最近の野田地図公演の中では屈指と言っても良いくらいにチケットの確保が難しかった公演。タイトルそのままだが、美輪明宏を描いた作品である。なぜ美輪明宏?と思うところだが、演劇界や歌舞伎界との繋がりが密で、東京芸術劇場の杮落としで演出をやったこともあって、箱との関わりも深い。野田秀樹と同じく長崎出身ということもあり、色々と引っ張り出してくると、「なるほど」と思わないでもない。
芝居の中心はゲイであることの苦悩で、野田秀樹の芝居としては珍しくストレートに表現されている。全体的にみるといつものような小道具の活用がなかったり、昔の芝居で使ったことのある言葉遊びが再登場したりと、ちょっと「らしくない」作りだと思う。
僕自身が美輪明宏という人物にそれほど興味がないこともあってか、すーーっと始まって、クライマックスがないままにすーーっと終わってしまった感じである。美輪明宏という人物に興味を持つトリガーにはなったと思うし、今回は気が付かなかった仕掛けが多分盛り込まれているんだろうが、もう一度観るかどうかは微妙なところ。月刊新潮に戯曲が掲載されたので、それを読んでから考えてみたい。
役者は総じて標準以上の演技を見せていたと思うけれど、青木さやかはダメ。下っ端の役者と比べても声が通ってない。彼女を使ったのは事務所の都合か何かだろうか???
二階席サイドからの鑑賞だったんだけど、LB席3番のお姉ちゃんがずっと前のめりで観ているおかげで、彼女の後頭部をずっと見るはめに。劇場サイドはちゃんと注意して欲しい。あと、台風が近づいているせいもあったのかも知れないけれど、扉の隙間から風切り音がヒューヒューなっていて「この安普請め!」と思った。
初見でも、複数回鑑賞する予定がないなら、事前にウィキペディアで美輪明宏を調べておいた方が良いと思う。
評価は☆1つ半。