2013年09月30日

日本の労働環境のためにやらなくてはならないたった1つのこと

金曜日の朝生(ブラック企業がメインテーマ)を録画してあったので見てみたのだが、相変わらずあほな議論で時間を費やしている。ブラック企業が存在する理由は簡単で、ブラックでも働きたいと考える社員がいるからだ。議論している人の数人は「辞めれば良い」と言っているし、僕もそのとおりだと思うけれど、「そうは言っても辞められない」という考え方も存在するし、この層は今の日本ではなくならない。抜本的な改革が必要なのだけれど、この要望に対しての、政府の回答は「限定正社員を作る」ということだから話にならない。限定正社員は、今の「上」と「下」の間に「中」を作るだけだ。問題の本質はここにはない。大体、こういう議論を本気でやりたいなら、他人の意見に迎合するだけの勝間和代枠は城繁幸氏に譲るべきだった。

やらなくてはならないことは、「上」と「下」を、「流動」と「安定」に変質させることである。本当なら全部流動に移行したいところだが、そこまでやってしまうと不適合者が山ほど発生して、その救済に必要なコストが莫大になりそうだ。だから、安定も残す必要がある。

整理して書くなら、今求められている改革は、労働者を

1.雇用期間は有期だが、高賃金の社員(賃金社員)
2.今と同等の解雇規制だが、低賃金の社員(安定社員)

の2つに分けることである。

解雇規制を緩和しようというと大反対の声が上がるが、これは基本的に現在の社会環境において「年功序列」と「終身雇用」という2つの既得権を得ている、生産性の低いホワイトカラーとその予備軍からの声である。そして、この存在に手を付けること、すなわち、彼らの賃金を低く抑えることこそが必要なのだ。上の分類で言えば、生産性の低いホワイトカラーたちを、安定はしているけれど賃金は安い、というクラスターに移行させることである。

安定と高賃金が一体になってしまえば、勝者と敗者しか存在しなくなる。これに加えて新卒一括採用がセットとなっているのが日本社会の大きな問題点である。おかげで運が悪い時代に大学を卒業した人間は一生負け組から脱することができなくなる。筋が悪いのは、行政や勝ち組が「もしかしたら、あなた達も勝ち組になれるかも知れませんよ」とチラつかせている点で、実際には負け組が勝ち組に移行することは非常に難しい。また、勝ち組は負け組に移動することをとても恐れるので、結果的に人材は流動性を失う。

非常に簡単な話で、やるべきこともはっきりしている。全てを流動に移すのは不可能だから、高賃金と安定のどちらかを選択するように仕向ければ良い。僕は安易に税制に手を付けることには反対だが、この目的なら税制を利用する手もあると考えていて、"賃金社員"に比較して"安定社員"の所得税率を高くしてしまえば良い。これなら強制的に、"安定社員"の収入を低く抑えることができる。以前はこれを法人単位で適用して、「流動会社」と「安定会社」にわければ良いと考えていたが、良く考えてみたら会社の中に2つの職制を作るだけで十分だと思うようになった。

「限定正社員」などという妙な身分をつくっても、身分制度を細分化するだけである。実際に必要なのは、勝ち組と負け組の枠組みを解体し、新しい、対等な2つの枠組み(メリット、デメリットが存在し、どちらが上とは判断できないようなカテゴリ)に当てはめることだと思う。しかし、なぜかこういう議論が起きてこないのだから不思議だ。

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