2008年09月08日

崖の上のポニョ

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完全な子供向けにしては「崖」なんていう大人でも書けないかもしれないような難しい漢字を使っていたりして、「もしかして説教臭い、大人が観ても辟易としちゃうような映画なのかしら」などと思い、ついつい観に行かずに済ませていたのだけれど、今日、サミットで買い物をして店から出てきたら、ノーヘルの頭の悪そうなお兄さんが信号待ちの間に馬鹿でかい声(少なくとも、歩道まで声は届いていた)で「ぽーにょぽーにょ」と歌っていて、「これはもしかしたら観ておかないとまずいかも」と思いなおした。

さて、そういうわけでようやく観てきたポニョですが、まぁ、ここ数作に見られた説教臭さはかなり陰を潜めていて、そのあたりはなんとなく良かった気がする。やはり宮崎アニメの真骨頂はカリオストロであり、ラピュタだと思うからだ。

それで、説教臭くなかったから面白かったかと言えばさにあらず。何しろストーリーや設定の面で突っ込みどころが満載だ。もちろん、「魚がなぜ日本語を喋るんだ」とか、「海水魚がなぜ淡水で平気なんだ」なんていう野暮なところに突っ込む気はない。もっと別のところ、なぜ月が巨大化するのかとか、ポニョのお母さんがなんなのかとか、ポニョのお父さんがなんなのかとか、いやいやいやいや、とにかく、突っ込みどころが満載なのだ。なぜ突っ込みたくなるのかと言えば、多分大人の目線で見ているから。大人はこういう映画を作るのは無理。だから、そういうのを作ってしまう、子供の目線を持ち続けている宮崎駿は偉いといえば偉いんだと思う。ただ、子供に付き合わされてこの映画を観に行ったら、かなりつらい2時間を過ごすことになると思う。やはり、子供の目線を持ち続けている大人のための映画だ。

声にプロの声優を起用せず、一般芸能人を使うのが最近のジブリ、電通連盟の常套手段だが、今回「こいつはへたくそだな」と感じたのは所ジョージ。もうちょっと器用かと思ったのだけれど。あるいは、演出の指示があったのかもしれないけれど、違和感がありまくり。一方でいかにも駄目そうだった長島一茂あたりは結構無難にこなしていた。登場頻度が低く、重要度が低い役だったために目立たなかっただけかも知れないけれど。

CGを使わずに手描きの味を出す、という試みはそれなりにうまく行っていて、ちゃんと効果を出していた。しかし、すっかりCGに慣れてしまった今の我々には、懐古的ではあるものの、「なぜCGではなく手描きなのか」という明確なメッセージは感じ取れなかった。別にCGでも良いじゃん、みたいな。

興行的な成功が絶対に約束されている宮崎アニメなので、こんなものでも十分なんだろう。個人的にはあまり満足しないけれど、客が入るんだから文句を言う筋合いではない。しかしまぁ、スカイ・クロラの方がずっと面白いと思う。

評価は☆1つ。