最後に、ブログをプロモーションに活用する際の注意点に触れたいと思います。
閲覧者がブログを快適に利用している間はよいのですが、何か不平不満があったときは、コメントやトラックバックを通じて運用者に返ってきます。また、閲覧者は運営者からの反応を常に楽しみにしていますから、常にレスポンスを提供していく必要もあります。
たとえて言えば、従来のウェブサイトはピッチングマシーン(ただ球を投げるだけ)でしたが、ブログにすることによってキャッチボールが始まるのです。キャッチボールである以上、相手が無理なく捕れる球を投げる必要がありますし、相手から球が返ってくればきちんと捕球してあげなくてはいけません。いい球が戻ってきたら「ナイスボール」と掛け声をかけてあげることもコミュニケーションの潤滑剤になるでしょう。
ところが、まだ多くの企業が、せっかくブログを始めたにもかかわらず、相変わらず、相手を見ずに自分の投げたい球だけを投げているようです。たとえば日産TIIDAのブログ。このブログでは時々燃費情報が発信されますが、それは高速道路で遠くに出かけたときのものばかりです。では、車を買いたい人は本当にそういう情報を知りたいのでしょうか。少なくとも首都圏に住んでいる人にとってみれば、「環七を一周してみました」とか、「真昼間の首都高を高島平から用賀まで走破してみました」とか、そういった情報の方が価値があると思います。もちろん、日産が高速道路での遠乗りデータだけを掲載したい理由は想像できます。その数字の方が首都圏の渋滞を走った数字よりも距離が伸びますから、消費者に対して良いイメージを与えそうです。しかし、ちょっと車のことを知っている人ならそんなことは百も承知です。「お化粧をばっちり施したデータばかりを見させられてもねぇ」というのが正直なところでしょうし、また、ネットでちょっと調査すれば実際の燃費などはいくらでも情報収集が可能です。実際、僕はTIIDAのオーナーとしてほとんどすべての給油機会で給油量と走行距離、走ったおおよその内容と燃費をブログで情報発信しています。こうした状況では、下手にお化粧した情報だけを発信することは逆に消費者の不信感を招きかねません。自社に都合の良い情報だけを選択的に発信し、都合の悪い情報は囲い込む、というのは先に述べたWEB2.0的な考え方ではなく、旧態依然とした考え方です。TIIDAのサイトもブログ化しなければこうしたことがばれなくて済んだのですが、表面上だけ最新技術を導入し、そのマインドを導入しなかったために、逆に会社が後れていることを露呈させてしまいました。TIIDAのブログはデザイン的にはとても優れていますし、ブログパーツなどを導入したり、色々と面白い試みも行っています。また、トラックバックやコメントをなくすなどということもせず、評価できる部分もあります。しかし、一番肝心なキャッチボールの部分が弱いのです。
もちろん、こうした事例は日産自動車だけに限ったことではありません。逆に、ほとんどすべての大企業がこうした状態だと思います。
#念のため言っておきますが、僕は日産自動車が嫌いなわけではありません。逆に、父親を含め親戚には日産の社員がたくさんいて、元役員などにもお世話になった方々がいます。そして、自分も日産以外の自動車は買ったことがありません。嫌いだから指摘しているのではなく、好きだから指摘しているのです。もっと根本的なマインドから変えていって欲しいのです。
これからは、企業と顧客とがキャッチボールする機会はますます増えていくでしょう。ブログは、その実践練習だと考えることもできます。WEB2.0という言葉自体は最近では多くの人が耳にしたことがあると思います。しかし、その定義は非常にふわふわしたもので、「じゃぁなんなの?」と質問すると返答に困るケースが多いと思います。僕は、WEB2.0というものは実体のあるものではなく、ネットを使うときのマインドだと思います。そして、それは受け取るのではなく、自ら投げる(発信する)文化だと思います。そのときには、常に情報を受け取る側を意識する必要があります。また、「WEB2.0で儲かるのか」「WEB2.0でどういうインパクトがあるのか」ではなく、ただ単にネット社会はそういう社会に変革しつつあるんだということだと理解しています。そして、今その波に乗り遅れてしまうと、数年後に「あれ?俺はどうしてこんなに時代遅れにになってしまったんだ?」と自問することになると思います。
以上、ブログによるプロモーションの可能性について考えてみました。次からは、ビジネスにおけるSNSの活用法について書いていきたいと思います。