2004年07月25日

わざわざトラックバックされたので

電脳プリオン:投票率age厨

というブログからわざわざトラックバックされたので、応えておこうと思う。まず、このブログの作者の自己紹介が全く書かれていないので、この人物がどういう人なのかさっぱりわからない。だから、反論し難いところも多々ある。ま、いっか。ちなみにこのエントリーは僕にだけ書かれているものではないだろうから、僕に該当しない点もいくつか存在する。

以下、引用は斜体。
投票した人は自分の一票の価値が重くなったわけだから、棄権者に感謝すべきであり、批判をするのは恩をあだで返すことになる。

これは個人主義で考えればそのとおり。しかし、自分の一票の価値の向上が目的ではない(少なくとも僕は)。

投票率が低いと組織票が多い候補が有利になるというが、棄権者が組織票が多い候補に投票していたら、もっと有利になっていたわけです。

仮定の話をしても意味がない。棄権者が組織票が少ない候補に投票していたら、組織票が多い候補は不利になる。どちらになるかはわからないのだから議論しても無駄。こういう議論を展開するなら、まず棄権者が「どこに投票するつもりだったのか」を調査する必要がある(そんなことできないけど)。

組織票を批判する投票率を上げようとする人は

以下のセンテンスについては僕自身が「組織票を批判する」というスタンスではないのでノーコメント。

要するにこれは「自分の支持する候補(組織票の少ない候補)に投票しない人(棄権者・組織候補に投票する人)には言論の自由は認めない」とか「野党に投票しなかった人は政府を批判するな」ということになるのではないか。

全然違う。
国政に直接意思表示する機会は選挙しかない、そして、選挙での投票を放棄するということは、その時点で政府を批判できないということ。また、選挙での投票を放棄した人間が国政について発言するのは勝手だけど、それにお付き合いする気はさらさらないというのが個人的な考え。

言論の自由は投票権を行使することの対価ではないし

飲み屋で何を言おうと、また、ブログで何を書こうと勝手。その自由を否定するわけではない。ただし、そういう発言はほとんど何のインパクトも生じない、ということ。

野党に投票しなかった人だって、政府を批判したい部分もあるだろう。

意味のない批判なら勝手にやれば良いだけの話。ちなみに僕は「国会での決定に文句を言う資格はない」と言っているだけで、「権利はない」とは言っていない。「資格」とは、それを実施するために必要とされる条件や能力のこと。

結局、「与党が勝つから、低投票率はけしからん」というのは、野党が勝てなかったから、棄権者に八つ当たりしているだけだ。

僕はこんなことは言ってないので無関係。僕は与党が勝とうが野党が勝とうがどっちでも構わない。きちんと国民の民意を反映した結果がでているのであれば。

自分が好きな政党の得票が少なく、嫌いな政党が議席を伸ばしても、高投票率ならそのほうがいいと思い込んでいる人は、ナチスが高投票率で政権をとっていたことをどう思うのだろうか?

ナチスの事例は「当時のドイツ国民のレベルが低かったから」と推測される。低かった原因は色々あるだろうが、国家による情報操作が最大のものか。仮にそうだとすれば、現在の高度情報化社会においては同一線上で論じることはあまり意味がない(もちろん、現在も恣意的な情報操作は行われているが)。ただし、僕はドイツの過去の歴史については勉強不足なところがあるので、これ以上はコメントを控える(必要であればまた勉強してからコメントする)。
また、高投票率であってもナチスのような政治をしていない事例は山ほどある(現在で言えばオーストラリア、ドイツ、デンマーク・・・)。一つのネガティブ事例を取り上げて、それを一般化して論じるのは乱暴。
ちなみに個人的には、投票率が高いにも関わらず理解不能な政治が行われていると感じてしまう国があるのだが、親切に塩を送ってやる必要もないので黙っておこう(^^

