18世紀のスペインを舞台にした歴史劇。ゴヤが描いた二人のモデルがたどった人生を描くというもの。ナタリー・ポートマンが出ていたから観たのはもちろんのこと。
何しろナタリーのスペイン娘っぷり(大富豪の商人の娘)がめちゃくちゃ可愛いのだけれど、「あぁ、観に来て良かったなぁ」と幸せな気分に浸れるのは最初の15分ぐらいだけ。あとはもう、ナタリーが可哀想で可哀想で、という映画なのだけれど、とにかくナタリーの出る映画といったら、馬鹿な旦那が悪の化身になって生きる気力を失ってしまうとか、牢屋に投獄されて拷問を受けるとか、近親相姦の疑いをかけられて首を切られるとか、とにかくろくなものではない。あの、眉間にしわを寄せた顔が映画監督の心を揺さぶるのかも知れないのだけれど、もうちょっとハッピーな映画に出させてあげられないものか。
さて、本題。この映画、ナタリーの可愛さとその扱いの酷さを抜いて結論から書くと、非常に面白かった。ゴヤはタイトルにもなっているぐらいなのだけれど、単なる狂言回しの役割で、それほど重要ではない。もちろん全くの端役というわけではないのだけれど。ただ、そのそれほど重要でもないゴヤが抜群の存在感で、物語を引き立てている。ちょっと油断すると全身のフジツボの怪物になってしまいそうだけれど、本作では海は出てこないので大丈夫。主役の神父はなんか、酸素ボンベを使って殺人を繰り返しそうなタイプで、でも良く見ると魔法学校で眼鏡の少年に嫌がらせをする先生のようにも見えてくるから不思議。そんな神父は異端者をあぶりだす急先鋒になったかと思えばあんなこともこんなことも。って、彼が主人公なので、そのいろいろっぷりは映画で観て確かめて欲しい。そしてもちろんヒロインのナタリー。理不尽な拷問ののち、牢獄での唯一の光だった神父を神として捉え、そして愛情を注ぎ、牢獄から解放され精神に異常をきたしてもさらに彼と娘を慕い続ける女性を好演。ただ、好演しすぎて気の毒になる。ま、人生万事塞翁が馬というのは東洋だけではなく西洋においても当たり前にあるのだなぁ、と思った次第。そんな中に、宗教とは何か、教会とは何か、人間とは何か、男とは何か、女とは何か、フランス革命の本質、軍の横暴とそのとばっちりを食わされる一般民衆といった要素をてんこ盛りに盛り込んだ、超巨大パフェみたいな作品だった。
先日観たブーリン家の話では「英国の王室ってめちゃくちゃ」って思ったけれど、今日観たこの映画からは、「もう、キリスト教ってばめちゃくちゃ」という印象。何しろ、宗教と戦争が人の人生をめちゃくちゃにしているわけで、そりゃぁ政教分離もしたくなるでしょうよ、という感じ。
ナタリーはレストランで「豚は口に合わない」と言っただけでユダヤ教徒の疑いをかけられ、そのおかげで大変なことになっちゃうのだけれど、ナタリーがユダヤ人であるあたり、どんな風に思いながらその役を演じたのか、ちょっと興味深い。
それはそうと、ナタリーに10代半ば、20代前半、そして30代半ばの女性を演じさせるのにはちょっと無理があった感じ。特に若いスペイン娘は、ちょっと無理があるような。
って、ナタリーのことばかり書いているような気がするけど、仕方なし。いや、最初のほうのナタリーの可愛いことと言ったら・・・って、もう良いですか?はい、じゃぁ、この辺で(笑) 評価は☆3つ(満点)。
#それにしても、この映画、2006年の製作なんですけど(;_;)