ここで、もうちょっと厳密にSNSの定義について考えてみます。mixiの成功によってmixiのスタイル=SNSと理解している人が日本ではほとんどですが、僕はmixiのように会員だけがコンテンツにアクセスできる、非会員はアクセスできないというのは必ずしもSNSの絶対要件ではないと考えています。会員だけが記入できるが、閲覧は非会員でも可能、という形態のSNSも実際に存在しています。
僕は講演会などで、「米国は情報発信の文化圏。発信する情報はグーグルにひっかかって何ぼのものであって、かげでこそこそやっていても意味がないと考える。一方で日本は覗き趣味の文化。他人がどうしているかが気になって仕方がない。また村社会のマインドが根強い。心地よい人間だけでつながって、心地よい会話を続けるのが大好きである。そして、そういう日本人のマインドにmixiはぴったりフィットした」という主旨のことを言うことがあります。中にはこういったことを認めたがらない人もいるのですが、明確な反論を受けたことはこれまでになく、おそらく当たらずも遠からずなんだと思います。そして、実は「WEB2.0」というマインドは現状のmixiのようなスタイルとはやや方向を異にすると考えています。WEB2.0という言葉の定義もあいまいですが、ブログの項目で
「情報を囲い込む」時代から「情報を発信する」時代に世の中はシフトしつつあります。そして、これこそがWEB2.0といわれるものの本質だと思います。
と書きました。これをもうちょっと違う書き方をすれば、WEB2.0とは「個人が情報を発信しやすくするための仕組み」であり、それによって「多くの個人が発信した情報によって何らかの価値を生み出す」ことを目的としていると考えています。
mixiの成功にケチをつける気はありませんし、実際に僕もmixiタイプのSNSをいくつも運用しています。ですが、SNSはmixiタイプに限られる必要はないはずです。ネットワークを作り上げていくこともSNSのひとつの目的ですから、個人が識別される形でそこに存在する必要があって、「登録」というフェイズは必ず要求されると思いますが、たとえばそこでやり取りされている情報へのアクセスについては必ずしも登録が必要であるとは思えません。
つい先日、mixiの中の友達があるSNSについてこんな意見を述べました。そのSNSは紹介制ではなく自己登録制だったのですが、「紹介制でないなら誰でも登録できてしまう。それではSNSとは言えない。そんなネットワークはブログで作ればいいじゃないか」と。mixi一人勝ちの日本のSNS環境下ではこういう考え方をしても何の不思議もありません。また、日本人は定義をがちがちに固めてその中にさまざまな事象を押し込め、「こういうものだ」とラベリングするのが大好きですから、こういった意見が出てきても何の不思議もありません。しかし、僕はSNSにはもっと大雑把な定義があると思いますし、またそう考えたほうが可能性も広がると思います。「何かを記述するためには登録が必要。そして、登録者同士がネットワークを構築するのに便利なツールが整備されているシステム」ぐらいならどうでしょうか。
こう考えることをスタート地点とすることによって、SNSの色々な利用方法を開発できると思います。当面はSNSのビジネス利用の多くは閉鎖的な環境であることを活用したものが多くなると思いますが、ビジネスチャンスとしては開放的なSNSにもたくさんの可能性があると感じています。後ほど、開放型のSNSに関する構想を一つ紹介したいと思いますが、まずは、SNSをビジネスで活用した場合のメリットなどについて書いていきたいと思います。