投票率の高さと政治の質には特に関係はないと思う。

バックデータのない感想、主観に意味なし。どういった国の政治の質を高いと考えるのか、その理由、そしてその国の投票率を提示して初めて議論ができる。

投票を義務化したりして、政治に無関心な人がたくさん投票に行って、投票率が上がるよりは、政治に関心がある人が真剣に選んでいるなら、投票率が低くてもその方がいいはず。
投票の量より質のほうが大事だと思います。


ま、ここが僕との一番意見の食い違っているところでしょうね。僕の考えは、投票の量も質も同様に重要、というもの。政治に無関心な人を減らし、同時に投票率を上げる必要がある。このブログを書いている人は「国民のレベルなんて上がらない」という前提なのかな。

以下余談。
政治家は何をやるのかって、次の選挙で当選するためのことをやるんです。
では、次の選挙で当選するためにはどうしたら良いか。選挙で投票する人間の「利」になることをやるんです。投票してくれない人のためになることなんてやっても意味がない。若年層と老齢層で投票率に有意な差があって、老齢層の投票率が高いとすれば、当然老齢層を優遇する政治を行う。
「ははぁ、若い奴らは投票率が低いな。では、こいつらのための政策のプライオリティは低いな」
と考えられてしまうわけだ。これの顕著な事例が件の年金政策。
で、この政治家の行動原理には投票率の他に、「一票の重み」も影響を与える。都市部に比較して地方の一票の重みが5倍あるなら、そりゃ地方優遇の政策を打ちますよね。
ここら辺、当たり前の話だけど、意外と認識されていないような気がする。

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
おひさ。浦です。なかなか笑いました。

最近のブウ氏はすっかり毒が消えてただの「良い人」になってしまった印象がありましたが、昔どおり、切れるところは切れますね。相手の不備を的確に指摘し、逃げ道を完全封鎖する手法はさすがシンクタンクで鍛えた論客という感じ。

本件はそもそもの議論のスタートでブウ氏が正論の立場にいるので、最初から勝負が見えています。次は逆の立場での議論が見たいですね。中央官僚も卒業したことだし、政治の世界に行くというのはどうでしょう?

元ネタを見て、そういえば日本は夏休みになったんだなあと思った次第w
Posted by ura at 2004年07月25日 08:33
すげぇ久しぶりですね。
今どこ(国)にいるんですか???すっかり2ちゃんに毒されてるみたいですね。

ちなみに僕は前から毒なんてないですよ(^^;あと、大学院のときに年金滞納しているんで(M2の時に法律改正があったようです)政治家は無理っす(^^;
Posted by buu* at 2004年07月25日 22:44
トラックバックありがとうございます。

気になった点を反論しておきます。

>棄権者が組織票が少ない候補に投票していたら、組織票が多い候補は不利になる。どちらになるかはわからないのだから議論しても無駄。

棄権者が組織票のおおい候補に投票していたかもしれないと指摘したのは、「組織票の多い候補が勝つから、低投票率はよくない」という人に対してのものです。
棄権者が組織票の候補に投票するかどうかを書いたわけではないです。

>ちなみに僕は「国会での決定に文句を言う資格はない」と言っているだけで、「権利はない」とは言っていない。「資格」とは、それを実施するために必要とされる条件や能力のこと。

しかし、ブログでもネット掲示板でも新聞の投書でも街頭インタビューでも発言者が投票しているかどうか確認しているわけではないので、
文句を言う資格がないと決め付けたところで、
それらの意見を聞かないですむわけでも影響力をなくせるわけでもないから、
「そういう発言はほとんど何のインパクトも生じない」と思います。

