「良いものを提供していれば売れる」というのは典型的な間違い。良く、「良いものが売れるんじゃない、売れたものが良いものなんだ」とか言う人がいるけれど、その通り。視覚マーケティングなんかはそのあたりを鋭く突いているもので、「モノが良くたって、見た目が駄目なら駄目なのよ」ということ。それで、売れる、売れないという分水嶺は、売ろうとしているモノによって要素が異なっていて、視覚だけじゃなくて、他にも色々な要素が絡まってくる。飲食店の場合、それはたとえば立地。立地が悪ければ、流行るものも流行らない。
さて、前置き終了。今日は川越に住んでいる友達が「美味しいインドネシア料理があるから、食べに行こう」というので、食べてきた。僕の朝霞の家からは、川越は電車で17分。池袋より近い。でも、川越に出かけたのはこれが7度目(笑)。1回はとんかつ店「楽天」に出かけたとき。それから、パスポートの更新。ラーメンを食べに行ったのが3回(ただし、これは別のところに行く用事があっての通り道だったから)、会社の登記で出かけたのが1回。朝霞には10年以上住んでいるけれど、これはいくらなんでも少ない。朝の連ドラで有名にはなったけれど、楽天に行った時にちょこっと見た川越の街並みは別に普通で、わざわざ出かけるほどのこともないよなぁ、というのが正直なところ。そんな街にあるインドネシア料理だから、もちろん流行っているわけではない。この街で流行る可能性のある食べ物屋は、ラーメン、鰻、とんかつぐらいのものだ。それも、駐車場必須。街中は道が細く、しかも渋滞気味。コインパーキングがあまりなくて、駐車待ちの車がさらに渋滞を悪化させている。そもそも車で来るな、ということなんだろうけれど、その割りには飲食店が駅から遠かったりする。このインドネシア料理も、普通に歩くと駅から30分近いらしい。駐車場は一台分あるらしいのだけれど、土地鑑のない僕にはそれがどのあたりにあるのかはわからない。少なくとも、店の隣や店の前にあるわけではない。店はちょっと暗めで、インドネシアのビデオが流れている。
友達が勧めるままに鶏そばと焼きそばを頼み(本当は、楽天で使っている豚肉と同じ豚肉を使った豚丼を食べたかったのだけれど、それだとあんまりインドネシアっぽくないのでじっと我慢)、二人でシェアした。写真はこんな感じ。
食べながら、この繁盛していない店をどうやったら繁盛店に出来るのか、という話になった。実際のところ、焼きそばは非常に手間がかかっているし、食べてみても美味しい。僕が近所に住んでいたら、週に一度は食べてみようと思う。鶏そばはかなり東南アジアテイストなので、その意味では「インドネシア料理」のお店の正統。だが、ラーメンを求めている人にとってはどうなのかな。まず、鶏の旨みが少ない。要は、薄味。僕が無化調ラーメンを食べたときに感じる感想が非常に近い。ただ、東南アジア独特の香草などの風味付けがあるので、きちんと成立はしている。何が言いたいかと言えば、ラーメンを求めている人は、多分物足りないと感じるだろうということ。旨みが薄いので、必然的に脂も少なめ。逆に、これで脂を多くしたら味が一層ぼけてしまう。だから、脂のバランスはこれで問題がないはず。要は、「化学調味料を入れて味を調えたらどうでしょう?」ということなのだが、おそらくそれは店主のこだわりが許さないのだろう。ここはラーメン屋ではないのだから、そのこだわりは間違いではないと思う。少なくとも、ダイエットに気を配っている若い女性なら、かなり満足できる一品だと思う。麺は太めで歯ごたえはあるものの、沖縄系のラーメンにありがちなややぼそぼそした、ぶちっと切れてしまうタイプ。このあたりには太麺の優良ラーメン店があるので、そういう麺と比較するとやや見劣りがする。ただ、これも、あくまでもラーメン評論家の視点からの話。このスープにフィットするのはこの麺なのかもしれない。また、このあたりは好みの問題でもあるので、「まぁ、良いんじゃないでしょうか」と言ったところ。それから、デザートも食べてみたのだけれど、それは黒米のプリンという怪しげなもの。ほとんど食べたことがないものだったので「怪しげ」に感じてしまったけれど、実際に食べてみたらこれはこれでなかなか美味しい。タピオカにちょっとだけ食感が似ているけれど、やはり別物。東南アジアのデザートはどれもこれも侮れない。それほど甘すぎず、それほど香辛料が利いておらず、ココナッツミルクの風味と炭水化物系の甘みで、非常に日本人好み。というか、僕好み。
