2008年04月28日

クローバー・フィールド

c5dd7a77.JPG怪獣に襲われたニューヨークで逃げ惑う人々を描いたパニック映画。と書いてしまうと「なぁんだ」という感じなのだけれど、それが「登場人物が持っているハンディカムの映像だけで描かれている」となると「ほう」ということになると思う。

全体の設定に関していえば新しいものは何もない。しかし、それをハンディカムを通すだけで「創作物」としての価値は格段にアップする。あんまり何度もやれることではないし、過去にも同じような趣向のものはあったので、「発明」とまでは言い切れないのだけれど、しかしそれでも「この手があったのか」と思わされる。

まず最初に書いておくべきことは「何はともあれ、この作品は映画館で観ておくべきである」ということである。映画館でゆらゆらとゆれるハンディカムの画面を観て、気分が悪くなるかもしれない。しかし、それこそが「臨場感」である。これは家のテレビでDVDを観るのでは体感できない。ポジティブな感想を持つか、ネガティブな感想を持つか、それは個々の感性次第なのだけれど、とりあえず映画館で観ておいた方が人生の経験ポイントが増えるよ、ということは言えると思う。新感覚を体験することは、間違いなく可能だ。

さて、では映画の質はどうなのか。普通のパニック映画と何か違うのか。いや、違わない。表現方法が違うだけである。ハンディカムの持ち主が撮影した主体的な映像に終始するので、情報量もかなり限られる。この、「限られた情報」というのが、鑑賞者と、映画の中の主人公を完全にシンクロさせる。主人公が感じる「未知のもの」に対する恐怖や理不尽さを、観ているものも同じように感じることになる。このあたりのアイデアが秀逸。怪獣が徐々にその正体を明らかにしていくあたりも非常に良くできた構成だと思う。

パニックの本質とはなんなのか。それを第三者的な視点ではなく、当事者としての視点で記述したところが素晴らしい。ときどき挟まれる、「事件」の前の平和な映像との対比もなかなか秀逸だ。

登場人物たちの行動に関していえば、「お前、そこでその行動はあり得なくないか?」というところがあるし、ヘリコプターが墜落したのにそれほどフェイタルな状況に追い込まれなかったりもするし、まぁいろいろと「それはちょっとないんじゃないの?」と思わないでもないのだけれど、そのあたりはまぁ良しとすべきなんだろう。さすがに物凄い状況においても執念深くビデオカメラを回し続ける登場人物たちはさすがにやりすぎ感があって、ラスト近くでは個人的には笑いが漏れてしまった。これはターミネーターのラスト近くで、「おいおい、まだ頑張るのかよ」(苦笑)、みたいな状況になったのと似通っている。米国人はここまでビデオで記録することに対して執念を燃やすのか、と勉強になった。

本当に、全体としては全く大した話ではないのである。しかし、それでも全編を通じて楽しめた。これこそがアイデアの勝利だろう。もしかしたら、まずパニック映画の本編があって、これはそのスピンアウト、みたいな感じで公開されたらもっと面白かったかもしれない。

しかしまぁ、お金がかかっているのかかかっていないのか、良くわからない映画でした。あと、結構画面が揺れるので、観ていて疲れました(^^; 評価は☆2つ半。


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