2004年07月28日

そして殺人者は野に放たれる

刑法三十九条に関するノンフィクション。著者は作家・ジャーナリストの日垣隆氏。
刑法三十九条とは、

(心神喪失及び心神耗弱)
刑法第三十九条 目次 索引
心神喪失者の行為は、罰しない。
 2  心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。


というもの。

そして殺人者は野に放たれる
本書によると、日本で発生した犯罪に関する裁判において、少なくない割合で三十九条が争点となり、さらに少なくない割合で心神喪失による無罪判決、あるいは心神耗弱による刑の軽減が行われているとのこと。日本の裁判は犯罪の動機を重視し、動機とそれによって導き出された結果が不可解であると三十九条を適用しがちであること、またそれは凶悪犯罪であるほど頻度が高くなると指摘している。さらに、犯行時に心神喪失、あるいは心神耗弱であったかどうかはほとんどのケースで当人からの聴取をもとにした「推測」であること、すなわち非科学的な主観であることを指摘し、それによって刑の軽重が左右されてしまうことの理不尽さを訴えている。

本書が提起する問題点は大きく3つ。

○三十九条そのもの
○三十九条を拡大適用し続ける司法界
○三十九条の適用を受けた凶悪犯罪者を専門に処遇する施設の不在

である。

たくさんの事例を並べられ、その裁判の不条理さを目の当たりにさせられると「なるほど」と思わずにはいられない。著者は最後に「甚大な被害にあってから、初めて現行刑法の不条理を知る、というのは悲しいことです。本書が、そうならないための一助になることを祈りつつ−。」と結んでいる。

内容がやや感情的になっている部分、また雑誌連載をまとめて再構成したものなので、繰り返しや一つの事例の分割など、読み難い部分など、マイナス要因もあるのだが、それ以前に日本国民として、こういった問題の提起があったことを知っておく必要があると思う。もちろん、それに対して読者がどういう感想を持つかはそれぞれだけど。☆2つ半。

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日本の制度や風潮について、著者がおかしいと思うところをバッサバッサ斬っていく。 学校教育、携帯電話、インターネット、年金、郵政、偏差値、教育行政、少年犯罪、裁判制度など 幅広い分野に渡って、客観的な視点から主観だらけの視点まで独自の視点で語っている。 特に、
偽善系―やつらはヘンだ!【パイオニアンの1日一冊書評】at 2004年07月31日 09:20
この記事へのコメント
 はじめまして。楽天さんでHPを開設しております「のきば」です。先日
はトラックバックをありがとうございました。
 正直申しまして、ブログの機能やマナーがよく分かっていませんので、見
当違いなことを言ったりやったりしてしまうかもしれません。お許しくださ
い。(最初の書き込みに失敗したようです。すみません。再度やってみます)。
 日垣さんの著書のご紹介、ありがとうございました。タイトルだけは知っ
ておりました。骨太の文章を書く人で、これからも活躍を期待したいです。
単行本は早く文庫になってほしいものです。
 法律や裁判というもののいい加減さは以前から多少聞いておりましたが、
実はつい2、3週間前に親友が、交通事故の純粋な被害者なのに、泣き寝入
りするという出来事が起こり、法律や裁判の不条理さを身近に感じておりま
す。まさに明日は我が身です。
 もしよろしかったら、私のテーマへ推薦図書をご投稿くださればありがた
いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
 追伸 ところでどうやって『偽善系』の記事をお見つけになったのでしょ
うか。かなり以前のものですのに、何とも不思議です。
 なお、私のHPは「本館」『心の風景』になっています。よろしかったら
こちらへもどうぞ。

Posted by のきば at 2004年07月29日 07:29
こんにちは。

推薦図書の投稿はどうやったら良いんでしょうか?

ちなみに記事は、サーチエンジンで日垣隆さんの著書についてコメントしている人を探してみつけました。
Posted by buu* at 2004年07月29日 17:33
 お返事、どうも。
 あ、無事投稿されていたんですね。2度目に投稿した時も、トップページ
には私の名前が出たのに、そこをクリックしても、空っぽでしたので、また
失敗だと思って、あきらめてふてくされていたのですが、画面に出るまでに
時間がかかっただけなんですね。

 なるほど、言われてみれば、検索すれば見つかりますね。最近は「資料が
見つからない」という言い訳は通用しなくなりました。

>推薦図書の投稿はどうやったら良いんでしょうか?
 すみません、バカなことを書いたようです。「投稿」するためには日記を
書かねばならず、そのためには楽天の会員になる必要があるようです。
 しかし、方法はないわけではありません。例えば、私が時々お邪魔して、
そちらの日記に「心を高める本」のテーマに合う本がありましたら、私がそ
れをコピーして、buuさんのご推薦であることを銘記してこちらで投稿させて
頂くといった方法です。その際、貴HPのURLもご紹介します。そんなと
ころでいかがなものでしょうか。よろしかったら、ご検討くださいませ。そ
れでは。

Posted by のきば at 2004年07月31日 06:54
こんにちは。

ライブドアは時々サーバーの負荷が大きくなって、反応が鈍くなる事があります。大体コメントは受け付けられていますので、あとで反映されます。今回は2通とも受け付けられていましたが、ほとんど同じ内容でしたので、先に投稿されたコメントをこちらの判断で削除しておきました。

投稿の件、説明ありがとうございます。僕がネットに公開している文章は出典さえ書いていただければ、どこに引用されても構いません。今回の本は多くの人に一度読んでもらいたいものなので、どんどん利用していただければと思います。
Posted by buu* at 2004年07月31日 12:28
 転載のご許可、ありがとうございます。
 まず『心の風景』の方に掲載しました。写真は、恥ずかしいことにすぐに
は出来そうもありませんので、後から追加してみようと思います。よろしか
ったら、ご確認ください。問題点がありましたら、お知らせください。
 http://www.bekkoame.ne.jp/i/gb3820/recommendation/index.html
 上記のページから「社会」のページへお入りください。
 これからも他の本を転載させて頂くかもしれません。どうぞよろしくお願
いします。

Posted by のきば at 2004年08月01日 07:37
確認しました。問題は何もありません。どうもありがとうございました(^^

他の本といっても、あまり参考になるようなインプレッションはエントリーしていないかも知れません(^^; でも、使えそうなものがあったらおっしゃっていただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by buu* at 2004年08月01日 23:57
◆buuさま
先ほど楽天の方にも、『そして殺人者は野に放たれる』の推薦文を
掲載しました。どうもご協力ありがとうございました。
お言葉に甘えて、当方の推薦図書になるものがありましたら、また
拝借いたしますので。それではまた。お元気で。
Posted by のきば at 2004年08月08日 07:26
了解です。

また時々遊びに来てください(^^
Posted by buu* at 2004年08月08日 12:17