夜会ももう15回目なのかぁ。
一番最初の夜会のチケットは、まだチケットぴあがインターネット予約が出来なかった頃で、町田の小田急の駅のそばにあったグレーの公衆電話で電話をかけまくって取った記憶がある。あのころは、公衆電話にリセットボタンがあるものが少なくて、グレーの電話が貴重だったわけで。
僕はなんだかんだで第1回から欠かさず全部観ていたのだけれど、実は夜会VOL.12「ウィンター・ガーデン」だけは観てない。なぜなら、前年の再演だったから。夜会の価格はどんどん上がってしまい、さすがにちょっと手が出ない、というか、再演ならパス、ということだった。でも、そのあとはまたちゃんと見ているので、出席率はかなり高い部類。でも、内容は正確に覚えていないものが多い。
さて、今回の夜会は場所を青山劇場から赤坂に移しての一回目。今後はここでやるんだろうか。場所としては悪くない。良くもないけど(笑)。
さて、内容ですが、うーーーーん、結構難しい。山椒大夫をベースにしているようで、僕が覚えているシーンがいくつか現れていた。それは例えば姉が入水して履物がほとりに落ちていることとか、町の明かりを目指して逃げろ、と命じるところとか、逃げ込む先がお寺だっていうところとか、めくらのお母さんが藁で鳥を払っているところとか、そんなこんなである。劇の中で安寿と厨子王の固有名詞も出てきているので、モチーフが山椒大夫にあるのはほぼ間違いがない。
山椒大夫、確かに名作で、安寿と厨子王という名前は誰でも知っているが、では、その詳細は、というと覚えている人はそれほど多くはないかもしれない。僕が覚えている大まかなストーリーはこんな感じ。
九州に左遷させられてしまった父親を探しに歩いて旅をしている母と姉、妹が、その最中、新潟で人買いに騙される。母は佐渡に連れて行かれ、姉、弟は新潟で奴隷として扱われる。姉弟は逃げ出すチャンスを見計らいながら働き続け、あるとき、姉が犠牲になって弟を逃がす。逃げ出した弟は寺に逃げ込み、そこの坊さんに助けられ、やがて父に縁がある家に拾われる。弟はやがて偉くなり、父を探したものの、すでにこの世の人ではなく、続いて佐渡の母を捜す。あちらこちらを探していると田んぼで鳥を払っているめしいの女性を見つける。何か気になるところがあって近くによっていくと、「安寿恋しやなんちゃらかんちゃら、厨子王恋しやなんちゃらかんちゃら」と歌を歌っている。母であると確信した厨子王は安寿から授けられた仏像を母親に渡すと、母親の目が見えるようになる。
と、確かこんなストーリーだったと思うのだけれど、その場面場面をコラージュのように配置したような舞台だった。
さて、この舞台、こうしたストーリーを知っていてもかなり難解なものだった。観劇した人がこれ以上にきっちりとストーリーを覚えていることはあんまりないような気もするので(もちろん森鴎外の大ファンだというのなら話は別だけど)、せめて事前に「山椒大夫を読んでおくと良いですよ」ぐらいのアナウンスを出しておけば親切だったかな?と思わないでもない。かくいう僕も、大して長い話ではないので、事前に読み返しておけば良かったな、と思わないでもない。
セットは非常にお金がかかっていて、舞台の機能もきちんと活用していた。キャストもなかなかに歌唱力があって、贅沢な舞台だったことは間違いがない。
しかし、その一方で「歌でつないでいく物語」の難しさ(歌詞が聞き取りにくいところがあるとか)とか、細かい描写についての説明不足とか、いくつかの難点があることも間違いがない。そして、最も致命的なのが一人20000円という破格のチケット代である。簡単に「わかりにくかったから、もう一度観てみよう」などと思えないような価格設定で、正直コストパフォーマンス的にどうかと思うのである。
これが9000円の舞台なら文句は全くない。しかし、実際は倍以上。これだとコンサートツアーの方が良いなぁというのが正直な感想である。
でも、それでも全公演チケット完売というのであれば、文句を言うことではないのですがね。
評価は☆1つ半。