
野田地図第11回公演「贋作・罪と罰」を観てきた。
一番観たかったのは段田氏。まぁ、彼のお嫁さんが知り合いということもあるし、やっぱ遊眠社のOBだし、野球のグラウンドでは観ていても(でも、野球チームは解散しちゃった。某所で一緒になったトリビアの高橋克実さんがすごく残念がっていた)舞台の上ではしばらくご無沙汰だったってこともある。ただ、演目は罪罰。これ、主人公の女性以外は全員脇役というかなり特徴的な舞台。ということで、まぁあんまり活躍しないんだろうなぁ、などと思いながら劇場へ。今回は珍しく前から3列目という良い席を取れたので、舞台自体には結構期待していた。
以下、超ネタバレ感想。
さて、舞台。内容はドストエフスキーの「罪と罰」を下敷きにしつつ、時代を幕末に設定したもの。松たか子演じる主人公の英の殺人者の心の葛藤とそれをとりまく人々の姿を描いている。野田秀樹の演劇としては異例とも言えるわかりやすさ。時間も空間も大きく移動することがなく、淡々と話が進んでいく。今回のポイントとなる小道具は昔の小学校で使っていたような木の椅子、エアクッション、そして錠。
今回、注目されたのは舞台の配置。円形劇場のように360度、囲うようにして客席を配置した。その結果、役者は常に四方を意識した演技を強いられる。なんか意味不明にクルクル回ったりするので、常に「あぁ、囲まれていることを意識しているんだな」と感じさせられる。また、ときどき「これって、向こうから観たら全然わかんないよね」というシーンがあってちょっと心配になった。あと、舞台をはさんで向こう側に居る観客と目があってしまうこともしばしば。出番のない役者が舞台袖で効果音を担当したりする野田地図方式(ルーツは遊眠社の時の半神あたりかなぁ)は健在なんだけど、観客が観る場所が一定しないので、結果として音の出所もあっちにいったりこっちに来たりする。これがやや違和感アリ。まぁ、別に良いんだけど。
でね、周りを支えている古田新太や段田安則が上手なので、舞台自体はかなりしまった感じ。主要なマイナスポイントは2つ。まず古田。風邪ひいてたんじゃないかなぁ。いつもの勢いがないし、死体なのに咳をしたりしていた(^^; そして松たか子。動きは良いし、見栄えもするし、凛とした英を好演していたんだけど、残念ながら声が出ない。前から3列目という好ポジションであっても野田や古田との声の違いがはっきりしちゃっていたので、多分後ろの方で観ていた人には弱さが際立っていたんじゃないだろうか。彼女の声量だとコクーンの後ろまで声を届かせるのはちょっと厳しいんじゃないかなぁ。本当に、声以外は申し分ないのでもったいない。大竹しのぶのオートクチュールを上手に着こなしていたのに・・・・。ま、役者が噛みまくるのはご愛嬌。
ここ数回、イマイチな舞台が多かった野田地図なのだけれど、今回は無難に面白かったと思う。まぁ、原作にそれほどパワーがある作品ではないんだけれど。S席9000円は非常に高いと思うが、コストパフォーマンスは置いておいて、評価は☆2つ。コクーンでは来年1月末まで。
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