夕方から久しぶりに北の丸の科学技術館へ。
ここへは今でも時々顔を出しているのだけれどそれは雑談とかがメイン。でも、今日はインストラクターさんたちへのレクというちゃんとした用事。
ここの5階にあるフォレストという展示はなかなか野心的、ということはどこかですでに書いていると思うのだけれど、本当に良く出来ている。そして、その一角にある「ゲノムコーナー」。これが、実はフォレストのコーナーの中にあってはやや異端なのである。それまでトータルでコーディネートされていたのに、ちょっとした事情で無理やりゲノムのコーナーを作らなくてはならなくなってしまった。で、このときにちょうど僕が理研の広報を担当していて、科学技術館の人たちと一緒に全体の構想を練ったりしたんですね。「違和感のあるものをどうやって丸め込むか」みたいな。
それで、当時新進気鋭のアーティストだった(今や現代アーティストの巨匠の一人ですけど)山口晃さんに漫画を描いてもらったり、色々と工夫したわけです。それでもこのコーナー、やっぱ、他のところとちょっと異質だし、馴染みのない話なので、なかなかとっつきにくいわけです。それは、この施設に遊びに来る人たちと同様、中で解説にあたるインストラクター達にとってもなんですね。それで、随分昔に、一度、「ゲノムとは何か」「遺伝子とは何か」みたいな話をインストラクターにレクしてあげたことがあるんです。そのときに話した内容とかをまとめたのが「親と子のゲノム教室
」だったりするわけですが。
で、それから何年も時間が経ってしまって、もう昔僕がレクしたときにいたインストラクター達はほぼ全員辞めてしまって、「ゲノムを知っているインストラクターの遺伝子」がほとんど失われてしまったんですね。もちろん、中には興味をもって自主的に色々調べている人もいるわけですが、逆に「生物なんて全然わからない〜」という人もいる。
そういうわけで、「じゃぁ、そろそろまたレクに行きますよ」と約束したのが先月ぐらいだったかなぁ。で、今日は17:30に科学技術館に行って、それから20:00くらいまで色々と講義をして、質疑応答してきたわけです。
僕の作った資料って、実は昨日の夜から作り始めたもので、中身はテキストばかり。決して褒められたものではないので、あとはもう相手の顔色を見ながら、適当に冗談を交えて飽きさせないようにするのが精一杯なんですが、それでも一応、2時間弱、なんとかもたせてきました。
本当は完全なボランティアのつもりだったんだけど、技術館の方で無理しちゃったみたいで、結構なお金までいただいてしまいました。で、終わった後に「じゃぁ、これでみんなで飲んじゃおー」とか言って竹橋の中華料理屋に繰り出したのですが、お金をほとんど受け取ってもらえず、うーーーん、困った、という感じ(^^; 全然良かったのに。いや、プロならプロらしく、きちんとお金はもらうべきだと思うんですよ、仕事なら。でも、僕にとって生物を教えるというのは、これはもう趣味なんですよね。
僕は大学のとき、一年間暇になって、何をやっても良い、という時期があったんです。もう単位は全部取っちゃってあって、あとはスキーだけやっておけば良い、という状態。そのときに、暇つぶしで受けたのが生物の授業だった。先生は稲田先生という人で、東工大を退官した後は桐蔭学園横浜大学に行ったようだけど、そのあとどうしたのかは良くわかりません(って、今ちょっと調べたらまだちゃんと現役のようです)。それで、その稲田先生の授業がすこぶる面白かったんですね。それまで僕は物理と数学にしか楽しみを見出せない学生だったんだけど、暇つぶしだったはずの授業で、物理や数学よりも生物、生化学の方がずっと楽しく思えてしまった。それで、それから先の学生時代はぜーーーんぶ生物だったわけです。
でね、そのときの稲田先生に教えてもらった内容、それを、次の世代に教えてあげるのが、僕にとっても楽しいわけです。僕がそのとき感じた不思議さとか、興味とか、驚きとか、とにかく結果的に僕の人生を大きく変えてしまったものを、同じようにみんなに体感してもらいたい。もちろん僕は稲田先生のような教育のプロではないから、全く同じような影響力を発揮することはできないわけですが、それでも、僕が話す前と、後とで、今そこを飛んでいる羽虫に対しても感じるものが変わってくれば良いのにな、と思うわけです。
ということで、久しぶりに楽しい時間を過ごすことができました。邪魔じゃなかったら、また声をかけてください(^^