映画化されるということだったので、映画になる前に読んじゃおうと思って買ってきた。映画が上映されるまでにはまだ時間があるんだけれど、読むのに時間がかかってしまうのは僕には良くあること。なので大分フライング気味だったのだけれど、余計なお世話だった。あっという間に読み終わってしまった。
僕が贔屓にしている奥田英朗さんに通じるところがあるのだけれど、本筋とは別のところでのちょっとしたユーモアがなかなか心地良い。落語に通じるところもあると思うのだけれど、この手の間の取り方が最近の流行なのかもしれない。そういう意味では目新しさはない。取り上げているテーマも医療なので、それほど新味があるわけではない。犯人探しも何か巧妙なトリックがあるわけではない。伏線が色々張られているので登場人物のほとんどが犯人でありうるという状況。そんな中で事件が起きて、名探偵が犯人を名指しする。このあたりは日本に古くからある展開のコピーでもある。
しかし、破綻のないストーリー展開、それぞれが魅力的な人物設定、そしてシリーズ第一作ならではの説明的な要素を苦にならないように配置する工夫。そのどれもこれもがエンターテイメントとして優秀である。なんとも後を引く作品で、後続の作品も早く読みたくなる。
評価は☆2つ半。