NYLON100℃のケラの別ブランド「KERA・MAP」の新作、「あれから」を観て来た。
「あれから」
すれ違いが増えてきてギクシャクしている2組の夫婦が元さやに戻るまでを、いくつかのエピソードを交えて描いた2時間45分(15分休憩別)。
素晴らしく面白いストーリーが展開されるというわけでもないのだが、先のことしか考えてない若者達と、昔を振り返って思い出の中に生きることが徐々に増えてきた中年とを上手に絡み合わせて、まとまりの良い話に仕上げている。凄いどんでん返しがあるとか、色々考えさせるとか、そういう種類のものではなく、大人が観て、自分の人生と対照して、「あるある」とか思ってクスリと笑うような、大人のための大人の芝居という感じ。
なぜか小学生の女の子が観客席にいたけれど、いくらなんでも理解不能だったと思う(笑)
脚本的にはまぁまぁ。年末の忙しいときに肩肘張らずにさらっと、それでいて時間的には3時間近くを過ごすという意味では良くできていると思う。あちこちに配置された演劇らしい笑いも良かったと思う。
渡辺いっけい、高橋克実といった個人的に見慣れている役者さんたちが上手なのはもちろんだけれど、「寺山修司の秘蔵っ子」といわれつつ、ふぞろいの林檎たち以降テレビでの活躍が目立ち、あまり舞台で観る機会のなかった高橋ひとみ、自由劇場や東京壱組で活躍しながらこれまた最近は舞台で観る機会が少なかった余貴美子など、実力派がしっかりと中心に立っていて、おかげで舞台に緩みがない。さらに脇に配置された若手達もきちんとした演技を見せてくれるおかげで、「これなら8500円でも文句ないな」という出来。
観終わって悩むわけでもなく、何か人生が変わるきっかけになるわけでもない。じゃぁ、何なの?といえば、「あぁ、こういう、品のない(しかし、ある意味では逆に非常に知的で品のある)笑いや、大人のストーリーが楽しめちゃうような年になってしまったのね」と気づかされる作品だった。
いわゆるアラフォーぐらいの人たちにお勧め(笑)。28日まで。当日券あり。世田谷パブリックシアター。