ブラッド・ダイヤモンドのような感じの告発系映画。フアレスという米国とメキシコの国境に位置する町で、田舎出身の女性達が大量に低賃金で働かされている。そして、その女性達をターゲットにした暴行殺人が頻繁に発生している。その真相を米国の女性ジャーナリストが突き止めていくという内容。
基本的に事実をベースとしているようで、メキシコという非常に米国の近所にありながら、その実態についてはほとんど知らない国でこんなことが起きているというのが何より驚き。そうした事実が、ニュースとして配信されるのではなく、映画と言う形で周知されているという現実にも驚く。僕のブログを定常的に読んでいる人ならわかると思うけれど、僕は決してマスコミに期待していないし、マスコミがフェアだとも思っていない。特に新聞は特定のバイアスが強くかかるメディアで、その記事が客観的だなんていうのはただの妄想、ありえない期待であると考えている。だから、こうした現実を米国をはじめとした各国のメディアが故意にネグレクトしているという事実についても、それほど大きな驚きはない。しかし、である。新聞やテレビといった既存メディアに代わって、今はインターネットが台頭してきている。そうした状況においても、こうしたニュースがほとんど知られていないという現実には驚かされる。
この手の「主人公の心境の変化」を描く映画はスター・ウォーズのアナキンを代表として決して珍しくないが、2時間の映画などでは「えーーー?なんで???」と不思議に思ってしまうものが少なくない。そうした中で、この映画の主人公の心の変遷は非常に見事に描かれていて、どこにも違和感がなかった。ラストの仕上げ方もなかなかに見事で、見終わったあとの印象が非常に良い。
映像的に言うと、モノクロを含むフラッシュバックや細かいカットを多用する演出は好みがわかれるところ。個人的にはあまり好きではないし、それが効果を物凄く上げているとも思えなかった。ただ、それ以外はなかなか良くできていて、最後までほとんど中だるみなく一気に見せてくれる。「スリラー」といった分類とはちょっと違うと思うのだが、楽しめた。もうちょっとあちこちの映画館で上映すれば良いのに、と思うのだが、このあたりにもどこかから圧力がかかっているのだろうか。
評価は☆3つ。