バチスタの続編。
続編なのだが、読後感はバチスタとは随分と異なる。良い意味で、ではなく、悪い意味で。まず、バチスタではメインディッシュとなっていた白鳥が完全に脇役になってしまっている。これではまったく味が出ない。そして新キャラとして登場したデジタル・ハウンド・ドッグ。これが白鳥の味を一層消してしまう。二つのキャラが相乗効果を生み出すのではなく、お互いの良さを消してしまっている。
そして、同じように存在感をなくしてしまった田口医師。その役割を分散するように配置された脇役達もその位置づけが中途半端。白血病の少女などは非常にポテンシャルを持っていたキャラだと思うのだが・・・・・。
途中までは事件が起こらないので、普通の小説のように進んでいくし、事件が起こってからはちょっとトンデモっぽい話になっていく。まぁこの手の展開は宮部みゆきなども良くやることなのでそれほど違和感はないのだけれど、事件のアウトラインが容易に想像がついてしまうのはどうか。事件の詳細についてはほとんど驚きはなく、自分が描いたメインストリームの枝葉末節について解説をしてもらう、という感じ。美術館でざーーーーっと一通り鑑賞した後に気に入った作品だけをじっくり観る、といった趣なのだけれど、その「気に入った作品」となるべきものが見当たらないのが至極残念。
伏線らしい伏線もほとんどなく、読み返してみたくなるような部分もあまりない。テレビ局が絡んだ映画で良くあるような、子供を使ったあざとさのようなものも感じられてしまい、イマイチ読後感が良くないのである。
文章自体は読みやすいので、さらっと読めるのは確かだが、バチスタの出来が良かっただけにがっかり感も強い。評価は☆半分。
『ナイチンゲールの沈黙』
海堂尊 宝島社
東城大学医学部付属病院小児科病棟のディーバである看護師、
浜田小夜は、癌のために眼球を摘出しなければならない子どもたちのために心を砕く。
しかしその一人である牧村瑞人の父親が殺害され、容疑は彼女に...
『ナイチンゲールの沈黙』【ぱせりブログ】at 2008年04月20日 21:13