>一つのネガティブ事例を取り上げて、それを一般化して論じるのは乱暴。

高投票率になればナチスみたいなのが政権をとると一般化しているわけではなく、
高投票率ならば、いい政治になるとは限らないことの具体例として示したわけです。

>どういった国の政治の質を高いと考えるのか、その理由、そしてその国の投票率を提示して初めて議論ができる。

どういう政治が質が高いといえるのかは人それぞれだし、もしそれが一致するなら、選挙をする必要はないわけですが、
ナチスは大多数の人が悪い政治だとみなしていると考えられるので、質が低い政治だといえると思い、
高投票率でも質の低い政治が行われたりするという具体例として書きました。
投票する人が真剣に選んでいるなら、投票率の高低は問題ではないと思います。

>若年層と老齢層で投票率に有意な差があって、老齢層の投票率が高いとすれば、当然老齢層を優遇する政治を行う。

若者の投票率が低いことで、自分たちの一票の重みが増しているわけだから、高齢者は若者に感謝したほうがいいと思いますね。
Posted by 電脳プリオン at 2004年07月28日 06:29
コメント欄で書くと長くなってしまって見難いけどご容赦願います。さて、

>棄権者が組織票のおおい候補に投票していたかもしれないと
>指摘したのは、「組織票の多い候補が勝つから、低投票率は
>よくない」という人に対してのものです。

なるほど。「低投票率=組織票有利」と書くのがダメ、ということですね。このブログで提示されているデータだけでは確かにそのとおりです。ただ、過去のデータを検証した場合にはどうなるかわかりません。一般論としては公明党と共産党が組織票を多く持つ政党とされていますが、恐らくこの2政党の得票率と投票率の連関はデータとしてあるはずです。問題は公明党や共産党が組織票を多く持っているという根拠の提示が難しいこと。ただ、投票率の高低に連関して公明党・共産党の得票率が上下している現象を見て、両党を組織票政党と定義した可能性もあります。どちらにしても言葉の定義があいまいなので、議論が困難です。具体的に「投票率が低いと公明党、共産党が有利だ」ぐらいに書かれていれば議論可能だと思います。

>それらの意見を聞かないですむわけでも影響力をなくせるわけ
>でもないから、

意見は聞かなければ良いし、影響力も限りなく低くできますよ。国会では、与党が「選挙で勝ったんだから我々の意見が正しい。反対意見は無視すれば良い」でおしまいです。後になって何を言っても無駄、ということです。国会は選挙結果が全てですから。

>高投票率になればナチスみたいなのが政権をとると一般化して
>いるわけではなく、高投票率ならば、いい政治になるとは限ら
>ないことの具体例として示したわけです。

ですから、それは単なるレアケースであると書きました。そうじゃない事例も沢山ある。高投票率の事例を列挙し、それらが行った政治を評価した上で、投票率と政治の内容の相関をきちんと提示しなくては分析としての体をなしません。具体例をひとつ示せたからといって、論旨が正しいことを示せるわけではありません。

>投票する人が真剣に選んでいるなら、投票率の高低は問題では
>ないと思います。

日本国憲法第一条の冒頭に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」と記述されていることをご存知ですか?

>若者の投票率が低いことで、自分たちの一票の重みが増している
>わけだから、高齢者は若者に感謝したほうがいいと思いますね。

高齢者の方々で、自分の一票の重みが増した方が良いと考えている人は、感謝しているでしょうね。
Posted by buu* at 2004年07月28日 12:32
>「低投票率=組織票有利」と書くのがダメ、ということですね。このブログで提示されているデータだけでは確かにそのとおりです。ただ、過去のデータを検証した場合にはどうなるかわかりません。

低投票率が組織票の多いと言われる政党にとって有利かどうかを問題にしているわけではなくて、
「組織票の多い政党にとって有利なこと」あるいは、「組織票」そのものがあたかも悪いことであるかのような意見を疑問に思っているわけです。
「組織票」と言う言葉自体が自分の嫌いな政党の得票にレッテルを貼っているだけとしか思えませんし。
たとえば、棄権者の9割が組織票の少ない政党に投票するつもりで、
残りの一割が組織票の多い政党に投票するつもりだった場合、
「低投票率だと組織票の多い政党(与党や共産党?)が勝つから、棄権者はけしからん。投票しろ」と言う人は
後者の一割の人は棄権してよかったと思ってるはずで、組織票の多い政党が勝つこと自体が投票率の高低にかかわらず、悪いことだとみなしているわけです。
要するに、組織票の少ない政党(民主党?)に投票しなかった棄権者はけしからんと言っているようなもので、
政権取れなかったから、棄権者に八つ当たりしているんだなとしか思えないわけです。

