2012年01月20日

総統閣下はお怒りです「因果関係を捜せ」

モリタック:閣下、これから我が作戦室では、毎日カレーを食べましょう!

閣下:また何か妙なものでも拾って食べたんじゃないか?

註釈:拾って食べた
良い子のみんなは、道端に落ちているものを拾って食べてはいけません。


ヒロッコ:モリタックは多分この新聞記事を読んだんだと思います。

カレー:現在も30年前も子どもの好きな人気メニューの1位に

閣下:どれどれ・・・・

ノブポン:これはなかなか興味深い話と言えなくもありませんが、果たしてカレーを食べることによって集中力に直ちに影響を及ぼすものなんでしょうか?

モリタック:知らないけど、調査結果を読めば、集中力が高まりそうでしょ。それに、あの茂木健一郎さんによれば、共感・連帯感を強くさせる働きがあるらしいですよ。

註釈:茂木健一郎
脳分野の科学コミュニケーターの一人で、脳科学の認知率を大幅に上昇させた人物。ただし、誤解率も上昇させ、専門家からは批判されることが非常に多い。科学コミュニケーターから電波芸人に進化した事例として後世の歴史学者は記すはず。


閣下:・・・俺はいつも数字のインチキに騙されるなって言ってるだろ?

モリタック:これはインチキなんですか?

閣下:2つの事象の「相関関係」と「因果関係」の違いを悪用して、それを読む人間をミスリードすることを狙っったインチキ記事だな。あるいは、記者が無意識にそれを書いてしまうような馬鹿か。

註釈:相関関係
Aが増えているときに、Bも増えていると、正の相関関係があると言う。Aが増えているときに、Bが減っていると、負の相関関係がある。男性の人口が増加していて(A)、女性の人口が増加していると(B)、男性数と女性数には正の相関がある。


註釈:因果関係
原因と結果の関係。相関があっても、因果関係があるとは限らない。というか、むしろそのケースの方が多いような気もする。男性が増えたから(A)といって、それが原因で女性が増えた(B)わけではない、みたいな。そりゃぁ、単に人間が増えただけだろ、みたいな。


ノブポン:相関関係と因果関係の違いが私には直ちには理解出来ないのですが・・・。

閣下:わざわざデータを示さないが、例えば、携帯電話の普及率は、日本では年々上昇しているよな?

ヒロッコ:多分間違っていないと思います。面倒なので今は調べませんが、書籍化する際にはちゃんと調べます。

註釈:書籍化する際
早く続編を出したいです。原稿はもうあるのに。


閣下:一方で、平均寿命も年々伸びているよな?

ヒロッコ:それも多分間違っていないと思います。

閣下:「携帯電話の普及率」と、「平均寿命」には正の相関があるわけだ。

ヒロッコ:そうなります。

モリタック:携帯電話を持っていると寿命が長くなるのかっ!!もう一つ買ってこよう!

ヒロッコ:なんでそうなるのよ(^^;

註釈:なんでそうなるの
相関関係をそのまま因果関係に直結させてしまったのが原因。


閣下:いや、実際、携帯電話を持っていると寿命は長くなるのかも知れない。が、その因果関係は調べてないからわからない。でも、多分、無関係だよな、感覚的には。

註釈:感覚的
非科学的という意味。


ノブポン:確かに、携帯電話を3つ持っていると通常の3倍長生きできるとかは直ちには承服しかねる説であると考えられます。

註釈:通常の3倍
別に2倍でも構わないけれど、「通常」と比較する場合はどうも「3倍」がおさまりが良い。もちろん、シャア専用ザクの影響。


閣下:携帯電話の所有率と平均寿命の伸びには相関があるけれど、携帯を持っていたら寿命が伸びるわけではなく、因果関係はない、ということだ。

モリタック:そのお話と今回の記事の関係をご説明願います。

ヒロッコ:まずはここから行きましょうか。
カレーを食べる頻度と母親から見た「子供の集中力の高さ」の関係を比較すると、カレーを週1回以上食べている母親の60.2%が自分の子供の集中力が高いと回答しており、月1回以下の母親が回答した割合よりも12ポイント高かった。また、「子供の意欲の高さ」に関する調査でも、週1回の母親の72.0%が自分の子供を意欲的だと感じており、月1回の母親の59.5%に比べ10ポイント以上高かった。


閣下:この調査における「母親から見た子供の集中力の高さ」と、「カレーを食べる頻度」の間には、相関はあるんだろう。だけど、因果関係はさっぱりわからない。だから、事実としてこうであっても、「じゃぁ、カレーを食べたら子供の集中力がアップするのか」と言えば、全然そんなことはない、ということだ。

モリタック:アップしないんですか!?

