2008年08月22日

陰日向に咲く

陰日向に咲く 通常版
なんともすさまじく謎な映画だ。念のため最初に書いておくが、原作は読んでない。

何が謎って、アイドルオタクと売れないアイドルのエピソードが、その他のエピソードと全く独立していて何の役にも立っていないことである。途中で寝てしまっていたとか、観ている途中で宇宙人にさらわれて記憶を消されてしまったとか、そういうことでもない限り、ちょっとこの展開はあり得ない。他のエピソードは微妙に関係しつつ最後に向かうにしたがって収束していくのだが、「さて、これはどうなるのかな」と思っていたらそのままエンドロールになってしまった。ジュピターの息子の健一がユウサクだというのなら多少の関連はあると思うのだが、名前も違うし、2歳のときの写真しかないのでは判断がつかない。一方で、弁護士、ホームレス、駄目息子、ホームレス新入り、売れない芸人の5つのエピソードは不自然なくらいに絡まりあって収束していく。突然宮崎あおいが出てきて喋り始めたときは不自然の極致。突っ込みどころ満載のシーンである。なぜ借金男のオレオレ詐欺がジュピターにつながったのかも良くわからないのだけれど、それって何か説明ありましたか?

ちょっとしたシーンにはお涙頂戴の要素があることは否定しないし、悪くない場面もあるのだけれど、それにいたる必然性が全くないままに終わってしまうか、あるいはわざとらしさが前面に出てしまうので、全てがおじゃん。これは、原作というよりは映画化に当たっての脚本家の腕の悪さに尽きる。

唯一、評価できるのは、伏線というか、あとで明らかになってくるいくつかのエピソードの隠し具合。しかし、その他の部分の駄目っぷりをカバーするには至らない。

他に気になったのは、新橋(内幸町)の事務所から出てきて、歩道橋がそばにあるような場所ってあるかなぁ、ということ。あのアタリはかなりフラットな地形で、電車がそばを通っているのは有楽町、新橋といったところになるのだけれど、映画に出てきたような複雑な地形はちょっと思い当たらない。だから、弁護士と駄目息子のシーンはとても走って追いかけていけるような場所ではないような気がする。いや、もしかしたら知らないところにああいう場所があるのかもしれないのだけれど、それが気になって仕方がない(笑)。

また、宮崎あおいが親子を一人二役でやるのはちょっと安直過ぎると思う。どうにも、作り手にやる気が感じられない。

何しろ、個人的に「世界に一つだけの花」的な世界観が大嫌いなので、この手の「誰にでも朝日に照らされる瞬間がある」的なストーリーは全く評価できない。でもまぁ、ああいう歌が大好きな日本人にはこの甘ったるさが良いのかも知れない。

奇麗な花を咲かせるためにはそれなりの努力が必要なはず。パチンコやって借金しまくって、オレオレ詐欺をやって、悩みは抱えているのかもしれないけれど、でも具体的な努力は何もしてません、という奴に日が当たってたまるか。日陰であったとしても、何とか頑張って生きていくということが評価されるべきであって、何もせずに日陰にいることを評価しようなんて、あり得ない。

まぁ、努力していない人が、自分の置かれている状況を正当化するには、この映画はうってつけかもしれない。

乾いた笑いが途中に散りばめられていることも含め、全く観る価値がないとは思わないが、まぁ、ツタヤの新作半額クーポンがあるときに借りるのがちょうど良いレベル。評価は☆半分。またつまらないものを観てしまった。

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