このブログを読んでいる人はほとんど知らないと思うのだけれど、僕は日本でも数少ない割引制度の専門家です。そのうち本を書こうと思っていて時間がなくてやってないのだけれど、世の中にある割引制度をクラスタリングして、その目的と効果を整理し、どういう場面でどういう割引制度を使ったら効果が出るか、ということをシンクタンクの研究員として検討してきました。割引制度は商売をしている人なら誰でも使えますから、「そんなの、専門家に聞かなくてもわかる」と思うかもしれませんが、実際に吟味して見ると、適材適所ではない割引制度と言うのもちらほら目にします。
守秘義務があるので「これが僕の考えた割引制度の例です」と書くことが出来ないのですが、今、多くの人が利用している「ある割引制度」は、その業界が初めて導入する際に僕がコンサルティングをしたもので、当時の担当者はあまりにもその割引制度が効果が高かったため、社内で表彰されたほどでした。もうかれこれ10年以上も前の話ですが。
さて、それ以降、割引制度の専門家として色々な人の相談に乗ってきたのですが、その本質は大きく分けて1.割引くことによって商品を沢山売る、2.割引くことによって商品をすぐに販売して、スペースを確保する、3.割引くことによって商品をすぐに販売して、商品そのものの経時劣化を防ぐ、の3つに分類できます。ここで、2と3については原価割れする可能性がありますし、1についても当初想定した売上額よりも実績が下がってしまうという欠点があります。専門家が言うのも変ですが、割引制度というのは売り手からすれば決して好ましい手段ではありません。できることなら価格はそのまま維持して、顧客満足度をアップして販売したいわけです。でも、そんな方法はなかなかありません。
しかし、もちろん、「価格を下げずに顧客にアピールする」方法は皆無ではありません。この本は、そういった種類の数少ない手法、「視覚マーケティング」の重要性を説いた本です。短い言葉で言ってしまえば、「見た目で差をつけてブランディングしちゃおうぜ」ということです。内容はこれ以上でもなければこれ以下でもなく、「もっと知りたければまぁ読んでみろ」ということなのですが、では、なぜこの本を読んでおくことが必要なのか、ということになります。
この本のターゲットはもちろんデザイナーではありません。メインターゲットは「見た目なんか気にしていられん。まずは中身で勝負。中身が良ければ見た目なんかどうだって売れるはず」というタイプの事業者です。多分、こういう人は中小企業には結構多いと思います。
ところで、「デザインの素人で、自社のサイトのデザインもいい加減な元木にデザインの本を薦められてもなぁ」と思うかもしれません。なぜ僕がこの本を読んだのか。確かに僕は見た目より中身を重視する人間です。しかし、見た目の重要性を無視しているわけではありません。僕個人は見た目の重要性はある程度認識しているつもりでした。そんな状況でなぜこの本を読んだのかといえば、「見た目」というものの重要性をプロはどういう風に説明するのか、ということに興味があったことと、自分の中での「見た目」を、きちんと整理して再構築しておきたいと思ったからです。見た目の重要性を理解していないのと、見た目の重要性を理解した上で中身を重視することは全く異なります。僕自身の中ではデザインの重要性と言うのはある程度形になっているものですが、それはあくまでも暗黙知です。知識と言うものは、文書化されて目の前に提示されることによって、より明確に整理されます。中身に重心を置いたコンサルティングをきちんとやるためには、見た目の重要性もきちんと整理しておく必要があります。著者であるウジさんが面識のある方だというのももちろん理由のひとつではありますが、「折角だから、この機会に一度、デザインの重要性について整理しておこうかな」と考えたのが一番大きなところです。
ということで、「デザインなんて」と思っている方はもちろん、「デザインかなぁ、中身かなぁ」と二者択一を考えている人も、一読してみると良いと思います。
#読めばわかりますが、特に後者のタイプの人にはおススメです(^^
あ、「ターゲットはデザイナーではありません」と書きましたが、例外もあります。「デザインの重要性をクライアントにどうやって説明したら良いのだろう」と考えているデザイナーさんにも参考になると思います。
さて、本は読み終わったので、僕もそろそろ自分の会社のウェブサイトのデザインについて、真剣に考えようと思います(笑)。うちの会社、慢性的な人材不足なんですが、サイトのデザインが悪いからかも知れません。
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しっかり説得されている(笑)