>意見は聞かなければ良いし、影響力も限りなく低くできますよ。

だから、意見を言っている人が棄権者かどうかわからないから、意見を聞かないのは無理なのでは?

>国会では、与党が「選挙で勝ったんだから我々の意見が正しい。反対意見は無視すれば良い」でおしまいです。後になって何を言っても無駄、ということです。国会は選挙結果が全てですから。

次の選挙があるわけだから、一切民意を無視するのは無理だし、ある程度世論の動向を見て決めていると思います。
世論調査の結果に影響されたり、政治家や役所が選挙に行かなかった人の陳情を聞く場合もありますし、
選挙だけが政治に影響を与える唯一の方法でもないはずです。
毎回選挙に行かない人は、選挙に行くほどの強い不満を持っていないということだと思います。
棄権者は「与党が勝とうが野党が勝とうがどっちでも構わない」と思っているからこそ、投票しないのであり、
そういう人に対して、「与党の意見ばかり通るから、組織票の多いほうが勝つから、投票しろ」といっても全然説得力がないのではないかと思います。
もし、組織票の多い与党の意見が通るのがいやなら、野党に投票するはずですから。

>ですから、それは単なるレアケースであると書きました。そうじゃない事例も沢山ある。

ナチスほどひどくはなくても、投票率が低くても高くても質が低い政治が行われる場合もあるわけです。
前にも書きましたがどういう政治が質が高いかは人それぞれなわけで、
低投票率の国でも高投票率の国でも、選挙に負けた政党の支持者にとっては質の低い政治が行われるということです。
私にとって質の高い政治かどうかはあなたの言うとおり調べてみなければわかりませんが。

>日本国憲法第一条の冒頭に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」と記述されていることをご存知ですか?

中学校で習った覚えがあります。
Posted by 電脳プリオン at 2004年07月29日 23:50
>「組織票の多い政党にとって有利なこと」あるいは、
>「組織票」そのものがあたかも悪いことであるかの
>ような意見を疑問に思っているわけです。

なるほど。僕は別にそういう意見を言ってないので無関係でしたね。

>だから、意見を言っている人が棄権者かどうかわか
>らないから、意見を聞かないのは無理なのでは?

「あなたに投票したんです」と言えば、その政治家には聞いてもらえるかもしれませんね。基本的には無駄ですが。

>次の選挙があるわけだから、一切民意を無視するのは無理だし

それは前の選挙で主たる争点になっていない場合です。主たる争点となって、民意が明らかになった場合は、以後の選挙では争点になりません。

>毎回選挙に行かない人は、選挙に行くほどの強い不満
>を持っていないということだと思います。

ここは僕は全く違う認識を持っています。投票に行かない人は、投票に行かない事がどういうことなのかを認識していないんだと思っています。「投票の意味」ですね。

>低投票率の国でも高投票率の国でも、選挙に負けた政
>党の支持者にとっては質の低い政治が行われるという
>ことです。

低投票率の国家というのは、日本が憲法で明記し目指しているところの民主主義ではないというのが僕の考えです。


>中学校で習った覚えがあります。

習った覚えがあるのと、理解しているのは全く違います。「微積分は習いましたがもうわかりません」と、「微積分ができます」とは全く違うということですね。この第一条をきちんと理解していれば、低投票率でも構わないという結論は導き出されないと思います。選挙で投票しない人は、憲法を理解していないというのが僕の考えです。
Posted by buu* at 2004年07月30日 00:42