とにかく助け合うことを是とする農耕民族、かつ、都合の良い時に都合の良い神様を引っ張り出してくる基本的に無宗教の日本人にはなかなか受け入れられそうにない作品。
新聞の有名コラムニストと少年時代に天才と称された元チェリストの交流を描いた物語だけれど、なかなか一筋縄ではいかない。
ふとした拍子にホームレスのバイオリン弾きナサニエルと知り合ったロペスは、彼のルーツをたどって、彼がなぜホームレスになったのかを記事にする。その記事を読んだ読者からの好意によってナサニエルには様々な援助が与えられるのだが、ナサニエルはそれを全くありがたがらない。彼には彼の信仰があって、神がいて、そして彼は一般人から見たら全く恵まれていない生活、環境に満足していた。
この映画ではナサニエルの統合失調症をかなり印象的に描いているのだけれど、その部分はそれほど重要ではなく、人には人それぞれの正義と幸福がある、というだけのこと。ロペスにとっての幸せと不幸、ナサニエルにとっての幸せと不幸を効果的に対照しつつ、物語は進んで行く。
人の価値観はそれぞれであるというのがメイン。横糸に音楽を配して、アメリカ・ロサンジェルスの今を描いている。
アメリカ人は自分たちの正義を中東に無理やり押し付けたりする一方でこういう映画を撮るのがちょっと不思議。
ラストの第九第三楽章を含め、音楽が非常に重要な役割を果たしている。この映画は映画館で観るべき映画だった。
評価は☆2つ半。