意味:
悪い状態だったものが一旦良くなって、また元の状態に戻ってしまうこと。
解説:
「元の木阿弥」は16世紀、影武者に仕立てられた奈良の木阿弥という貧乏な僧侶の故事に基づくが、「元の株価」は2005年末から2006年始めに際してのバイオベンチャー「トランスジェニック社」の株価に基づく。
トランスジェニック社は黎明期のバイオベンチャー界にあって非常に早期に株式公開を果たした会社であるが、公開半年後につけた300円弱の株価を最高値として徐々に値を下げ、2005年後半には90〜100円程度で推移していた。このお手ごろな値段に目をつけたのが当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったライブドア社である。まず同社の株式を引受け、その上で年末年始の証券市場が休止する期間を狙ってトランスジェニック社とライブドア社の業務提携に関するプレスリリースをだした(参考記事はこちら)。年始のご祝儀相場の中でこの提携を好感した投資家は手ごろな価格だったトランスジェニック社の株を買い漁り、同社株は一気に180円前後まで高騰した。
最初にこの状況に冷や水をかけたのは「ライブドア証券、トランスジェニック社株1560万株を売却」というニュースだった。提携ニュースを出して同社株価を吊り上げる裏で、すでにライブドア社は大量の同社株を売り抜けていたのである。
そして、さらに悪い事態が発生する。看板として利用したライブドア社に東京地検特捜部の強制捜査が入ったのである。その結果、トランスジェニック社の株は二日続けて暴落し、18日前場終了時で97円となった。「元の株価」に戻ったのである。