野田地図の新作「エッグ」を観てきた。
前作で北朝鮮を扱った野田さんだが、本作では満州の731部隊がテーマ。複数回観劇する予定の人はフラットで観ても問題ないけれど、一度しか観ない予定の人はウィキペディアで731部隊についてちょっと勉強しておくと良いだろう。
731部隊(ウィキペディア)
毎回野田作品のキーとなる「道具」は、今回はロッカーとカーテン。このふたつが巧妙に舞台の上で活躍する。
さて、芝居の内容について。前半は「エッグ」という仮想スポーツの五輪正式種目化と日本代表初出場を目指す姿を、中心選手、監督、そしてそれを応援する歌手を中心に描いていく。それが、ある登場人物の退場を機に、話が一気に暗くなる。そこから先は、ずっと日本の暗部をえぐり出すような展開が続いていく。その対照が鮮やか。ただ、後半の迫力に比較して、前半はちょっとテンポが悪かった印象。これは初日の初回ということもあって、まだ熟成が足りないんだと思う。
野田作品としては珍しく(覚えている限りでは遊眠社時代の「半神」以降、初めて)、音楽をかなり前面に出しているのも印象的。
役者のメンツは野田作品の常連が中心だけど、ちょっとびっくりしたのは仲村トオルさん。映画では最近だと「劒岳 点の記」とか、「おっぱいバレー」「K-20 怪人二十面相・伝」などで観ていたけれど、舞台で観たのは初めて。これが、非常に存在感があった。一方で野田さんが大好きな妻夫木君は相変わらずちょっと線が細い。深っちゃんと秋山菜津子さんも良かったし、橋爪さん、藤井隆さん、大倉孝二さんあたりの、野田地図常連メンバーも無難。野田さんのセリフの聞き取りにくさは相変わらず(笑)。他にも、女学生役の女の子達はこの箱でやるにはちょっと能力・技術不足で、後方の座席までは十分に声が届かなかった。
寺山修司へのオマージュ、自らの芸術劇場の芸術監督という立場のパロディなどが盛り込まれているのだけれど、僕は寺山作品も、天井桟敷もあんまり詳しくないので、なんともかんとも(^^;
とりあえず、一回目の評価は☆2つ。もう一回観る予定。
フラットで観劇 > 戯曲を読む > もう一度観劇
というのがオススメだけど、最近の野田作品はS席で9,500円と、結構お高い。当日の立ち見が3,500円なので、体力に自信がある人はこれでも良いんじゃないかと思う。あと、今回はまだどこにも戯曲が載っていないようで、うーーーん。
10月28日まで、東京芸術劇場 プレイハウス
エッグ公式サイト
http://www.nodamap.com/productions/egg/index.html