僕は「どんな映画が好きですか?」と聞かれると、「映画館で観たら素晴らしさがわかる映画」と答えている。僕の家のビデオ鑑賞ルームはスピーカー8本とAVアンプによって構成されている、そこそこの環境だけれど、あたりまえだけれど映画館の音響システムには全くかなわない。だから、ミュージカルやサラウンド感が重要な映画は、なるべく映画館で観るようにしている。そして、この映画は、充実した鑑賞環境を整えた人でない限り、映画館で観なくては意味のない映画のひとつである。それくらいに音が重要な役割を果たしている。
ストーリーは、全く大したものではない。田舎から都会にやってきた女の子が、なんとか頑張って、恋をして、恋のライバルが現れて、仕事にもライバルが現れて、取り巻く環境にも大きな問題が発生し、さぁ、どうする、みたいな、超超超超ありがちなもの。その、広げた風呂敷のたたみ方もしごくありきたり。おまけに伏線が字幕でわざとらしく書かれちゃうので、冒頭からネタバレみたいなもの(笑)。なんだよ、これ、既視感バリバリじゃん、という感じなのだけれど、平凡なそこら辺の100本の映画との違いは、中心になる二人の女優の歌唱力。僕には滅多にないことだけど、2回も鳥肌が立っちゃった。ああいう、ぞわぞわした感じを、映画の中の歌のシーンで経験する機会はほとんどと言って良いほど、ない。それ程に、圧倒的なパワーだったと思う。
本当にもう見所は歌とダンスだけ。だから、それしか求めないなら、評価は満点でも不思議じゃない。でも、細かいところを言い出したらどうなんだろう。脚本は相当に甘いし、設定も携帯電話がなければ20年前が舞台でも不思議じゃないような古臭さがある。あと、恋愛話が超退屈。つまり、この映画を数式で表すとこんな感じ。
(フラッシュダンス+トップガン)/4+アギレラ
他に何か気のきいたことを書きたいな、と思うのだけれど、書けない。だって、本当に、アギレラとシェールの歌だけの映画なんだもの。評価は難しいけれど、映画としての評価は☆ゼロ。そこにアギレラ(☆1つ)とシェールの歌(☆1つ)で、合計☆2つ。そして、映画を観たいなら映画館絶対推奨。それでも家で、ということなら、DVDじゃなくてサントラ推奨(多分)。歌とダンスが好きな女性には受けそうだし、そういう女性は凄く多そうだから、デートには良いかも。どんなにストーリーが退屈でも、音が大きいから眠くなる心配はない。ちなみに、僕は映画館でひとりで観た。ひとりで観に行ったのはもちろんだけれど、客は僕だけだった(笑)。