奥田英朗の馬鹿医者伊良部シリーズ最新刊。
今回の単行本は今までとちょっとカラーが違った作品が3つ。今までどおりのが1つという構成。カラーが違ったというのはそれぞれが実在の人物を簡単に想像できる設定のもの。まぁ、それぞれに面白いといえば面白いのだけれど、どうもパロディに走っているだけの印象で、風刺的ではあるけれどもユーモアはちょっと失われている印象。これが一作だけなら悪くないのだけれど、3つも続くのはいかがなものか。そのあたりのバランスが個人的には好きではない。
一方でオリジナルの表題作、町長選挙。こちらは今までどおりになかなかに読ませる。読ませるのだけれど、こちらもちょっとマイナスポイントがある。それは、途中までは非常に良いペースで進むのに、オチに近づくにしたがってパワーダウンしてしまうのだ。実はこのシリーズはどれも共通してこの傾向があって、それはスーパーエキセントリックシアターの演劇に通じるところがあると思う。最後まで馬鹿をやり続けて笑わせ続ければいいものを、途中で説教くさくなってきてしまうのだ。もともとそれを言いたいのかもしれないけれど、その割には説教の内容は表層的でつまらない。つまらない説教を聞かされるくらいなら最後まで馬鹿をやり続けてくれたほうが爽快感がある。
などなどと思うので、今回の評価は☆1つ半。まぁ面白いけれど、「買ってね」と推薦するほどでもないと思う。