手短にストーリーを説明すれば、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じる女性料理長が切り盛りするニューヨークのフレンチレストランにイタリアンの料理人がやってきてのどたばた、みたいな感じのラブコメディ。
短めに編集されているせいか、あちらこちらで説明不足の場面が目に付いてしまうのが非常に残念なんだけれど、「まぁ、映画なんてご都合主義だからね」と思って観ていれば諦めもつく。そのあたり、どこまで短いシーンに意味を含ませるかが「一級品」と「その他」の分水嶺でもあると思うのだけれど、この作品はそういう意味では「その他」の作品。
例を挙げれば、階下の男性ははじめ不審者っぽくて、さぁ、これがどうやって絡んでいくんだろう、と思っていたら、いつのまにか良いおじさんになっていて、その上、そのままフェイドアウトしてしまった。こんな感じで、アクセントにも何にもならず、意味不明の挿入があるかと思えば、逆に「なぜ姪はキャサリンの料理を食べないのだろう」みたいな部分が良くわからなかったりもして、説明不足の部分もあったりする。また、実際の料理人と言うのはオーナーでもない限り、自分の腕で世の中を渡っていく人種で、一つの店にこだわり、「ここが私の唯一の世界なの」と言ってしまう主人公のキャラクター設定もどうなのかなぁ、と思う。全体として現実味がないのは間違いがなく、現実を知っていれば知っているほど違和感を持つと思う。結局、語るべきところと語らなくて良いところのバランスがイマイチで、監督、脚本のあたりの力不足は否定できない。
が、この作品はなんといっても主要登場人物3人がどれも芸達者で、それだけで楽しく観ることができるのも間違いない。細かく理屈をこねるのではなく、ラブストーリーと思って単純に楽しみましょう、というスタンスに立てば間違いなく一級品の部類。テンポが早いのもここでは良い方向に作用している。キャリア志向と人間味の葛藤、みたいな視点からこの作品を観るのであれば、「プラダを着た悪魔」の方が全然面白いと思うけれど、結局彼女は多分変な客が来たら、やっぱり包丁をテーブルに突き刺すと思うので、下手に成長話みたいに取らず、本当に軽いのりで観るのが良いと思う。評価は☆2つ。