
1、2が2冊で完結していたところに、強引に付け足された感のある3である。
BOOK 1、BOOK 2の感想はこちら
実際、「そんな、強引な!!」という感じで始まるので、僕にとってはこの本の3分の2ぐらいまでは、その強引さを払拭するために書かれているような小説だった。
だけど、残りの3分の1はさすがに村上春樹。一気に読んでしまった。
僕としては2巻で終了のほうが色々と読み手がイメージをふくらませることができて良かったと思うけれど、そういう拡張性ではなく、一つの方向に収束させて欲しいと思う読者が多いのであれば、これもありなんじゃないかな、と思う。
先日、太宰治の「人間失格」を読んで思ったのは、「あれ?前に読んだ時と随分印象が違うな」ということ。
この本が傑作なのは、多分、読者が100人いたら、100個の感想が出てくるところ、一つとして同じものが出てこない所なんじゃないかな。それぞれがみんな自分のそれまでの人生と照らし合わせて、そして何がしかの感想を持つところなんじゃないかと。物凄く丁寧に書き込んであって、展開される物語の自由度は低いのだけれど、読む人の感想の自由度が物凄く高いんじゃないかと思う。それは、ひとりの同じ人間であっても一緒で、だから人生のどの時期に読むかによって、それぞれ別の感想を持つんじゃないかなと思う。
「人間失格」の感想より抜粋
1Q84は、3によってちょっと自由度が落ちたと思う。それによって、1と2の自由度も落ちてしまったと思う。でも、10年ぐらいしたら、やっぱりまた読んでみるかも知れないな・・・。評価は☆1つ半。
僕の中では「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド>海辺のカフカ>1Q84」という順列に変化なし。