まずはこちら。
浪江の甲状腺被曝量、チェルノブイリの千分の1
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111119-OYT1T00053.htm
一目見て、
チェルノブイリの周辺住民は、数シーベルトから50シーベルトとされている。
という記述で「ん?」となる。全身被曝による100%致死量が8シーベルトだっていうのに、50シーベルトはいくら何でも高すぎないか?たとえ甲状腺への局所的な被曝だとしても、と思ってしまう。それで、ネットで「チェルノブイリ 甲状腺 被曝」ぐらいで検索してみたらこのサイトが引っかかった。
チェルノブイリ事故における被ばく線量
http://www.enup2.jp/newpage36.html
原子力・エネルギー勉強会というのがどういう組織なのかは不明だが、引用元はこちらの、Table 5.6だ。
Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and Their Remediations:Twenty Years of Experience
http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/pdf/pub1239_web.pdf
ヨウ素131の放出する放射線はβ線なので、グレイ=シーベルトで換算できるから、読売新聞が言うところの「数シーベルト〜50シーベルト」も被曝しているのは農村の1−4歳に限っても17.6%である。今回の日本の調査は18歳以上を対象にしており、その場合の被曝量は子供に比較して格段に低くなる。ウクライナで10−18歳で見てみても、1グレイ(=シーベルト)以上被曝しているのは約3.9%で、73%は200ミリシーベルト以下だ。この状態で、「チェルノブイリの千分の一」と見出しを打つセンスを疑う。
また、こちらの記事もどうなのか。
野生動物が毎日食べても…1年半でセシウム半減
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111117-00001294-yom-sci
この阪大の助教は記事を読む限りでは「毎日食べても」などとは言っていない。「直後に取り込まれた放射性セシウム」は、確かに代謝で減っていくだろうが、汚染された環境で常に放射性セシウムを取り込んでいれば、それが半減期1年半で減少していくことはないだろう。マウスにセシウムを食べさせての残存量も、「大半の臓器では」って、じゃぁ大半以外の臓器はどうなんだ、という話で、詳細は論文を読んでみなければわからない。そもそも、たかが学会で発表しただけで、一々新聞記事にするなよ、バカ、という話で、三流学者が学会でちょろちょろっと喋っただけかも知れず、そんなものははっきり言ってしまえば誰でもできる。論文になって、他の科学者からきちんとその価値を認められて、初めて、「どうやら正しいようだ」ということになるのであって、こんなものは「ほんの最初の一歩」に過ぎない。読売新聞の記者はそんなこともわからないのか、ってわからないはずはなく、恣意的に世論を(ミス)リードしたいのだろう。
こと放射能に関しては、読売新聞は全く信用がおけないと思う。