
この手のバンドものとしてはつい最近も「ソラニン」があったわけだけれど、同じように漫画原作でも、観終わった印象は随分と違う。それはソラニンが「神田川」の現代版みたいな貧乏な男女の恋愛を描いたものだったのに対して、この映画はスポコンモノみたいな仕上がりだったからだ。スポコン的音楽ものとしてはこれまた漫画原作のデトロイトメタルシティがあるのだけれど、あれともまたちょっと違うテースト。いじめられっ子が頑張る、みたいなのはこれまたつい最近のベスト・キッドみたいでもあり(でも、原作はこの間のベスト・キッドよりも古く、でもでも、この間のベスト・キッドはリメイクであって、オリジナルはBECKの原作漫画よりもさらに古いのだけれど)、何か新しいものがあるという感じではない。
それにしても、2000年代って音楽ものの漫画が大流行だったんだね。
ルシールというギターの設定はあまりにも漫画的だし、レオン・サイクスが日本においても米国ギャングばりに振舞うのも何か違和感がある。ライバルのビジュアル系がつんくみたいだったり、敵役プロデューサーの中村獅童がこれまたステレオタイプの嫌なやつだったり、そのあたりの脚本の作りがなんとも漫画チック。原作が漫画なのだから当たり前か(^^;
一番の笑いどころは松下由樹が「こんなに変わっちゃって」と感慨深く語るところ。それは僕もそう思うよ。随分貫禄がついたねぇ、松下由樹さんも。すっかり松坂慶子さんみたいになって。でもまぁ、メリル・ストリープだって、今はね・・・・・。
で、映画ですよ。こういった音楽ものは、演奏シーンをどう仕上げるかがひとつの注目点。ヘタはヘタなりに役者にやってみさせるのか、吹き替えを使うのか。この作品ではコユキの歌唱力というのがひとつの注目点だったわけだけれど、ここは巧妙にごまかしていた。ごまかしていたけれど、これは逃げだよね。「ウォーク・ザ・ライン」のホアキン・フェニックスやリース・ウィザースプーンは全部自分で歌っていたじゃん。こういう見せ方も確かにありだとは思うけれど、こうやって逃げてしまったところで「なぁんだ、イケメンのアイドルを使っただけの音楽映画か」ってことになっちゃう。佐藤健の他の演技がなかなか良かっただけに、非常にもったいない。バンドメンバーで良い味を出していたのは向井理。この映画での設定年齢と、彼の実年齢って10歳ぐらい差がありそうだけれど、そんなのをすっ飛ばしてクールでカッコいい大人のベーシストを演じていたと思う。
あと、良かったのは、忽那汐里。なんでオーストラリア英語をしゃべるんだろうって思ったら、オーストラリアからの帰国子女なんだね。その特技を上手に生かしていたと思うし、こういう、堀北真希的な、ちょっと顔のパーツが中央に寄った感じの顔が好きなので、その点で楽しめた。でも、兄貴はなぜか普通の英語を喋っていて変だったけれど、と思ってウィキペディアを見たら、水嶋ヒロも帰国子女なのか。しかもスイス。そのあと桐蔭学園入学って、じゃぁ、織田裕二とデーモン小暮閣下の後輩ですか。なるほど。ってどうでも良いけど。
ということで、いわゆる青春ものとしては、結構楽しめるできだと思う。色々と詰め込まれてはいたけれど、2時間20分程度のやや長めの尺にできたのも良かったと思う。普通、テレビ局が背後につくと2時間で収めようとか、2時間23分に収めようとか(ともにCMを含んで)考えてしまいそうなものだけれど、この映画はそこんところ、プロデュースする人が頑張ったみたい。えらい。
松下由樹の貫禄に☆ひとつ減、忽那汐里の可愛さに☆ひとつ増、ボーカルの処理の方法で☆ひとつ減、トータルでは☆1つ半。