閣下:少なくとも、因果関係を裏付けるようなデータは得られていないよな。

モリタック:でも、なんか、60.2%とか、10ポイントとか、凄く科学的なんですけど。

閣下:そんな数字には何の意味もない。何の意味もない数字を出して、さも意味があるように見せている。だから、騙されるんだよ。

モリタック:いつも注意しているつもりなんですが・・・。

ヒロッコ:もっと注意しなさいよ(笑)。

閣下:俺から見れば、カレーなんて手抜き料理の代表だ。作るのは簡単だし、日持ちするから「じゃぁ、明日の夜は私、いないけど、これをレンチンして食べておいてね」なんて対応も可能だ。いい加減な母親ほどカレーを作るのかも知れない。いい加減な母親は子供の集中力になんて興味がないから、アンケートでも適当に「集中力が高い」と答えたのかも知れない。これは極論的な仮説だけど、いい加減な母親とカレーを作る頻度に因果関係があって、いい加減な母親とその子供の集中力に関するアンケート調査の回答傾向にも因果関係があるなら、カレーを食べる頻度と、子供の集中力に相関がある、という結果になっても不思議ではないわけだ。

註釈:手抜き料理
実際、玉ねぎを炒めて、肉を入れて、人参あたりを入れて茹で、ルウを溶かせばできあがり、という異常に簡単な料理である。料理っぽいところは人参の皮をむくところぐらい。奥は深いけど。


モリタック:なるほど。でも、カレーを作る母親がいい加減とか言ったら、カレーを作るお母さんたちが怒り出しませんか?

閣下:「いい加減な母親ほどカレーを作るのかも知れない」と言ったらだろ。「かも知れない」だ。

ノブポン:カレーを作る母親は必ずいい加減だと、断定して言われたわけではない、ということですね。

閣下:加えて、「子供に集中力がありますか?」と母親に聞いた、なんて調査がどの程度信頼できるものやら。実際の子供の集中力は、もっと別の調査をしなくちゃわからないだろ。

ヒロッコ:確かに調査方法にはかなり疑問が残りますね。この記事はさらに次のように続いていますが・・・。
カレーに対する好感度の高さと親子仲、夫婦仲に関する調査結果では好感度が高いほど仲が良いという結果が得られた。この結果に対し脳科学者の茂木健一郎さんは「カレーという共通の料理で食卓を共にすることが他者と共感・連帯感を強くさせる働きがあるのではないか」といい、「カレーには現代社会が特に必要とする、本当に役立つ「頭のよさづくり」に貢献する可能性がある、と私は考えています」と語っている。


閣下:あほらしいことこの上ない。調査に意味がないことは集中力の話と一緒だが、さらに筋が悪いのは茂木健一郎なんていう「学者様」を引っ張り出してきて、さも科学的に根拠があるように見せている点だ。

ヒロッコ:看板を掲げて信頼性を高めているわけですね。

閣下:だけど、良く読めば、「あるのではないか」「可能性がある、と私は考えています」なだけで、全く科学的ではないわけだ。これを述べたのが枝野幸男だろうが、ビートたけしだろうが、池田信夫だろうが、江頭2:50だろうが、誰でも一緒で、「何を馬鹿なことを」となる。所詮は個人の感想だからな。

モリタック:でも、脳科学者の茂木健一郎さんですから!

閣下:だから、そこがインチキなんだろ。こんなのは科学でも何でもない。ただカレーを持ち上げるためだけの提灯記事だ。こんな記事に「学者」としてコメントを寄せるような奴は、もう存在価値がないと言っても過言じゃない。

ヒロッコ:嘘は言ってないのよね。このあたりのトリックは「総統閣下はお怒りです」の中で散々書いたわけだけど。それで、記事はこんな風に締めくくられています。
カレー総合研究所の井上岳久所長は「カレーの魅力、それを一言でいうなら、『力をくれる』ということではないでしょうか。家族が結束する力、生きる力、希望を達成する力、カレーは、その人が持っている力を最大限に発揮できるエンジンになるような料理です」と話している。


閣下:カレー総合研究所の所長がカレーを持ち上げるのは当たり前だな。だけど、これを読んで、「家族を結束させるために、今日はカレーにしよう」とか考えるような母親の家庭は、相当ヤバイと思うぞ。

モリタック:カレーにはそんな効果はないんですね・・・。せっかく作戦室の結束力や世界征服を達成する力がアップすると思ったのに・・・。

閣下:残念だが、その計画は頓挫だな。大体、この「カレー再発見フォーラム」っていうのはハウス食品が協賛しているもので、いわば身内の、身内による、身内のためのイベントだぞ。

註釈:ハウス食品
バーモントカレー、ジャワカレー、こくまろなどを販売する食品大手。やっぱり何と言ってもハウスバーモントカレーだよー(西城秀樹)。でも、個人的にはカレーならS&Bの方が好き。


モリタック:あぁぁぁぁ・・・・また騙された・・・・。

ノブポン:モリタック先輩、そんなに落胆しないで下さい。

モリタック:同情するならカレーをくれ・・・。

註釈:同情するならカレーをくれ
今ならあの名作「買い占めするならカネ送れ」を下のリンクで見ることができます。
買い占めするならカネ送れ


ヒロッコ:ハウス食品のサイトにはこんなコンテンツがありますね。
カレー再発見フォーラム(ハウス食品)

閣下:ハウス食品が自社のサイトに載せているんだからステマじゃないけどな。ところで、カレーは美味しいし、俺も好きだし、モリタックも食べたいみたいだから、今日はカレーにしよう。

註釈:ステマじゃない
マジで、「アニメじゃない」の替え歌で「ステマじゃない」を作りたい。今度、時間があったら。


ヒロッコ:やったーーーー、カレー、大好き!!!(ステマではありません)



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