それで、そうした会社の中の一つの社長がどうにも行き詰っているので、どうにかならんかなぁ、と思ったところでなんとなく時々トラックバックしたりトラックバックされたりの木村剛さんの「頭が良い人は親指が太い」を買ってざーっと読んでみた。
実際にもう何年も社長をやっている人間からすると当たり前のことも多いし、また中には「これはちょっとどうなのかな?」と思うところもあったりするのだけれど、基本的に社長初心者にはなかなか良さそうなので、「まぁちょっとこの本を買って読んで、今の自分と対照してみろ」とアドバイスしてやった。
しばらくして「目が覚めました」という反応があったので、結構な効果があった様子。ということで、これから「社長をやろう」っていう人には結構良いと思う。ただまぁ、中小企業の社長向けというよりはそこそこの大学を出た上で「ベンチャーやるぞ」という若い人向けの本ですね。一流大学を出ただけで成功すると勘違いしているちょい抜け社長の啓蒙書としてはうってつけだけど、それ以外の人にどの程度効果があるのかはちょっとわかりません。例えばNTTとかトヨタとか東京三菱UFJ銀行とかに勤務して、何も不満を感じていないサラリーマンがこの本を読んでも全然役に立たないでしょうね(^^;
どうでも良いけど、タイトルがどうなのかなぁ、と思う。ただでさえ「社長の教科書」というのはマーケットが小さいわけで、その上でこのタイトルだと売上的にはちょっと苦戦するかな、というのが正直なところ。サブタイトルもどうなんですかね?「デキるビジネスマン」というよりは「成功した社長」ぐらいじゃないかなぁ、と。
いくつか、ポイントを列挙すると
○そうだな、と思うこと
リスクを恐れる人にビジネスは向きません。
次に挙げる三つを持っていることが望まれるのです。
1.失敗にめげない
2.何でもすぐにやる
3.向上心が切れない
起業というのは、最終的には失敗する確率の高い勝負です。
経営者には不満はないが不安がある。
ビジネスリーダーがやるべきことは、大事な問題から解いていくこと。
単に「頭が良い」という価値は、これからどんどん落ちていきます。
○そうでもないんじゃない?と思うこと
学校秀才がビジネスで成功することは難しいのです。「勉強すれば答えはわかる」という世界における「勝ち組」ですから、「勉強しても答えはわからない」という世界で「勝ち組」になるためには、これまで鍛えてきた思考回路と異なるやり方を身に付けなければなりません。
ビジネスは理屈じゃない。
○微妙なところ
小企業の経営者は、ワーキングプアだとして世の中の同情を集めている労働者よりも保護されていない「社会的弱者」なのです。
って感じでしょうか。
まぁ、例えば一倉定さんの社長学シリーズなんていうのも社長をやる人間は一度は読んでおくべき本だと思うのだけれど、あれはあれで製造業にかなり偏った本で、書かれていること全てが世の中の全ての社長の役に立つわけではない。こちらの本はこちらの本で、同じように全ての人の役に立つという感じではないのだけれど、情報なんてそんなものですね。今の情報過剰時代では、たくさんある情報の中から取捨選択する能力こそが求められているわけです。それで、比較的良い情報が集まっているところから良い情報だけをふるい分けるのは作業が効率的になるわけで、そういう意味では筋が良い本だと思う。
特に大学生ぐらいで「ビジネスを起こしたい」と思っている人にはお勧め。ま、一倉さんの本も、木村さんの本も、とりあえず両方読んでおけ、と。役に立たないと思えば忘れれば良いんだから。
#得てして、役に立つことまで忘れちゃうんだけどね。なので、本棚に一冊置いておくと、ときどき引っ張り出せて良いですね。
何しろ、実際に役に立ったので、評価は☆3つということで。