわゆるSEOというと、大抵の場合は前者になりますが、正直なところお勧めはしません。また、では後者が良いのかというと今回の案件ではそれも正直微妙なところです。清掃代行業者はすでに大きなところが複数あり、新規参入でこれらの業者をSEO面で追い抜くのは、後者の手法ではかなりのコストになりそうです。
はやり言葉なので誰もが使うSEOという言葉ですが、誰にも必要なものではありません。逆に必要ではないケースの方が多いくらいです。
3.デザインの素晴らしいウェブサイトが必要か
そもそも集客が無理、というスタンスに立つのであれば、連絡先などがわかっていれば十分、あとは時々セール情報や求人情報などを発信する、といったものになります。その程度のウェブサイトであればブログなどでちょこっと作ってしまえば事足ります。ただし、ビジネス利用の場合はライブドアやココログといったサービスを利用することはお勧めしません。独自ドメイン確保、レンタルサーバ、ブログソフトなどを用意して、最低限のものを構築する必要があると思います。この場合、初期コスト25万円、ランニングコスト1万円/月くらいが最低ラインではないかと思います。
4.「お金をかけたくない」と言ったらモチベーションががた落ちになるのか
全くそんなことはありません。ただし、お金をかけなければそれに見合ったサイトしかできないだけのことです。サイトにお金をかけた場合、何が変わるのかといえばそれはデザインです。
5.駄目なサイトができあがったのは業者の責任か
ケースバイケース。駄目と言うのが何が駄目だったのかわからなければコメントしようがありません。
6.制作料金がそれなりに高いところは信用できるのか
全く根拠がありません。アフターケアなどは事前に確認しておけば済むだけの話です。判断基準として料金の安い高いを検討材料にすることは非常に重要ですが、それが信用とリンクするのかといえば全くそんなことはなく、ナンセンスです。この業界は個人でやっている方が多く、我々もクラウドソーシングという形でそういう方々と一緒に仕事をすることがあります。
7.じゃぁ、どうしたらいいのか
まず、ウェブサイトの役割をきちんと明確にすべきです。その目的が決まれば、サイトの仕様も決まってきます。その際には、実際の業務のターゲットがどこにあるのか、清掃代行業であればどこまでを対象とするのかを考える必要があります。また、同時に法的な部分の整合性もきちんと考える必要があります。許認可に関わる部分が少なくない業界ですから、そのあたりはきちんと調査しておかなくてはなりません。
また、価格については相見積もりを取れば良いだけです。事前に一つの会社に決め打ちするよりも、いくつかの候補会社を決めて、そこに対してそれぞれ仕様を出し、見積もりを取り、価格が安いところを選択すれば良いのです。なお、「仕様書すら作れない」という場合はまずそこについてコンサルを受けるべきでしょう。仕様が決まらなければ見積もりのしようがありません。ちなみに僕はその種のコンサルは無料では請けませんが、どこかには無料でやってくれる人がいるかもしれません。
-------------以上、全文-------------
書いてあることがやや唐突だったりするのだけれど(例えば4や5や6の項目とか)、これはその前に「?」と思ってしまうアドバイスが書き込まれていたから書いたもの。「お金をかけたくないなんて言ったらモチベーションがた落ちですよ」とか(いくらかける気があるのかをちゃんと聞いておくのが一番最初だし、その中でベストのアウトプットを出すのがプロ)、「知識がない状態で安い会社に発注したらひどいものができてきた」とか(詳細がわからなければコメント不能。きちんと調べれば発注者が悪かったのかも知れない。というか仕様段階で要求されていなかったに過ぎない可能性も高い。それなら悪いのは業者だけではない。まぁ、うちの会社ならそのあたりはきちんと説明するけれど、それをしないのが悪い業者とは言い切れない)、「制作料金が高いところは信用できる」とか(なんだ、そりゃ(笑)こんなスタンスこそ悪徳業者の良いカモじゃないか。どうしてこういう意味不明、根拠薄弱なアドバイスをする気になるのかと小一時間問い詰めたい)、そういう書き込みがあったからそれに呼応して書いた。
