1900年前後のコロンビアを舞台にした50年以上にわたる一組の男女の恋愛を描いた作品。と書くと凄く普通だけれど、実際はかなり普通じゃない関係が描かれている。何しろ、最初こそ二人はお互いに運命の人と感じたのだけれど、上流階級へのステップアップを狙う彼女の父親に仲を引き裂かれ(良くある話)、距離をおかされている間に彼女が「一時の気の迷いだった」と考えてしまい(良くある話)、相思相愛の関係から片思いの関係に変化してしまう(良くある話)。そして、それから50年以上、男性はずっと片思いを続けることになる(滅多にない話)。その間、女性は医者と結婚し、子供をもうけ、普通に老いていく。そして、男性は、女性の結婚相手が老衰で死ぬことを待ち続けるのだ。これを称して純愛というのかどうかはやや疑問が残る。しかしまぁ、そんなこともあっても不思議ではないのかも知れない。主人公の男性、時代が時代ならマザコンでストーカーでちょっとアブナイ感じの人なんだけれど、時代や場所の設定によってそれがあんまり気にならないというか、「昔はこうだったのかなぁ」などと思わされてしまう部分がないこともない。そこのハードルさえクリアしてしまうと、画面で展開されるエピソードは思わず笑ってしまうようなことが多い。おいおい、それはないんじゃないの(笑)、みたいな。例えば、「手紙には愛が必要だ」とか真剣に考えているので、ビジネスレターにまで愛を盛り込んでしまう。例えば
「あぁ、ジョブスさま、私はあなたの姿が目に焼きついてしまい、一時たりとも忘れることができません。この苦しみから自分を解放する手段として、iPhoneの日本における独占的販売権利を購入させていただきたいと思うのです」
などと書いてしまうような。まぁ、このシーンは誰が観ても笑っちゃうところだと思うけれど、こんなエピソードがてんこ盛り。なので、観ていて飽きない。
あと、別にこの主人公は座して旦那の死を待っていたわけではなく、きちんと仕事を見つけてきて、彼なりに努力をし、そして名の通った会社の社長にまでなってしまう。「お金がないから相手の親に反対された」と考え、きちんとそのハードルをクリアしてしまうあたり、一念岩をも徹すって奴だ。
こうやって書いてあると、読んだ人は「なんてけなげで純粋で可哀想な男性なんだろう」と思うかも知れず、実際にそうなのかも知れないのだけれど、この主人公がさらにネジが飛んでいるのは、運命の女性を追い続けている間、他の身のまわりの女性たちとやってやってやりまくってしまうところ。でも、それはほとんどのケースで自分から求めているのではなく、女性の方から求められたり、自然にそうなってしまうのだから仕方がないというスタンスなのだ。彼にとってこれは単なる生活習慣に過ぎない。このあたりについては日本の現在の一般的な慣習とはかけ離れたところがあって、受け入れられない人も多いんじゃないかな、と思う。「これって、ジェームス三木みたいじゃん」って感じで。
だから、万人受けする映画じゃない。特に、若い女性とかだと、眉をひそめちゃうんじゃないかと思う。でもまぁ、おじさん、おばさんなら、結構楽しめるんじゃないかなぁ。おじさんである僕はそこそこ楽しめた。