自分でKindle本を作ったのはいいけれど、他の人の事例も見てみたいな、と思って、メイロマさんの新刊を買ってみた。
分量的にはそれほどでもなく、文字数的には2万文字ぐらいだろうか。ちゃんと数えてないけれど。1時間ほどで読了可能。以下、レビュー。
○書籍として
分量が少ない。しかし、実際の書籍の場合、編集サイドからの「1500円で売りたいが、そのためにはもうちょっと増量する必要がある。あと1万文字ぐらい書けないか」というオーダーによって増量することがままあり、シェイプアップされていると見るべき。
実際にノマド的な立場(?)にいる僕からすると、特に付け加えることもなく、さっと読めてちょうど良いんじゃないかな、と思う。
体裁はイマイチ。一方で誤植は非常に少ない印象。
電子書籍だと、このくらいの分量でこのくらいの価格、という、ひとつの目安になる本だと思う。
○内容について
●全体
ノマドがどうこうよりも、ノマド的な働き方が日本社会に浸透していくことが、日本社会の活性化、成長につながるんじゃないかと感じた。城繁幸さんが砂漠に水を撒き続けているのを見ていて絶望的な気分になっていたのだが、この本を読んで、希望を得た。ただし、著者はノマドを応援しつつ、日本社会のノマド化には疑問を持っている様子。
●パーツ
>契約社会
「契約社会」についての記述は正確。日本は平気で約束を破る社会で、ノマドが厳しいという現実がある。ここ数年だけ考えても、うちの会社が関わった会社・組織で契約違反と考えられるケースが3つもある。もちろん破ったのは相手方。
>ノマドになりたい人
ノマドになりたいという人が日本社会にそんなにたくさんいるのか、正直、実感がない。
本書で扱われている「ノマド」とか、あるいはベンチャーの社員というのは本来公務員や大企業の社員よりよっぽど高い能力が要求される。「大企業に就職できなかったから」という理由でノマドをやったり、ベンチャーの職員になったりするようなオッチョコチョイはどの程度いるのだろう?
>日本でも不景気によってノマド的人材のニーズが増える可能性がある
早くそうなって欲しい。僕が三菱総研時代、会社に言ったのは「独立しても食べていけるような専門性が身につく仕事をしていきたい。そのための勉強や努力はいくらでもする。一方で、ジェネラリストとしてやっていく気はない。翻って現状を見ると、やっている仕事は飛行場整備の仕事、高速道路の仕事、割引制度、自治体の水産業振興プランの策定、環境アセスメントのマニュアル作りなど、自身の専門であるバイオとはかけ離れている。こんな状況なら、この会社にいる意味がない」ということ。上長、人事部に再三このことを伝えても全く効果がなかったことから、当時最も権力のあった副社長に直談判し、理研への出向となった。以後、理研から経産省バイオ課課長補佐、産総研発医薬品ベンチャー社長を経て、今ではノマド的な立ち位置にいるわけだが、その立場から見ると、日本のサラリーマンは終身雇用を前提とする代わりに、会社の言いなりになって、自分の人生そのものを売ってしまっているような気がする。
僕の今の生活は、経済的には決して豊かとは言いがたいけれど、先日の東工大の同窓会では、年収1,500万円以上の同窓生たちが口をそろえて「元木のような生き方が羨ましい」と言っていた。でも、じゃぁ誰にでもそういう生き方ができるのかといえば甚だ疑問であって、あぁ、なるほど、この本はそういうことを言いたいのね、と思った。
>ノマド的働き方が広がると、新卒一括採用はなくなっていく
なるほど、ボトムアップ的に解消するのであれば、それが一番望ましい。
>インターンシップ
僕はインターンシップは企業による若手労働力の詐取だと思っているのだけれど、英国ではそれがもっと厳しいらしい。このあたりは、まだ一般的ですらない日本においては、優良企業がお手本を示していくべきなんだと思う。でも、実際は、海外の悪癖を真似ることになるんじゃないかと危惧する。特に、サッチャー時代の「古い」新自由主義を経験している英国ですら階級の固定化が常態化している(本書の中では「能力主義を推し進めた結果、階級が固定されてしまった」と記載)のでは、うーーん。その点、日本はある程度機能している学歴社会なので、まだ少し望みがあるかも知れない。
参考図書:資本主義と自由
参考映画:鉄の女の涙 マーガレット・サッチャー
>会社員なぞ甘ったるいもの
つい先日、Facebookで知人が「エクセルの関数がわからず、一日悩んだ」と書いていたのだが、その悩みのレベルは異常に低く、正直「これで給料をもらえるなんて、究極の勝ち組だよな」と感じた次第。でも、それは彼女が悪いんじゃない。甘ったるいのは間違いないというだけ。本人にその自覚があるかどうかはわかんないけれど、もし自覚があるなら、恥ずかしくてそんな内容は書けないと思う。少なくとも、僕なら書けない。
>ノマドは孤独
そんなあなたにTwitter(笑)
>ノマド志望者は馴れ合いたがる
そのとおりだ(笑)
>厳しい親方に学べ
以前、うちの会社を辞めた人が、辞め際に「もうちょっと優しく指導して欲しかった」と言っていたのだが、愛情はあるつもりだったのだよ(笑)
>ゴルゴ13
註釈は要らないだろ(笑)
色々勉強になりました。勉強したあとは、こっちも買ってください!!