僕も一応コンサルタントとかをやっていて、バイオ業界については事情通だったりする部分もあるので、「どの株を買ったら良いか教えてください」とか聞かれることもあるのだけれど、何はともあれ「責任取れませんし、こんなことで人間関係が悪くなるのもバカらしいので聞かないでください」と返事をしている。そもそも、株で儲ける能力があるならベンチャーの社長などやっていないのである。絶対に儲かる銘柄を知っているのなら借金をしてでも株を買うはず。それをやらないのだから、どういう事情なのかは推して知るべし、という感じ。しかし、それはそれとして今日は「そういえば株式投資と釣りは良く似ているなぁ」と思ったのである。
例えば、こんな事例とかはどうだろう。
僕の知り合いにM君という奴がいるのだけれど、彼は小学校のときに「釣りキチ三平」を読んで、今風に言えば「インスパイア」されて、近所の池や川にフナやクチボソ、コイなどを釣りに行っていた。しかし、中学、高校と進学するにしたがって、遊びはスポーツが中心になって行き、大学時代などはとうとう釣竿を握ることもなかった。
ところが、数年前の9月、かかりつけの整体士に整体をやってもらっているとき、「今、大島が凄いことになっている」という話を聞いた。堤防から釣っていてもイナダ、カサゴ、サバなどがバンバン釣れて、「アジなどは餌だ」ということだった。早速職場を中心に知人達に声をかけ、「大島に釣りに出かけて豪遊する企画」を立てた。スケジューリングの都合などもあり、結局大島に大挙して出かけていったのは11月になってからだった。
そのとき、ある船宿に予約の電話をしたところ、「今は魚はあんまり釣れないよ」と言われたのだが、もう頭の中は大豊漁のイメージしかない。「そんなはずはないだろう」と、はなから信用しなかった。
そして、そのまま飛行機で大島に飛んだわけだが、着いてすぐにわかったのは、大島といえどももう寒いということ。冬が目前の海は人影もまばらで、魚を釣ろうとしている人など全然いない。しかし、ここまで来て引き下がるわけにも行かない。宿で「無駄だからやめた方が良いよ」と言われたにも関わらず、釣り道具を借りて20年ぶりぐらいで堤防から釣り糸を垂れたのである。しかし、イナダはおろか、アジですら釣れない。数時間粘って一行が釣ったのはフグなどの食べられない魚を中心に5匹である。ちなみに釣りをした人間の方が多かった。
その後、宿に戻って話を聞いたところ、大島で魚がたくさん釣れるのは3月、6月、9月の3ヶ月だけとのこと。9月に整体士のおじさんが釣りを満喫したのはもちろん嘘でも何でもなかったし、また、それを聞きつけて駆けつけたM君が全く釣れなかったのも道理だったのである。
さて、それからまた数年が経ったわけだが、M君も大島の件、喉もと過ぎればなんとやらという奴で、すっかり当時の痛い思いを忘れていた。そしてある飲み会で聞いたのがこんな話である。「今、相模湾が凄いことになっている。この間、舟で釣りに行ったのだが、わずか7時間程度で釣れたのはサバが5匹、イナダ、アジ、カサゴ、タコ、その他もろもろ入れ食い状態で大変なことになった。サバは押し寿司にして食べたし、イナダはひらきにして食べた。とにかく、相模湾は凄い」。なるほど、相模湾なら家からすぐじゃないか。早速「そんな話があるなら連れて行ってくれ」とお願いした。すると、「釣り舟じゃないので道具は自分で揃える必要がある。まぁ、竿、リール、糸、仕掛け、その他もろもろで3万円あれば十分揃う」とのこと。3万円の出費はちょっと痛いが、別に竿やリールが腐るわけでもない。毎月一回大漁ならすぐに元が取れる。近所の釣具屋に行って買ってきてしまえ、ということで、約束の前日に道具を一式買ってきた。もう、その晩は「たくさん釣れすぎてしまったら誰に配ろうかな。そうだ、大島組の人達にわけてあげよう」などと考えていたら夜も眠れなくなってしまい、待ち合わせは朝の7:30だったが、夜中のうちに出発してしまった。集合場所の佐島マリーナには朝の4時に着いてしまったので、そのまま車の中で仮眠をとって翌日に備えた。朝方はかなり寒かったのだが、心が燃え滾っていたのでなんとか凍死せずに済んだ。
朝の7:30、みんなが揃ったところで舟に乗って相模湾へ繰り出した。周りは釣り舟がたくさんである。真正面の釣り舟の客は早速サバか何かの青魚を釣り上げている。しめしめ。相模湾が凄いというのは本当だったな。ということでM君も早速オキアミを仕込んで釣り糸を垂れた。しかし、リールを使った釣りなどそれこそ30年振り位である。その間にマテリアルもしっかり進歩していて、使い方が良くわからない。そこで友達に質問しながらとりあえず一度錘を海底まで落とし、そこから巻き上げてみた。「なるほど、こうやるのか。よしよし」と思い、再びオキアミを仕込んでいたら、知人が「M君、釣れてるよ」とのこと。見てみると小さなホウボウがかかっている。なんだ、簡単じゃないか!
しかし、これからが大変だったのである。何度釣り糸を垂れてもあたりがない。そうこうしているうちに天気は悪くなってきて雨も降ってきた。風が強く、波しぶきで頭からびしょびしょだ。手がかじかんできて、餌をつけるのにも一苦労という有様。
周りにいた釣り舟はあたりがないので、ポイントを変えてあちらこちらに移動をはじめた。じゃぁ、今度はあっちについていってみるか、などと後追いで色々やってみるのだが、どこに変えても当たりはこない。このあたりの海全体がもう今日はだめ、という感じなのだ。
しかし、このままでは引っ込みがつかない。餌をオキアミからイソメに変更して、大物狙いからキス狙いに変更。さすがにこれならあたりがある。キスやらトラギスやら、何とか食べることの出来る魚をみんながそれぞれ一通り釣ったところで撤退することとなった。舟主いわく、「今日は朝一の1時間が勝負だったね」。
結局、M君の釣果は知らずに釣れてしまったホウボウと、最後に何とか釣り上げたトラギスの2匹。投資金額を考えれば一匹1万5000円である。この金額を出せば、サンマなら脂が乗ったものを100匹ぐらい買える勘定である。
このエピソードからわかることは四つ。一つ目は、単純に人の後追いをしていては十分な釣果は得られないということ。二つ目は一度失敗したらそれをきちんと次に活かさなくてはいけないということ。さらには情報はきちんと収集しなくてはならないということ。もちろん、専門家の話には耳を傾ける必要があるというのも忘れてはならない。
さて、折角なので追記には、今日釣った魚と僕の友達の加藤さんが自ら作ってくれた料理の写真を載せておきます。株式投資とはあんまり関係ないけどね。
#加藤さん、今日はどうもありがとうございました!次は、来月ですか??