2010年08月09日

インセプション

物事をこ難しく作って、難解に見せて、その実あんまり大したことはやってないので、先に進むにつれて論理的ではなく、感覚的に理解していくことができる。そんな作りって、芝居には良くある。小説でも珍しくない。でも、映画ではあんまり記憶にない。それはやっぱり、映画に含まれる情報の量が多いからで、物事を複雑に見せることが難しいからなんだと思う。例えば、京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」とか、小説なら成立しても、映画で表現するのは凄く難しいし、同じように殊能将之さんの「ハサミ男」とかも映画にするのは難しい。というか、両方共失敗していた。

映画「姑獲鳥の夏」のレビュー
http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/50015613.html

映画「ハサミ男」のレビュー
http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/18183202.html

それで、この作品はというと、特撮をフル活用して、簡単っぽいことを物凄く難しいことのように説明して、煙に巻くような感じ。だから、最後まで観るとなんとなくスッキリして、「面白かった!」と感じるのかも知れない。でも、どうなんだろう。難しく観せすぎのような気がする。「混乱させてやろう」という意図が強すぎるような。

最近だと、マトリックスの一作目とかが似たような雰囲気。マトリックスは二作目、三作目で謎解きをほぼ完全にやってしまい、三部作が完結してみると、「あぁ、なるほどね」ということになるわけだが、この作品も続編が出来てくると色々と起きてくるのかも?

大体、設計士とか、大層な感じで出てきたものの、何をやったのか良く分からないし。渡辺謙の役どころも意味不明。そんなことやって、そいつがすげぇ能力発揮したら、お前の会社はライバルが二倍だぞ、みたいな感じだし。そして、最もいただけないのはデカプリオ演じる主役が、一体どういうところに傑出しているのかがさっぱり分からないことだ。抜群に寝付きがいいのかな?そういうこと?それで、どのあたりがスーパーなのか良く分からない一方で、物凄く大きな弱点を抱えているわけで、おかげでみんなピンチの連続って、みんなマゾですか?

あと、どうせ夢の世界なんだから、もっと武器とか派手にガンガンやれば良いと思う。もちろん、夢と気がつかれない範囲で、だけれど。

加えて、この映画で気になったのは音楽。全編通じて物凄く派手な音楽が鳴りっぱなし。おかげで音に対して食傷気味になっちゃった。米国の映画は日本の映画に比較して音楽の量が多いけれど、この映画は特に気になった。おかげで本当の夢の中に入っていかずに済んだんだけれど。

夢の中で戦う、というコンセプトは凄く面白いんだけれど、そこに惚れすぎた感じで、他の部分がかなりおろそかになっちゃっていたと思う。評価は☆1つ半。長い映画で、眠気が吹っ飛ぶのは最後の15分ぐらいだけ、というのがちょっと辛かった。