そうしたら、その直後に「末端のWEB制作会社なんて仕様書ベースに見積もりなんか出しませんよ」とかいう書き込みがあったので、馬鹿らしくなって全文削除した。うちも末端のWEB制作会社だけど、仕様書というのは非常に重要だと考えている。だって、作業するときに、作ったものが相手の希望を満たしているかどうかをチェックする唯一の拠り所が仕様書だから。
僕は三菱総研にいたとき、一番最初に叩き込まれたのが仕様書をクライアントとともにきちんと詰めること。そして、同時に作業をやるにあたってはその仕様書を最低限クリアすることを叩き込まれた。シンクタンクという業態は、アウトプットに正解がない。例えば「アクアラインの適正利用料金はいくらなのか」という問いを出されたとき、それに対する回答はいくらでも考えられる。走行距離から考えればいくらなのか、海外の事例から考えればいくらなのか、建設費用を20年で回収するためにはいくらなのか、アプローチはいくらでもある。そういったときに、仕様書で「国内先進事例、海外先進事例(最低3カ国)、および建設費用回収の視点から検討する」と書いておけば、調査は最低限それだけをやっておけば良いことになる。
ウェブ制作だって同じである。特にデザイン面はお金をかければいくらでも良いものになるけれど、じゃぁそのデザインが客観的に見て本当に良いのか、あるいは価格相応なのか、と言うことに対しては誰も答えることができない。だから、仕様書で「機能は○○を満たします。デザインは××の実績がある△△さんに依頼し、合計5回程度の打ち合わせの後に最終的なものとします」などと規定していくことになる。
ただ、大きな問題がひとつ。それはこの仕様書が誰にでも作れるものではない、ということ。アイミツを取るためには共通の仕様書をそれぞれの業者に提示する必要があるわけだけど、それを誰がどうやってつくるのか、ということになる。もちろん僕は仕様書を作ることができるけれど、それをただでやるのは嫌。だって、僕はそういうノウハウを提供することによって稼いでいるんだから。そのことは書き込みの末尾にも書いてある。
#ちなみにウェブ制作というとページ数、リンク数などから積算していくやり方も良くあるけれど、うちの会社はこういうやり方はしていない。会社のウェブサイトとして必要な機能単位で考えていく。だって、例えばリンクを作るのなんて全然手間じゃないし、ページを増やすのだって手間じゃないもの。
他の会社、他の人がどうやっているかは知らないけれど、「デザイン、機能、一式で200万円です」みたいな受注の仕方は、少なくともうちの会社ではやっていない。オールアバウトに掲載している価格表だって、かなりざっくりしたものだけれどもきちんとパーツごとに価格を掲載しているし、実際はこれをベースに個別打ち合わせをして価格を提示している。
http://profile.allabout.co.jp/pf/motoki/service
「「うちも含め、末端のWEB制作会社は仕様書をベースに見積もりなんか出しませんよ」って、そりゃあなたのところはそうかもしれないけれど、そうじゃないところはいくらでもあるんじゃないですか?レベルの低いところをベースにしてもらっては困りますよ。どの程度の見識があって業界を見た気になっているのかわかりませんし、百歩譲ってそれが業界のスタンダードだったとしても、少なくともうちの会社はそんなことはやっていませんので」と本来は書きたいところだったけれど、そこは僕が設置したコミュニティでもなければ掲示板でもないので、さっさと記事を削除した。やはり最初から放置しておくべきだったようだ。
悪気がないのは百も承知だが、善意の書き込みだからこそ始末に終えないというケースは山ほどある。そして、ミクシィというところは、ときどきそういう善意のもとに本当にレベルが低いやり取りが展開されるので侮れない。