2008年05月29日

ミスト

8ce504b7.jpg「後味の悪い結末」という以外は結構評判の良かったこの映画、早速、でもないですが、観てきました。うーーーん、確かに後味が悪い。この後味の悪さは、ラストが悪いのではなく、そこに至るまでの描写が良くないんだと思う。

以下、超ネタバレなので追記に書きます。評価を先に書いておくと、☆2つ半です。


アメリカの田舎町で霧が発生。たまたまショッピングセンターに買い物に来ていた親子は、この霧の中から現れた怪物のおかげでショッピングセンターに閉じ込められてしまう。そこからは「ゾンビ」よろしく、異形のものとの戦いが始まるのだけれど、真っ白の霧の中から現れる異形のものはなかなかその全体像が見えてこない。ちょっと見えたと思うとそれは抜群の破壊力を発揮する。霧の中に入っていく人間にロープをつけたら、そのロープがはるか上空に向かって伸びていくあたりで異形のものが馬鹿でかいことがわかる。また、小さい昆虫のようなものから、鳥のようなもの、さらにはもっと馬鹿でかい恐竜のようなものまで現れて、「一体これはどうなっとんじゃぁ」という状態。そんな極限状態の中、徐々に人間達は仲間割れを開始して、お互いを殺しあうようになってしまう。主人公達はそんなショッピングセンターを脱出するが、その途中でも異形のものに襲われ、結局車で脱出することができたのはたったの5人となってしまう。霧はいつまで経っても晴れず、車はガス欠になってしまい、手にしている武器はピストルが一丁のみ。弾は4発。さて、どうするのか・・・・・。

こういうプロットってどこかで見たことなかったっけ?と思い返してみると、楳図かずおの「漂流教室」あたりだろうか。

ラストに至るまでの導入からパニックぶり、そして仲間割れ、さらには薬品を探しての無謀な冒険、と、パニック映画のお手本のようなつくり。面白いのは、普通この手の映画で活躍する黒人や女性が敵役になっていることを筆頭に、ハリウッド映画の文法をことごとく無視している点。そして、「驚愕」といわれるラストへ・・・・・。

はい、ここからさらに超ネタバレです。観る気がある人はサヨウナラ。







で、ラスト、4発の銃弾が残っていたピストルで主人公が何をしたかというと、そのピストルで心中を図っちゃうんですね。一緒に逃げ出した4人(自分の子供を含む)を全部殺してしまう。そして、車の外に出て、「さぁ、オレも殺せっ」と開き直ったところで霧が晴れ、軍隊によって助けられた人たちがトラックで運ばれていく。そして、そのトラックの中には映画の冒頭で「子供が家にいるの。誰か助けて。家まで連れて行って」とわめいて霧の中に消えた女性が含まれていたりする。「あーぁ、こんな結末かぁ」と、確かに救いがない。

トータルで観て、あらゆるところで意地の悪いつくりになっているところがいかにもスティーブン・キングっぽいのだけれど。その、意地の悪いところを肯定的に捉えられるなら、評価はかなり高いと思う。じゃぁ、私はどうなのか、ということなんですが、私はイマイチしっくり来ませんでした。何故かといえば、車で脱出してからの主人公達が、集団自決を図るほどの絶望感を抱くだけの行程を経なかったと思うから。脱出してからもいくつも苦難に遭い、追い込まれ、そしてどうにもならないという状態が誰にでも明らかだったらば、あのラストでも納得できたと思う。でも、「なんで給油しないの?」とか、「ラジオとか電話はどこまでいっても通じないの?」とか、「本当に孤立しちゃってるの?」とか、さまざまな疑問が沸いてきてしまうのだ。ラスト前に、あと2つ3つエピソードがあるだけで、受ける印象は随分と違ったものになったと思う。その点が非常に惜しい。

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