このミス09の第4位だったか。本の最後を見ると最初の3章が「小説推理」で約半年間かけての連載。残りの半分が書き下ろし。そうやってみてみると、第1章はこれだけで完結していても不思議のない内容なので、もしかしたら最初は続きを書くつもりはなかったのかも知れない。
第1章ではRNAの専門家というか、分子生物学を多少でもかじっている人間なら「あれ?」っと思う突っ込みどころがあるのだけれど、それが後半の書き下ろし部分でフォローされているあたり、「あぁ、読者から突っ込まれて勉強したのかな(笑)?」と思わされたりもする。
最初からこういう構成にすることを意図していたのかどうかは不明だけれど、2章以後の構成は見事で、徐々に少年Aや少年Bの実像が見えてくるところが上手。そして、これまでにも何度か利用されてきた、「悪女について」のスタイルで、少しずつ話の全体像が見えてくる。登場人物こそ少ないのだけれど、ひとつの人間関係を双方のスタンスから描き、そこに発生しているミスマッチを物凄くデフォルメして表現するその手法が良い。また、その書き方も、全てインタビューとかに揃えるのではなく、色々な形で変化させているのも面白い。文章力もそこそこだと思うけれど、それ以上に全体の組み立て方に感心させられる。
ちょっと携帯文化的な表現があって、そこは個人的にはあまり好きになれないけれど、その点を除けば完成度の高い小説だと思う。
それはそうと、出てくる男、出てくる男、みんなマザコンっぽいのは作者が女性だからかなぁ?
何しろ、何か道徳的なことを伝えようとか、そういう本ではなく、ホラー映画的な要素が強い作品。読み手をかなり選ぶと思う。僕は別に嫌いじゃないけれど。「なるほどね」という感じで。
みんなが「後味が悪い」と口を揃えるのでなかなか読む機会がなかったけれど、読んでみたら評価は☆2つ半といったところ。このミス4位も納得。