2010年04月05日

ソラニン

e8f9820e.jpg原作未読、ただし中盤の「転」だけは何が起こるのかを知っていての鑑賞。

彩度を落とした映像、抑揚のないストーリー、寒いネタに対して登場人物が突っ込むなど、日本映画のお約束をしっかり踏襲している本作だけれど、そういう映画に慣れている僕には結構イケていた。

ダメダメな若者に共感する年齢ではないけれど、「あぁ、そうやって、何かができると勘違いしていて、でも、自分は普通の人間なんだ、ただメシを食って、ウンコして、そうやって年を取っていって、やがてどこの誰とも知れずに名もないひとりの人間として死んじゃうんだな」という現実に向き合わざるを得ない人生のある時期というのは人間の99%以上に間違いなく存在して、それをきちんと映像化しているところに好感を持った。我々の世代も学生といえばあんな感じで、でも、それでも普通に仕事はあったし、それで就職したたくさんの人間が既得権の上に居座って偉そうに若い人達に説教しているのはいかがなものかと思うけれど、そのあたりが日本の社会構造の大きな欠陥であって(そんなことを撮る側は全然意識していないと思うのだけれど)、観ていて、「あぁ、こいつら、可哀想にな、こんな閉塞感満点の世の中に生まれちゃってさ」などと思いながら観ていた。

宮崎あおいさんは「篤姫」とか、どこかの保険会社のCMとかよりもよっぽど魅力的。歌のウマさはイマイチだけれど、もともと素人っていう設定だからこんなものでしょう(あるいはあんまり上手じゃないように見せる凝った演出だったのかも知れないけれど)。以前から蒼井優、沢尻エリカ、宮崎あおいの3人は堀北真希、綾瀬はるか、柴咲コウ、長澤まさみといったところに比較して格段に役に恵まれていると書いているのだけれど、本作も良い役で良い演出。ちょっと前に観た堀北真希の誰かが私にキスをしたなんかに比べると雲泥の差で、本当に堀北真希が気の毒になってくる。いや、じゃぁ、この役を堀北真希さんができたかと言われればそれは疑問で、宮崎あおいの実力ということなんだろうけれど。とにかく、彼女の魅力は存分に発揮されていたと思う(さすが人妻)。

ライブシーンとかも意外にそれなり。ラストのライブでは肝心のところでいきなり思い出シーンが挿入されちゃって「えええーーーーー」と椅子からズッコケ落ちそうになったけれど、無事回復(いや、でもあれはないでしょ。一番の見せ場を自分で穢してどうする。あそこは是非ストレートに見せて欲しかった)。強弱がなくてただただマイクに怒鳴りつけるように歌う姿が、逆になんかそれっぽい。もちろんこれは故意の演出だと思うのだけれど、秀逸。思い出シーンの挿入がなかったらもっと良かったと思う。

宮崎あおいさん以外の役者も、演技が自然で、日本映画では珍しく「あぁ、こいつは大根」という人がほとんどいなかった(それでも数名いたけれど、ほとんど気にならない)。

「ちゃんと伝える」でも好演が光った伊藤歩さんが本作でも結構良い感じ。というか、個人的に彼女が好みなんだろうな(笑)。

風船が飛んでいくところはちょっと前にもあった記憶があるのだけれど(ディア・ドクターだったかなぁ?)、あの手の風船はヘリウムガスが簡単に抜けてしまうので、あんなパンパンな状態でひっかかっていることはないと思う。いや、細かい話だけれど。

ちなみに自分もギターを弾くけれど、音楽に対する最初の体験が、横浜にある高校の学園祭で聴いたコンサート。演奏されたのはさだまさしの「前夜」(笑)。ということで、バンドじゃなくてアコースティックギターの方へ行ってしまった。なので、こういうバンドの楽しさというのは未体験。でも、やったら楽しそう。音楽って、良いよね。ということで、20万円近くしたのに全然弾いてないギターをたまには弾こうかな、という気になった今日。

あ、原作も今度読んでみようと思う。

一応、ソラニンの歌詞はこんな感じ。

作詞 浅野いにお
思い違いは空のかなた
さよならだけの人生か
ほんの少しの未来は見えたのに
さよならなんだ

あの時こうしてれば あの日に戻れれば
あの頃の僕にはもう 戻れないよ

昔住んでた小さな部屋は今は他人が住んでんだ
君に言われたひどい言葉も無駄な気がした毎日も
寒い冬の冷えた缶コーヒーと
虹色の長いマフラーと
小走りで路地裏を抜けて
思い出してみる

たとえばゆるい幸せがだらっと続いたとする
きっと悪い種が芽を出して
もうさよならなんだ

さよなら それもいいさ
どこかで 元気でやれよ
僕もどーにかやるさ
そうするよ


評価は☆2つのところ、女優さん二人に半分おまけして2つ半。