2012年11月04日

後出しじゃんけんのガイドライン

最近、後出しじゃんけんを良く見るようになりました。これを上手に使いこなすのが、現代ニッポンでは肝要かも知れません。実際に使われた後出しじゃんけんの事例から、正しい後出しじゃんけんの使い方を学びましょう。

(最初から後出すつもりタイプ)
事例1.討論型世論調査
このブログでも「討論型世論調査に関する私見」でまとめましたが、野田政権は原発の今後について「国民で議論しましょう」として討論の場を設置する一方、その結論の利用方法については言及せず、世論調査の結論が出たところで「一資料として利用しますが、実現のためには課題もたくさんあり、エネルギー・環境会議で考えます」としてしまいました。最初から後出しを狙った典型的な事例です。

ポイント:問題になりそうな点は最初からなるべくぼかしておいて、後で詰められても言い逃れができるようにしておきましょう。

(成り行きで後出ししちゃったタイプ)
事例2.上杉隆氏の言い訳

元ジャーナリストの上杉隆氏がジャーナリスト時代の2011年3月23日(配信は24日)、3月19日付けの読売新聞に掲載された「自国民に退避を求めている主な国・地域」のリストを「著者調べ」と称して盗用してメルマガに記載するとともに、同年9月22日のダイヤモンド・オンラインの記事およびそれを収めた著作において掲載したという疑惑を持たれています。

参考:上杉隆氏についての検証
http://www34.atwiki.jp/ddic54/pages/68.html

この疑惑によって、ネット内は現在炎上状態となっているのですが、それに対して上杉氏がアップした後出しの手(記事)がこちらです。

『地獄の季節 日本のジャーナリズムのために』
http://uesugitakashi.com/?p=2198

この記事の中で上杉氏は、
今年、私は、日本の未熟な言論空間で、自らを実験台としてある試みを行おうと決めた。それは10月からスタートした「実験」である。

として、あたかも予定通りの炎上だったように説明しています。上杉氏自身が「決めてあった」と言う限り、事の真偽は全く不明で証明のしようもないのですが、今のところ上杉氏の"決心"を証明する資料もなく、「あーーー、仕方なしに「予定どおり」って言っちゃったのかな」と推測されても仕方のない状況です。

ただ、証明の手段がないのは間違いがなく、大変正しい後出しじゃんけんの使い方と言えます。

ポイント:困ったことになっても、「予定通り!」と強弁すれば全く問題ありません。

事例3.閣議決定見送り
野田政権は、「2030年代に原発稼働ゼロ」のエネルギー戦略を打ち出しましたが、その後、経済界からの強い批判を受けて、ゼロ目標の閣議決定を見送ってしまいました。野田政権的には討論型世論調査の結論に異を唱えられてしまうことは想定外だったのでしょう。

ポイント:世の中の風を読んで臨機応変に行動すること、すなわち後出しじゃんけんです。たとえそれをポピュリズムだとか、ノンポリだとか批判されても、内閣総辞職や解散総選挙さえなければ総理大臣を続けられます。

(真似っ子乞食タイプ)
事例4.ソフトバンクのテザリング提供

「KDDIがテザリングをやるなら、うちもやりましょう!」という感じで導入を決めた感が強いのですが、消費者にとってはありがたいことです。ただ、せっかくの後出しなのにほとんど同じ通信速度、料金体系では「あいこ」になるだけです。後出しする以上、絶対に勝つような圧倒的サービスの提供を期待したいものです。

ポイント:後発企業なら後出しも当然。ただし、引き分け狙いは志が低いと言えます。

(いつまで経っても出さないタイプ)
事例5.近い将来

2012年8月8日、民主党の城島光力国対委員長、自民党の岸田文雄国対委員長、公明党の漆原良夫国対委員長の3名が国会内で会談しました。この際、自民党が「野田佳彦首相から衆院解散の確約がなければ内閣不信任案と首相問責決議案を提出する」という方針を示したことに対して、城島氏は「消費税増税法案が成立した暁には、近い将来、信を問う」と回答しました。

また、このあとの民主、自民、公明の3党首会談において、社会保障と税の一体改革関連法案を早期成立させることと、法案が成立した暁には「近いうちに信を問う」ことが合意されました。

そもそも「近い将来」とか、「近いうちに」という定義不明の言葉で「合意」しちゃうところが脳みそお花畑なのですが、合意してしまったのだから仕方がありません。その後、後出しどころか、何も出てこないので勝負にすらならない状態が続いています。通常、勝負はつけなくてはならないのですが、このケースでは「勝負はなるべく先送りしたい」という思惑があることから、「後出しすらしない」という素晴らしい戦術が奏功しています。

ポイント:先延ばしには非常に有効な手段ですが、相手が馬鹿じゃないと使えません。

(自主基準を後出しして言い訳するタイプ)
事例6.170ミリシーベルト以上を大量被曝と定義

原発事故の際に大量被曝した人がいたのに、それを隠蔽しました。1年以上経って当事者の一人がその事実を告発すると、東電は「170ミリシーベルト以上被曝した人について説明した」と弁解しました。新聞記事を読む限りでは、170ミリシーベルトがしきい値になった理由は不明です。

参考資料:<福島第1原発>東電、別の作業員も被ばく

ポイント:公開する、公開しないの基準を明確にしないことが重要です。その基準には合理的な理由があることが望ましいのですが、「俺達がこう決めた。俺たちがルールブックだ」と突っぱねることも可能です。

この記事へのトラックバックURL