
冒頭のシークエンス、飛行機の中でのシーンを含め、「ロシアより愛をこめて」や、「レイダース失われたアーク」あたりで使われた「パートナーが寝ている間に凄腕の主人公が大活躍」とか、「おとぼけがパートナーが見てないうちに」とか、「ピンチ!さぁ、どうなるんだ」っていうところから何ごともなかったように脱出後のシーンになっているとかが繰り返されるのだけれど、既視感こそあるものの、一つ一つのシーンが楽しい。寝ている間に世界をぐるぐる回っていて、どんだけその睡眠薬は強力なんだ、という気もするし、そのくせ、途中で眠りが浅くなるご都合主義も、こういうお馬鹿映画だと許せる。
こういう良いもん、悪いもんがはっきりしないままにストーリーを引っ張るスパイものとしてはつい最近公開された「ソルト」があるけれど、観終わったときの印象は全く違う。それはなぜかって、一にも、二にも、トムとキャメロンの会話の出来が良いからだと思う。アクションシーンをメインディッシュにした作品なのかも知れないけれど、実際に楽しいのは二人の会話の方。そして、そのとんちんかんな会話が非常に楽しいのだ。アクションがおまけになっているラブコメディ、いい意味でのお馬鹿映画だった。自白剤を飲まされてのシーンとか、爆笑。「ソルト」に比べたら断然こちらの方が面白い。加えて、アクションも手抜きがない。満載、という感じじゃなくて、適度に散りばめられているのも良い。「ソルト」みたいにひっきりなしだとタイトすぎて疲れてしまう。
トムの役どころが「俺って、カッコいいからさ」という、ちょっとヤバげでKYな感じのリアルなトムに重なっているのが良い。普通の役をやってしまうと、「でも、トムだから」ってなってしまうのだけれど、「地でやっているだけ」という感じなので、ぴったりのはまり役。まともな役をやらせるとからっきしダメだけど、バカ女の役をやらせるとそこそこにハマる広末涼子みたいな感じがある。っていうか、それを言うなら広末涼子が和製トム・クルーズなのか。
会話劇になっているので、字幕も大事。トム・クルーズの映画では珍しく松浦美奈さんが字幕だったのも大きい。本当にこの人の字幕は良いよね。
今年観たアクション映画、コメディ映画では一番の出来だと思う。評価は☆3つ。
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