「アニメじゃない」の主題歌ばかりが印象的で、内容は全然知らなかったこのシリーズも、全部通して見てみた。途中で物凄い方針変換があって、こりゃ大変、という感じが強い。
最初の15話程度はすっかりコメディ調。Zガンダムが鬱々とした内容だったので、大きく方向転換したのだろうか。Zガンダムでは狂気のキャラだったはずのあのヤザンですら、3枚目として活躍する。このあたりが物凄い落差である。なにしろ、アクシズ(ネオ・ジオン)のキャラたちはどいつもこいつも濃いキャラで、「アクシズの人たちって、ハマーン以外は変な人ばかりじゃん」という感じ。
物語の大きな軸は、ハマーン率いるネオ・ジオンとエゥーゴの戦い。前作ではティターンズとエゥーゴ、カラバ、そこにアクシズが絡むという非常に複雑な構図だったけれど、本作ではそれが随分と単純化されている。TVシリーズでやっている限りではこれが正解だろう。一週間に一話しか進まない状況では、あまりに複雑だと何が何だかわからなくなる。まぁ、TSUTAYAで旧作100円の時にまとめて借りてくるなら全然問題ないんだけれど。Zガンダムでは最初の方でシャアが言及し、実物が登場するのは物語中盤以降だったハマーンが、このZZでは中心的な役割となり、究極的にはジュドーとハマーンの物語となっている。
前半、大活躍するのはマシュマー・セロ。どうしてこの男が偉くなったんだ、アクシズはろくでもない軍人しかいないのか、と思わされるけれど、結構憎めない。こんなガンダムはガンダムじゃない、という気もするが、こういうものだと思えば楽しめることも間違いない。戦闘を通じてずっとコメディをやっている。
ところが、中盤からはシリアス路線になると同時にロリコンアニメのようになってしまった感もある。出てくる操縦士は女性、しかも子供が中心。もともとこのZZでは子供の活躍というのが前面に出されているものだったが、それなら男児も活躍しても良い所、なぜか女の子ばかりが登場する。制作サイドの趣味だろうか。
終盤では、前半でコメディの主軸を成したマシュマーはすっかりシリアス・キャラに改造され、キャラ・スーンも強化人間として再登場した。残念ながら(?)序盤で見ることができたおかしなやりとりはすっかりと影を潜め、真面目に戦闘をしていて全然マシュマーっぽくない。強化人間、恐るべし。
子供たちだけでネイル・アーガマを運用するようになる辺りではちょっと現実味が失われてしまった(いや、この手のアニメで現実味云々を言うのは、それはそれで変な話だけれど)。
戦闘シーンはZガンダム同様、ビーム戦が主流で動きも速い。Zとの違いは、Zガンダムが変形モビルスーツだったのに対して、ZZは合体変形モビルスーツだということ。物語を通じて何度も変形シーンを見たけれど、結局何がどうなっているのかは良くわからなかった。プラモデルを買え、ということなんだと思うけれど、こんな複雑な合体・変形を戦闘中に行うのはいかがなものかと思わないでもない。Zガンダムではすっかり敵味方入り混じってしまったモビルスーツだが、本作ではネオ・ジオンのモビルスーツが軒並みモノアイになったので、ちょっと分かりやすくなった。中にはクィン・マンサのような例外もあるけれど。ところでクィン・マンサの顔はガンダムタイプ。そういえばいつの間にかサイコ・ガンダムがティターンズからネオ・ジオンに移管されていて、プルツーの搭乗機になっている。どこかでかっぱらったのかな?
ラスト近くになってグレミーが反乱を起こし、それによってようやくハマーンのやりたいことがわかってくるのだが、ストーリーはそのまま終結へ。さびしんぼうのハマーンがちょっと可哀想。
ZZも面白いけれど、Zに比べるとやや深みがないのも事実。しかし、この作品の価値はそれだけではない。Zで悲劇的な状態となったカミーユに対する救済。これによって、Zガンダムは救われたと思う。Zでファーストの人物たちが再登場したことによって、ファーストの物語に深みが出たのと同様、ZZのおかげでZの価値も増加した。新しい存在としてのニュータイプの苦悩や悲しみを演じた登場人物はララァ、アムロ、ハマーンと色々いたけれど、やはり中心にいたのはカミーユなのだから。そうした部分も評価して、シリーズ全体では☆2つ。