やきそばと黒米プリンのセット、これが恵比寿にあったら繁盛間違いなしである。しかし、実際は、13:30ぐらいに行って、先客が二人。僕達が食べている間に来たお客さんは皆無という状態。
ちょっとお店の人にも話を聞いてみたのだが、このあたりは街の中心街からはちょっと離れてしまっているとのこと。近所には川越大師喜多院などの名所もあるらしいのだけれど、このあたりのお寺に来るお客さんたちは隣にある鰻の超有名店「川越いちのや」に行ってしまうらしい(笑)。まぁ、逆に言えば、お客さんに「どこにあるんですか?」と聞かれたら、「いちのやの隣です」と言えば良いので、わかりやすいといえばわかりやすいのだけれど。
まぁ、正直なところ、視覚マーケティングのウジさんに色々アドバイスしてもらったらどうだろう、という感じの、店の外見自体のイケテなさもあるし、店内も、たとえばメニュー一つとっても、写真がなくて、どんな料理なんだかわからないとか、色々な難点がある。まぁ、そんな感じで、人通りがあまりなくて、フラッと入ってみたくなる感じではないし、入っても、料理が出てくるまではちょっと不安になるような状態だ。
加えて、アスクユーとか、食べログとかでもほとんどレビューがない。つまり、情報がほとんど存在しないのである。ネットの情報もなく、見た目もイマイチ、さらに人通りが少ないという状態。
川越という街の特性もある。都内から電車に乗って40分。しかも、街は「小江戸」というぐらいだから、和風なところ。浜っ子の僕からすると類似イメージは鎌倉なんだけれど、鎌倉に比べると緑も少なく、海もない。まぁ、客層は同じかも知れないのだけれど、鎌倉が有名イタリアンがひしめき合っている状態に比較すると、食の部分ではかなり和な感じである。そこへもってきて「インドネシア」である。20年ぐらい前だと、タイ料理がちらほら、マレーシア料理は渋谷にオンリーマレーシアという店が一軒、みたいな状態だったけれど、最近はすっかりメジャーになってきて、タイ料理なら都内ならいくらでも見つかるという状態。インドネシア料理もものすごく珍しいというわけでもなく、たとえば僕も去年のクリスマスイブにロクヒルで「バリ カフェ プトゥリ」という店で軽食を食べたりしている。
そんな感じで希少価値もなくなり、中華ほどではないにしてもすっかり東京に溶け込みつつある東南アジア料理なわけだが、東南アジア料理の特性って、何?ってことになるのだけれど、やはり安くてヘルシーで辛くて美味しい、みたいな感じであって、それを目的にわざわざ川越くんだりまで出かける、という感じでもない。正直、僕はラーメンや寿司や鰻やとんかつやフレンチやイタリアンなら遠出しても、インドネシア料理では(田舎方面へは)遠出をしない。「あー、目黒とか、新宿あたりに何かあるんじゃない?」とか考えてしまう。そして、これは僕だけの感覚ではないと思う。
結局「まぁ、場所が悪いよね」ということで片付けてしまうところなのだけれど、店を出て、ちょっと街中をぶらぶらしてみたら、結構若い観光客のお姉さん達がいるのである。何が珍しいのかわからないのだけれど(笑)、どうということのない街並みの写真を撮って喜んでいる。なので、僕が言いたいのは、「折角ここまで来たのなら、まぁ、鰻でも良いかも知れないですね。でも、鰻なら、名店があちこちにあるし、結構高いですよ。ちょこっとランチで立ち寄るなら、少し怪しげでハードルが高いけれど、知る人ぞ知る、本場のインドネシア料理を食べてみてはどうですか?」ということ。いや、「これは滅茶苦茶旨いっ!!!」っていうことじゃないんだけどね。もっと、日常的なものだから、東南アジア料理って。へぇー、ちょっと良くない?って感じ。
インドネシア生まれの日本人がお母さんと苦労しながらやっているお店、しかも味がしっかりしているのだから、場所が悪くても、見た目が悪くても、マーケ的にイマイチでも、このブログぐらいは応援したいと思う。さぁ、みんな、川越にいくならじゃらんじゃらんへゴー!あ、川越の皆さんも、近所に良い店あるんだから、行かないと損ですよ。
じゃらんじゃらんに言及しているブログ
↓実際に食べた人
小江戸川越七福神巡り
↓気になっている人
川越・蓮馨寺の桜 「ちいさな旅〜お散歩・日帰り・ちょっと1泊(100218)」
↓怪しいのでスルーした人(笑)
川越散策
店名 じゃらんじゃらん (Jalan jalan)
ジャンル インドネシア料理
TEL 049-223-4102
住所 埼玉県川越市松江町1-18-6
営業時間 12:00〜23:00(L.O.21:00)
定休日 毎月26日〜月末まで(仕入・農業手伝いの為)