2008年04月11日

バンテージ・ポイント

678c3152.JPG宿題になっていた「バンテージ・ポイント」を観てきた。

米国大統領がスペインで狙撃されるという事件を、徐々に視点を変えつつ、さらに少しずつ新しい事実を付加して行くことによって、その全容を見せていくというもの。

謎解きは特に難しくもないのだけれど、最初に観ていたものは実は「みんなが思っていたものではなかった」と種明かししていくことの繰り返しで、それは先日の『東京少年』とかでも使われているそれほど新しくない手法。しかし、その塗り替え作業を「これでもか」というくらいに繰り返していくのはなかなかに面白い試みだと思う。有吉佐和子の「悪女について」という小説があったけれど、それの映画版と言っても良いかもしれない。

登場人物については人物描写などがあまり行われず、単に事件はどのようにして起きたのかということをドキュメントタッチで描いている。そのおかげか、映画自体は非常にスピーディーですぐにラスト近くまで行ってしまう。

が、この映画を台無しにしている要素が後半にある。それがカーチェイス。このカーチェイスが無駄に長い。昔、ホイチョイプロダクションが見栄講座か何かで「米国の映画は必ずカーチェイスがあります」みたいにちゃかして書いていたことがあったような気がするのだけれど、これもまさにその典型的な映画。全編カーチェイスじゃなかったのはまだ救いがあるのだけれど、とにかくこのカーチェイスのおかげで眠くなるったらありゃしない。ほとんどネタは出尽くしているのになぜこんな下らない、意味のないカーチェイスを延々と観なくちゃいけないのかと思ってしまう。

折角良い映画になりそうだったのに、「ヒット映画の文法」を無理やり踏襲させたことによって台無しになってしまったのは残念。それから、全てのアイテムが無理やりラストに向けて収束していくのもかなり違和感がある。過不足なく必要にして十分な要素が配置されていて、もうちょっと無駄があっても良いのにと思わないでもないのだ。

短い映画なのにカーチェイスの部分で退屈させられてしまったので、その分減点。評価は☆1つ半。

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