ちょっとモヤモヤがあったので、仕事を夜中にやってしまって無理やり時間を作り、もう一度観てきた。その前に原作(?)も読んでおいた。
さて、二度目。さすがに一度観ているから全体の流れがわかっているし、登場人物も主要な人たちは全部わかっている。「後日」のシーンで顔を隠していても、それが誰だかわかる。ということで、すっきり、さっぱり。
その上で評価してみると、やはりこの芝居の一番のポイントは殺陣。役者の体の切れ。このあたりを重視して役者を決めているんだと思う。二番目のポイントは津軽三味線を前面に出した音楽。そして多分、三番目のポイントは主役の矢島舞美さんの可愛さなんだろう。確かに可愛いし、体も切れるんだけど、演技と声量がイマイチで、僕にはちょっとピンと来なかった。ついでにいうと、主演男優も同じ。ただ、声量がないといっても座席後方(今日は11だったか、12列で鑑賞)まで届かないわけではなく、芝居を壊してしまうようなものではない。好みの部分が大きいかも知れない。役者の好みを言えば、石影、カブトと、もちろん月影。芝居慣れしていて客をいじれる元村長も良い感じでアクセントになっていた。この人がいれば日本語版総統閣下シリーズが作れそうだ。
一方で、マイナスポイント。大きなマイナスポイントって見当たらないけれど、細かいところはポツポツある。
まず、いくつか時間が前後に動くのだけれど、そのうちの一部に必然性が感じられず、単に分かりにくくしているだけの印象がある。もうちょっと効果的なやり方があったかも知れない。
それから、オープニング。一度目に観たときは誰の出産シーンなのかさっぱりわからなかったのだけれど(笑)、今回はさすがにわかった。わかったのは良いのだが、それが冒頭に来る必然性はわからなかった。というか、なくても良いシーンとすら思ってしまった。やはり、芝居は主人公のセリフで始まって欲しい。普通に子供時代のシーンで始まるんじゃだめだったのだろうか。あ、ラストも。最後も主人公のセリフで終わって欲しい。それも、凄くカッコイイセリフで。例えば「少年はいつも動かない。世界ばかりが沈んでいくんだ」。そして暗転。僕にとっての演劇はこれなんだよなぁ(笑)。
また、登場人物の紹介パートで無関係の人物が大量に配置されていて、これが観客に不親切だったと思う。どこを観たら良いのか、わからない(笑)。そのおかげで、最初に観たときは誰が誰なのか、良くわからなくなってしまった。
最後に、現代っ子っぽい言い回しが再三出てくる(「はぁ?」「は?」「ってゆーか」を連発)。これが、おじさんの耳には凄く耳障りだった(笑)。僕は美しい日本語が好きなので、「ってゆーかぁ」みたいなのはかなり気になってしまう。
あぁ、もうひとつ。改めて月影中心に(笑)観てみると、最初から最後まで、月影はほとんど笑わない。段差の上で兄の石影が活躍しているのを見ているシーンと、あとはカーテンコールのときだけ(笑)。あとはずーーーっと眉間にしわが寄っている。そういう役どころだから仕方ないけれど、月影を観に行った人間としてはこれがちょっと残念だったりする。ただ、今日も花道のすぐ横だったのだけれど、冒頭のシーンで僕のすぐ横に月影が立ったので、「おお、右足にテーピングしている!!アキレス腱に張りがあるのか?」みたいなのをチェックできて少し得をした気分だった。
初日に比べると、随分と熟成した感じがする。この熟成要因のひとつは多分「演技力がちょっと下の人達がこなれてきて、レベルが均一になってきた」ということ。90点の人を95点にするのは難しいが、70点を90点にするのは比較的容易だ。本番を重ねることによって、そうやってちょっと下の方にいた人たちが、レベルアップしてきたんじゃないだろうか。あと、酔っ払った赤谷達のシーンとか、いくつか細かく手を加えているような。良くはわからないけれど。今日のソワレを含めて残り5公演。作り手たちが常に向上心を持っているので、少しずつ良いものにしていけるんじゃないか。と言っているうちに楽日になるんだけどね(笑)。
役者の体のキレを前面に押し出して、花道のある難しい舞台を走りまわって迫力を出しているのが印象的。今日は月影へのおまけなしで、評価は☆2つ半(満点は☆3つ)。やや荒削りではあるけれど、基本的なところをしっかりと押さえつつ、勢い良く見せていて、しかも生の声で頑張っている。なかなか良い舞台だったと思う。
#ところで、初日にピンタ3発もやってたっけ?あと、月影が三影を切るとき、刀背打ちじゃなかった(笑)。
#個人的には杉本有美という可愛い子を見つけたのが最大の収穫。