実際の事件をベースにした犯罪映画。どんな事件?と疑問に思う人は「三上静男」あたりでググってみるのが吉。
演劇的な手法で現在と過去を行ったり来たりする脚本だが、映画では失敗することの多い技法にもかかわらず、この映画ではある程度の効果をあげていたと思う。
凶悪犯罪がテーマなので、その残酷な描写が一つの見どころとなるのだが、残念ながら「冷たい熱帯魚」のような衝撃はなかった。犯罪の描写、および犯罪者の描写という点で、園子温監督に比較すると随分見劣りがしてしまう。違う作品、違う監督なので、比較すること自体がフェアではないのかも知れないが、方向性がそっくりなために、どうしても比べながら観てしまう。
事件を追う雑誌記者の家庭環境なども、やや蛇足感がある。そこで何か訴えたいところがあったのかも知れないが、少なくとも僕には伝わってこなかった。
あまちゃんでひょうきんな役をやっていたピエール瀧やそして父になるで子煩悩な町のおやじを演じていたリリー・フランキーのフレの大きさは楽しめるのだが、本来、一本の映画の中でそれを表現すべきで、「あまちゃんの」とか、「そして父になるの」と表現されてしまう時点で、作品自体が力不足なんだと思う。ただ、池脇千鶴は相変わらず可愛い。
結局、監督力の違いということだろう。もうちょっと上手に料理したら傑作になりそうな素材だけに惜しい気がした。
評価は☆2つ。