2013年04月04日

藁の楯 わらのたて

Yahoo!レビュアー試写会で鑑賞。

少女二人を惨殺した犯人のクビに10億円の懸賞金がかけられ、一般の市民たちが賞金稼ぎになって犯人を殺そうとしている中、福岡から東京まで犯人を護送する、というストーリー。

少々無理がある設定を、“超お金持ち”というワイルドカードを持ちだして実現しているのだけれど、設定にはアラが目立ち、冒頭からちょっと入り込めないところがある。特に気になったのは「新聞にこういう広告を載せることは普通できないけど、こんなことをやってクリアしたんですよ」という、“こんなこと”に説得力がなかったことである。説得力のない設定なら、いっそのこと何もない方がスッキリする。また、「これは違法」ということなら、「10億円を受け取ることはできません」と告知されるはずで、それが放置されていたのも良くわからない。ラストの桜田門で、道路のど真ん中で車を停めるのもおかしければ、群衆がじっとしているのも意味不明である。後半の移動がすんなりできてしまうのもおかしいし、こんな非常事態にいつもどおりの検問をやっているのもおかしい。大体、護送担当の警官の顔写真ぐらい、当たり前のように行き渡っているはずだ。あと、何でもかんでもすぐに拳銃を突きつける護送警官の態度はちょっと異常だと思う。状況が通常ではないことを鑑みても、かなりのやり過ぎ感がある。犯人がたびたび放置されるのも滅茶苦茶で、このあたりはB級ホラー映画の死亡フラグのようだった。犯人を殺そうとしているのが一般市民ということもあって、彼らが次から次へと工夫のない襲い方をしてくるので、失笑が漏れる。また、護送警官の内部で裏切り者探しが唐突に始まってしまうあたりもどうかと思うし、そもそも5人しかいない護送担当者の中に女性が含まれているあたりに映画の興行面の都合がチラつく。

では、眠くなるかというと、そんなこともない。なぜなら、とびきりのキチガイを映画の真ん中に据えているからで、そのキチガイが何をするかわからないので、「このあとどうなるんだろう?」という興味が持続する。しかし、キチガイがど真ん中にいることの魔力は、最後には解けてしまう。終わってみれば「何が起きても不思議じゃなかったけれど、結局それかよ」という感じで、広げた風呂敷を畳みきれなかった。無理やり興味を持続させられた分、失望も大きい。

三池監督は当たりハズレが大きい監督だけど、これはハズレ側だと思う。とはいえ、ハズレたのは監督の手腕というよりはストーリーと脚本のせいという印象を受ける。映像や演出は結構良かったと思うし、藤原竜也は舞台のほうが映える役者だが三池演出には合うと思う。ところで、歯並びの悪い役者を使いたがったのは誰なんだろう。口元を見せることが多かったので、三池監督の意向なんだろうか。

どうでも良いけれど、テーブルの上に乗せたお金は10億というより100億ぐらいありそうだった。評価は☆1つ。

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