秦組のワークショップ「TAKE1」九期生の卒業公演があるというので、知り合いもいることだし、ちょっと上野まで観に行ってきた。
ちゃんとしたプロが演じた「PAIN」の劇評はこちら。
Pain
http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/51291340.html
秦さんには月に2回ほど一緒にフットサルで遊んでいただいているので大きな恩があるのだけれど、それはそれ。いつもどおり、ストレートに書いてみる。
まず感じたのは、役者が下手だと、脚本のアラも目に付いてしまう、ということ。僕はちゃんとしたプロの芝居ばかりを観てきているので、今回のような、まだ駆け出しの役者さんの芝居というのはほとんど初めてみたような感じ。冒頭、ダンスシーンがあるのだけれど、まずそのダンスがバラバラ。ここまで息の合っていないダンスシーンは生まれて初めてかも知れない。昔、第三舞台のダンスシーンを紀伊国屋ホールで観た時に「下手だなぁ」と感じたけれど、それに比較しても断然下手だったと思う。誰が悪い、というのではなく、全員が下手な感じ。続いて、彼らが全員で木を模して、林の中を演出するのだけれど、今度はそれがあたかも台風の真っ最中のよう。みんながグラグラ揺れているのである。まさか、わざと台風の中のゴルフコースを演出したんじゃないよね???ということで、始まってわずか10分ぐらいで、これは大丈夫かな???と不安になってしまった。
だけど、ポイントになるカメラマンと当たり屋の女の子あたりは押しの強い役柄だったこともあって、そつなくこなしていたと思う(ただ、当たり屋の子のラストは、ちょっと感情を出しすぎていた気もする。のめり込み過ぎると、観る方は逆にさめてしまう部分があると思う)。一方、この芝居ではもっと大事な役柄の御曹司と、そのママ(喪服の方)はちょっと力不足な感じで、ここが最大のネックになってしまったかな、と感じた。同じくちょっと抑えた役どころのマネージャーはなかなか良かったような気がする。あとは、うーーーん、まぁ、こんなものかなぁ。この芝居、少しでも大勢の役者に出番を与えたいと思って書いたのか、チョイ役がかなり多い。その役にあてられた役者は上手い、下手があまり関係ないので、芝居の質にも大きな影響が出ない感じである。
と、まぁ、そんな感じの役者陣だったのだけれど、彼らが演じたPainは、役者の下手さよりも脚本の問題点が浮き彫りになってしまうような感じだった。一番気になるのは、前回のプロによる芝居でも感じた、冒頭とラストのゴルフシーン。このシークエンスが、本編にほとんど絡んでこないのである。そのままだとゴルフの役者がフラストレーションを貯めるということなのか、途中にもいくつか、ファックス購入とか、ちょい役として出てくるシーンが用意されているのだけれど、このシーンの役割が良くわからない。むしろ、なくても良いんじゃないかと感じられてしまう。脚本として、「このシーンは必要不可欠」ということであれば、本編との絡みがもっとあっても良いと思う。僕としては、そこのところはばっさりカットしてもらって、代わりに、なぜ御曹司が振られてしまったのかとか、なぜ御曹司はああいう行動に出たのかとか、そのあたりをもうちょっと深堀りして欲しかった。写真家についての説明がたっぷりあっただけに、御曹司と、彼が惚れていた女性との描写が少なくて、ちょっと残念な気がした。
#まぁー、でも、僕みたいな素人に「秦さん、この脚本、ここを直したほうがいいですよ」と言われて直すとも思えず(笑)、多分、次にやるときもこの形なんだと思う。
あと、やっぱ、ボケママだなぁ。ここは芝居の中で一番重要な役どころで、無表情の中で時折見せる感情とのギャップの表現が物凄く難しい。「すげぇ下手くそ」とは思わないし、逆に上手だから彼女に配役したんだろうけれど、それでもウィークポイントになってしまった。
役者のパワーがないと、役者の力で押しきれるところがそのまま弱点として露呈してしまうというのが今回の発見だった。そんなことは多分秦さんも百も承知なはずで、それでも若手にチャンスを与えるために、あえて自分の作品を提供しているところは凄いなぁ、と感心した。
ところで一番残念だったのは、一番可愛い銀色の衣装の子が冒頭に出てきただけで、あとはパンダの着ぐるみを着てくるぐらいしか出番がなかったこと(後半のダンスシーンでは右側のちょい前ぐらいにいましたか?)。これは惜しい。凄く惜しい。ずーーーーっと昔、遊眠社で、野田秀樹が、明らかに実力不足の山下容莉枝(とは言っても、文学座を出たサラブレッドだけど)を、「華がある」とかいって、他の良い役者を押しのけて重役に使い続けたことがあったけれど、やっぱり可愛いのは重要なんだよな、女優は(笑)。
これまた余談だけど、プロ公演でボケママをやっていた女優さんがお手伝いに来ていた(と思う)。やっぱり、後輩のことが心配なんだなー。プロの役者から観たらどうだったのか、今度話を聞いてみたいと思った。
2,500円というチケット代は全く高くは感じなかったけれど、良い大人にあの座席はきついので、3,000円で、かつ最後列で良いから、もうちょっとクッションの良い椅子を用意してもらえると凄く嬉しいと思った。