最近、夜も忙しくてなかなか観にいけてなかった映画ですが、久しぶりに行って来ました。韓国映画の「グエムル」。
端的に言ってしまうと結構笑えた。
なんというのかな、少なくともハリウッドではこういう映画は絶対作れないだろうな、という感じ。冒頭、いきなり意味もなく米国人の科学者が「私はほこりをかぶった薬品は嫌いだから、一つ残らず捨ててしまいなさい」と発言するんだけど、それに対して韓国人科学者が反論すると、なぜか米国人はわけのわからない理屈で相手をねじ伏せる。「おいおい、薬品を捨てるぐらいでそんなにむきになってどうするんだよ」と突っ込みたくなるのだが、もう全編通してこのノリ。
ストーリーを俯瞰すれば、娘を怪物にさらわれた父親とその家族4人が、頼りにならない国家に代わって大活躍ならぬ怪活躍を繰り広げる、というコメディ。
まず、特筆すべきは意外性のあるストーリー展開。死んだと思っていたら生きているし(これがまたインディージョーンズとは全く違った意味で意外性がある(^^;)、当然死なないと思っていたキャラが突然死んでしまって、「をいをい、本当にここで殺しちゃうのか?」ということになったりする。この意外具合がどうにも新鮮で、ハリウッドはもちろん、邦画でも、香港映画でもこういうのはなかったと思う。
主人公を中心にしたけだるさも良い。主人公はもちろんだが、オヤジも、弟も、妹も、さらわれちゃった娘も、みんななんか知らないけどだるい。で、その雰囲気が非常に良い味を出している。登場人物全員が桃井かおりみたいな感じだ。
映画は進行するに従ってだんだん登場人物が減ってくる。国家の一大事だというのに大騒ぎしているのはほんの一画だけ。東京で言えば、多摩川に見たこともない怪物が現れてバンバン人を食い殺しているというのに、なぜか丸子橋のまわりだけ人が集まって「今日の二軍戦(もちろん読売)の先発は誰だろうねぇ」と話をしている、みたいなのんびり感がある。警察も軍隊もやたら人数が少ないし、怪獣を倒すための最終兵器は運動会のくすだまみたいだ。怪獣の登場シーンで予算を使い果たしちゃったんだろうか。いや、でもこの映画の主題は怪獣なんだから、他はさておきそこにだけ注力したその姿勢は高く評価できる。
国内の官僚や米国に対する風刺を忘れないのもおかしい。とにかくこの映画に出てくる米国人は変な奴ばかり。
ホルムアルデヒドとかを下水に流して突然変異が起きるなら、今頃世界中大変なことになっているよな、とか本来は突っ込むべきところも全く突っ込む気にならない。あぁ、そうですか、そうかもしれませんね、という感じ。
いつだったかな、こういうくだらない映画を観て喜んだことがあったよな、と思ってちょっと過去を振り返ってみると、思い出したのは「1941」だった。うん、あの馬鹿らしさが全編から漂う快作。評価は☆2つ。