男子は4位、女子は2位ということで、結果だけ見るなら非常に良いと思うのだけれど、どちらも惜しかったなぁ、という感じである。
負けの構図はどちらも一緒で、パワーとスピードにまさるチームに対して組織力とパスワークで対抗して、一発にやられた、という感じ。
ボクシングで喩えるなら、一発で試合を決めるパンチを持っているボクサーに対して、細かくポイントを稼いでいくスタイルで挑んで、一発をもらって負けてしまった、という感じである。
それぞれ見ていくと、女子は「決勝進出は意外ではないが、決勝戦は意外に健闘した」というのが僕の感想で、決勝に至るまでの試合はポゼッションこそ奪われたものの、危なげなく勝ち抜いた印象が強い。国際ランキングで3位のチームなので、このくらいはできるだろうな、と思っていた。一方で、決勝戦は米国のパワーとスピードが半端ないことから、一つ間違えれば5−0といった一方的な試合でも不思議ではない、と思っていた。実際、2−0まではそんな感じで進んだのだけれど、そこから先が予想外に素晴らしかった。連戦による疲れから米国のスピードが落ちたということだったのかも知れないけれど、試合を支配したのは間違いなく日本女子で、ハンドの判定次第では勝者が変わっていても不思議ではなかった。米国のパワーが女子サッカー界で頭ひとつ抜けているのは間違いがなく、コーナーキックひとつとっても、米国だけはファーサイドまで届くけれど、他のチームはニアかショートコーナーにならざるを得ない。キック力が違うということは、パスが届く距離やそれに付随する展開力(サイドチェンジなど)のみならず、パススピードの違いにもつながるわけだけれど、それらにおける圧倒的不利な立場を、組織力で挽回して、五分の試合を展開したのは素晴らしいの一言に尽きる。
一方で男子。メキシコに力負けし、同じアジアのライバル、韓国との3位決定戦に回ったのだけれど、こちらは女子とは違い、勝てたのになぁ、という内容だった。勝てる試合だったのはメキシコ戦も同じだったのだが、メキシコ戦はミスで負けたのに対して、韓国には一発で負けたのが異なる点。スーパーシュートが決まって先取点が転がり込んで、「あれ?これは勝てるんじゃないの?」と思ったところから生まれた隙につけこまれたようなメキシコ戦だったけれど、韓国戦は「良いリズムで攻めているから、この調子ならそのうち点が取れるだろう」と思っていたらカウンターでやられちゃった、みたいな。しかも、2度。このあたりはU23ということを考えると経験不足もあって、仕方ないんじゃないかなぁ、と思うところもある。フル代表でこれをやったら「バカ、死ね」という感じだけど、まだ経験が不足している選手たちである。この経験を、フル代表で生かしていってもらわないと、と思うべきところだろう。
男子、女子ともに共通しているのは監督力の高さで、開幕前の関塚監督などはマスコミに「意図不明の采配」などと批判されたりしていたけれど、実際には「マスコミごときに理解できるわけがないだろう」というところで、西野を含めた3人は、日本人としてはトップの監督力を持っていると思う。勝てる試合、惜しい試合を落としたという感はあるものの、監督の采配によって、現時点で望める最良の結果を得たとも言えると思う。一番の問題点は男女ともに走りまわるサッカーなので、五輪のような試合ごとのインターバルの短い大会ではコンディションの維持が難しいということ。逆に言えば、選手層の厚さが求められるわけで、でも、そのあたりは今の日本の育成スタイルを考えれば、解決できるんじゃないかなぁ、と思う次第。
サッカーという競技で、男女ともにベスト4以上に残り、五輪の最終盤まで国民を楽しませたということは、非常に高く評価されるべきだと思う。